表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1083/1384

1083.vs大司教Ⅱ

 ツバメに変身し、いきなりメイの剣を奪ってみせた大司教。

 さらに、速い動きで接近を仕掛けてくる。


「【加速】【リブースト】【スティール】」

「【フレアストライク】!」


 レンは炎砲弾で対抗しようとするが、その時すでに偽ツバメは横を通り過ぎていく瞬間だった。


「この速度、ステータスも本人に化ける形だわ!」


【銀閃の杖】を奪われたレンが、驚きの声を上げる。


「【加速】」


 偽ツバメは、続けてまもりを狙う。

 一直線の疾走で、一気に目前に踏み込んできた。


「ロ、【ローリングシールド】!」


【スティール】に対応するために、早めの攻撃を繰り出す。


「【スライディング】【スティール】」


 しかし偽ツバメは余裕で盾の下を潜って、【スティール】を発動。

 まもりの手から【青銅の大盾】を奪い取った。


「【連続投擲】」


 偽ツバメは止まらない。

 駆け込んできていたツバメに、【炎ブレード】と【風ブレード】を投じて足を止めると。


「【加速】【リブースト】」


 止まったツバメを狙って急接近。


「スティール……いえ、攻撃ですか!? そうはさせませんっ【跳躍】!」


 ツバメは【スティール】かと思わせて武器を手にした偽ツバメに対し、ジャンプによる回避を選択。しかし。


「レンさん……っ!?」


 杖を掲げた大司教は、ここで突然レンに変身した。


「【フレアストライク】」


 空中のツバメ目がけて、炎砲弾を発射。


「【エアリアル】ッ!!」


 ツバメはこれをどうにか二段ジャンプで回避するも、足を弾かれ着地後に転がった。


「近距離戦型と思ってたら、突然魔導士になって範囲魔法はキツいわね……!」

「【連続魔法】【ファイアボルト】」


 偽レンは、放つ連射でけん制。


「【バンビステップ】!」


 メイはその間をすり抜けて接近。

 そのまま【大蜥蜴の剣】を振り上げる。しかし。


「【地壁の盾】」


 偽レンから偽まもりに変身して、的確な防御を決めたところで、今度は迷子ちゃんになる。


「【ジェット・ナックル】」

「うわわわわわっ!」


 真横を通り過ぎていく拳の一撃に、とっさの回避に成功したメイが安堵の息をついた。


「これだけ次々に変身されると、なかなか大変ね……!」


 ガントレットから蒸気を吐き出しながら、通り抜けていった偽迷子ちゃん。


「この時が、来てしまいましたっ!」


 続けて振り返ると、その姿はメイになっていた。

 走り出す、急速な緊張感。


「【裸足の女神】」

「「「ッ!?」」」


 分かっていても、なお速い。

 一瞬で踏み込んできたメイの前にいたのが、まもりだったのは単なる幸運だった。


「【フルスイング】」

「【不動】【地壁の盾】!」


 もはや反射の盾防御。

 全身をビリビリと震わせるほどの威力に、飛び散る猛烈な火花。

 ステータスも本人と同じ偽メイの【腕力】に驚くが、攻撃がシンプルゆえに、盾でどうにか防ぎ切ることに成功した。


「せっかくの最強火力も、そんな上品な戦い方じゃもったいないわよ!」

「レンちゃん……?」


 それって自分の戦い方が野生的で、品がないということでは? と、首を傾げるメイ。

 一方レンは手を伸ばし、偽メイの攻撃を受け止めた直後の、まもりの背中に触れる。


「【天雲の盾】!」

「【ペネトレーション】【フレアストライク】!」


 レンはまもりを通して、炎砲弾を放つ。

 だが偽メイはすぐさま回避に動き、かすめるにとどまった。


「さすがに基礎スキルだけあって、硬直が短いわね!」


 隙は少なく高火力。

 あらためてメイの強さの、一端に触れる。

 大司教の変身攻勢は、止まらない。


「これは……っ!」


 ツバメが思わず声を上げる。

 大司教が姿を変えたのはなんと、北極で見かけた『氷漬けの怪物』だった。

 その大きさは、『獣の王』に迫るほど。

 獅子のような顔に、長く赤いたて髪。

 緑の翼を持ち、身体は馬のようにも見える。


「嘘……」


 その額の前に、輝く光。

 直後、放たれた魔力光線が高速で迫り来る。


「【かばう】【不動】【天雲の盾】!」


 これを受けたのは、やはりまもり。

 前衛にいたメイとツバメ、迷子ちゃんがその背後に隠れる。

 まるで水流を受けているかのように、盾の表面を流れていく光に驚く。

 弾かれた光線は屈折し、岩壁にぶつかり大爆発。

 壁に大きな穴を穿った。

