1085.スライム分隊サバイバル!
「数だ! 数で押せぇぇぇぇ!」
「数打ちゃ当たる可能性があるぞ!」
聞こえてきたのは、破れかぶれの特攻を仕掛ける一団の叫び声。
「【大旋風】」
「「「うわあああああああ――――っ!!」」」
しかし巻き起こる竜巻に、飲み込まれて消える。
「こ、このドキドキ感、たまらねえな……!」
最強の偽メイ軍団に追われて消し飛ぶ緊張感、スリルは圧倒的だ。
一撃死サバイバルに、ドキドキしながら密林を進むのは2人の掲示板組。
「「ッ!?」」
その前に現れた、一匹の小動物。
「むぐっ!」
思わず叫びそうになった、仲間の口を塞ぐ。
隠れていても、『目』や『耳』で見つけてくるのが偽メイの恐ろしさ。
それはもはや、洋画ホラーのような緊迫感だ。
「落ち着け、ただのイタチだ」
見れば出て来たのは、一匹の白い毛並みをした小動物。
「なんだ……イタチか……」
安堵の息を吐く二人。
「「イタチ……?」」
同時に顔を見合わせる。
「「うわああああああ――っ!!」」
烈風に吹き飛ばされた2人はそのまま、偽メイたちの前に転がり出ることになった。
ここは容赦のない一方的な狩りが行われる、文字通りの地獄だ。
「たまらない展開ぽよ……っ!」
そんな中でも、上手にやっていたのはスライムたち。
「100人メイちゃんに狩られるクエストなんて、もう味わえないだろうからな」
「捕捉されましたっ!」
迷子ちゃんの声に、すぐさま準備に入るスライム部隊。
「【氷のイバラ】!」
先行して樹氷の魔女が、伸びる氷のトゲで偽メイを狙う。
「【バンビステップ】」
これを鮮やかな足の運びでかわしてきた偽メイだが、避けつつ進むとなれば、足の踏む場所が限定されてくる。
「【巨大化】からの、【砲弾跳躍】ぽよーっ!」
そこを狙った特攻が、メイの肩を弾いてバランスを崩した。
「【ジェット・ナックル】!」
生まれた隙を突き、迷子ちゃんの拳打で弾き飛ばして走り出す。
連携で、とにかく偽メイを遠ざける。
打倒は諦め、距離を取ることに集中して森を突き進む作戦は成功だ。しかし。
そこに、2体目の偽メイが急接近。
「2体同時になるのだけは絶対にダメだ……っ! ――――咲き狂え、雪花の刃【凍花白華】!」
冷気によって白みがかった空間に現れた、大量の氷花。
次々に砕け散り、生まれた無数の氷片が敵を切り刻む。
先行して範囲魔法を置いておくことで、偽メイの急速接近を足止め。
この間に【跳び跳ね】で、高く跳躍したスライム。
「【巨大化Ⅱ】からの【ボディプレス】ぽよーっ!」
この一撃の余波に、2体目の偽メイが転がった。
だが体勢を立て直した1体目が、速い移動で距離を詰めてくる。
「【ラビットジャンプ】」
そして高い跳躍と共に、剣を掲げた。
狙いは、樹氷の魔女だ。
強スキル使用直後で、回避の動き出しが遅れた状況。
魔導士である樹氷の魔女がくらえば、直撃でなくとも一撃死は免れない。
「【フルスイング】」
「【ソードディフェンダー】!」
これを受けたのは、マウント氏。
「メイちゃんの正面から来る【フルスイング】は、10000回見たからな! 【凪一閃】!」
すぐさま、大きな振り払いで反撃。
これを喰らった偽メイは、あらためて攻撃体勢に入る。
対してパリィを成功させたマウント氏は、剣を構え直した。
「偽者とは言えメイちゃんの剣技に何度もパリィ決めたら、マウント取り放題だろうなぁ!」
偽メイは、勢いよく駆けてくる。
「まず、相手の動きをしっかりと見る」
その速度は、疾風の様。
「一つ大きく息をついて、心を穏やかに」
大きな踏み込みで、強く地面を踏み込んだ。
「肩の力を抜き、集中しながらもあくまで自然体に――――さあこい! 偽メイちゃんっ!」
「【虎爪拳】」
「あっ」
剣ではなく拳。
「ぐはああああ――っ!」
カウンター判定の一撃に、ゴロゴロと転がるマウント氏。
その先にいたのは、もう一人の偽メイ。
「【ソードバッシュ】」
「うおおおおおおお――――っ!?」
漫画の様な勢いで走って、衝撃波の直撃をギリギリで回避するも、余波で再び数メートルほど転がった。
しかし2人のメイを同時に引き付けた事で、スライムが活きてくる。
「【超可変・空王】!」
2体の偽メイはすでに、回避態勢。
だが空王化すれば、攻撃範囲は広くなる。
また偽メイは、本物のような『どうかしてる』超回避まではしてこない。
特攻と共にプロペラ回転で打ち付ければ、ダメージはそこそこだが遠ざけることに成功する。
「あの攻撃力と回避力で、このタフさは反則ぽよ……っ!」
「今のうちに距離を取りましょう!」
「「了解っ!」」
それでも2体の偽メイが同時に迫る状況は、いつ戦線が決壊してもおかしくない。
密林へ潜る形で逃走を狙う、スライム隊。
「ッ!?」
迷子が、突然硬直した。
そこにはこの場所へ駆けてくる、新たなメイの姿。
「メイさん!」
いつもの元気な「はいっ!」という返事がなければそれは、偽者だ。
「しかも一人じゃない……3人全部偽者です!」
「これで偽メイさんが計5体。このまま戦い続けた場合、5分生き残れる確率は……0%です!」
計算君が頭を抱える、最悪の状況。
速い足の運びでやって来た3体の偽メイが、合流。
それは異世界からの止まらない侵攻よりも、絶望的な状況だ。
「ここまでか……」
剣を掲げたメイたちを前に、そんなつぶやきが聞こえた瞬間。
「いきますっ!」
動いたのは迷子ちゃん。
メイの召喚獣の呼び出しに影響された、手の突き上げ方。
高さ二十メートルのところに現れたのは、一つの魔法陣。
「来て! 私のゴーレム!」
陣を突き破るようにして落下してきたのは、その身体に紋様の描かれたオリハルコン製の巨大ゴーレム。
そのまま拳で地面を砕き、猛烈な砂煙が上がった。
転がる、偽メイたち。
「全力で逃げるぽよっ!」
最速で駆け出すスライム隊と、一部掲示板組。
足の遅い数人はスライムにしがみつく形で、密林を逃げていく。
「ゴーレムは物理耐性も高いし、防御で耐え続ければ……ある程度は……っ!」
「「「「「【ソードバッシュ】」」」」」
「ッ!?」
登場してわずか10秒ほどのゴーレムに、5体の偽メイが同時に放つソードバッシュ。
「オリハルコンの耐性で、これだけしか時間を稼げないの……っ!?」
ゆっくりと倒れ込んでいくゴーレムを振り返りながら、驚愕の視線を向ける迷子ちゃん。
5体の偽メイはただ無表情のまま、走り出す。
ただ狩りを、続けるために。
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