 思わず安堵の息をつくが、北極の化物は続けざまの攻撃に入る。

 高速飛行からの飛び掛かりは、まともに受ければ大ダメージ必至だ。


「間違いなく強力な敵です……ですが!」

「そのままメイの姿で戦い続けるのが一番有利なのよ! 変身したのは失敗だわ!」

「はひっ!」


 先頭で盾を構えたままでいるまもりは、轟音と共に迫る突撃に正面から向かい合う。


「【不動】【地壁の盾】!」


 ビルにトラックでも突っ込んだかのような、強烈な衝突音。

 敵の前足を受け止めたところで、盾スキルを発動する。


「【獅子霊の盾】!」


 盾の枠を突き破る勢いで飛び出してきた獅子の霊が化物の前足に噛みつき、そのまま投げ飛ばすような形で地面に叩きつけた。


「【フレアバースト】!」


 追撃の爆炎に吹き飛ばされた偽北極の怪物は、二度のバウンドの後着地。

 翼を広げ、百本に及ぶ光線による攻撃を展開する。


「【装備変更】【バンビステップ】!」


 詰めに向かうのはメイ。

 誘導付きの魔法光線を、メイはかわしながら接近。

 さらに猿のように木を蹴って、別の木を蹴って、光線を置き去りにして、空へと舞い上がる。


「【ラビットジャンプ】からの【ソードバッシュ】だああああ――――っ!!」


 叩き込まれた衝撃波の一撃は偽北極の怪物を吹き飛ばし、変身が解けた大司教は木に激突。

 HPが全損し、粒子になって消えていく。


「やったわね!」


 杖を掲げて歓喜するレン。


「「「お見事でしたっ!」」」


 まもりとツバメ、迷子ちゃんも拳を上げる。

 メイは大司教の落とした転移宝珠をひろうと、木陰に隠れていた少年のもとへ。


「これで外に出るのかな?」

「ありがとうっ!」


 宝珠を渡すと、少年は転移で外部へ移動。

 無事、生贄からの救出に成功した。


「さて、これで残りはどう動くのかしら」


 大司教は倒れた。

 だがこの場にはまだ、命令通り整列した状態で待機しているトカゲが100体いる。

 大司教の戦いを見届けたトカゲたちは一斉に、少年を助けるメイに視線を向けた。すると。

 淡色トカゲが右手を静かに上げ、100体に合図を出す。

 そして『メイが少年を助けた』ことが、大きく戦況を変える。


「え? ええっ?」


 メイは、思わず驚きの声を上げる。


「ええええええええええ――――っ!?」


 戦いを見守っていたトカゲたちは、よりにもよってスキルと装備、そしてステータスまで真似るタイプのトカゲ。

 そして変身対象は、少年のもとに駆けつけたプレイヤーだ。


「……考えうる限り、最悪のパターンだわ」


 盗まれた杖を取り戻したレンが、思わずつぶやいた。


「これは……」

「た、大変なことになってしまいました」


 ツバメは言葉が続けられない。

 まもりと迷子ちゃんはもう、ただその光景に圧倒されるだけ。

 最後に軽装の薄色トカゲは、メイに変身。

 合計101体のメイが今、敵として立ちふさがる。


「あっ! メイちゃんだっ!」

「本当だ! 来てよかったー!」

「よっしゃー! 面白くなってきたぞー!」


 聞こえてきた声は、占拠されかかっていたジャリオデネイロを解放し、意気揚々とポータルでやって来た掲示板組。

 メイの姿を見つけて、うれしそうに駆け寄ってくる。そして。


「おーい! メイちゃーん!」

「メイちゃ……あ、あれ?」

「なんかメイちゃんが、たくさんいるんだけど……?」

「これは、どういうことぽよっ?」


 居並ぶ無数のメイに、困惑し始める。


「な、なあ、まさかこれって……」


 偽グラムと戦ってきたばかりのマウント氏が、嫌な予感に震えながら視線を向けてくる。


「はい、全てトカゲです。装備やスキル、そしておそらくステータスまで、今のメイさんを完全に模倣した」

「「「は……はああああああああああ――――っ!?」」」


 ウキウキの大喜びで来た掲示板組が、最悪の事態を前に絶叫をあげた。

ご感想いただきました! ありがとうございます!

返信はご感想欄にてっ!


お読みいただきありがとうございました!

少しでも「いいね」と思っていただけましたら。

【ブックマーク】・【ポイント】等にて、応援よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 別の意味で危険なのは大量ナイトメア…。
[一言] 論理クイズは結構直感でも出きるらしい…。
[一言] とうとう恐れていた事態に…。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