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1081/1383

1081.その頃の掲示板組

「……掲示板の皆は、どうしているのかな」


 迷子ちゃんがそんなことを考えていた、その時。


「武器を持って駆け回ってるやつらを叩け! それが人に化けるトカゲだ!」


 メイたちの元を離れて応援に駆け付けた掲示板組パーティは、南の都市の一つジャリオデネイロに到着。

 そこでは、近隣の森林に立つ街から一斉に攻め込んできた『トカゲ』による、攻撃を受けていた。


「【ウィンドブレード】」

「「っ!」」


 強風と共に放たれる空刃を、掲示板組が必死に回避する。

 すると後方から駆けつけてきたパーティが、反撃を叩き込む。


「【雷騎槍】!」

「【サンダーバード】!」


 雷光を輝かせる騎士の高速突きから、シャーマンの放つ雷をまとった巨鳥の突撃。

 剣を振り回していた住民を打倒すると変身が解け、トカゲが正体を現しつつ倒れる。


「本当に、この規模の街を乗っ取りにくるのかよ……」

「ここが奪われたら、南西部は一気に取られることになりそうだぞ」


 世界規模の侵略には、さすがに驚く。

 最初は、南部の大きな街で突然起きた内乱という情報だった。

 しかしメイたちと一緒になった掲示板組パーティが、事実を知って掲示板に通達。

 今回の件のために、皆集まったという流れだ。


「【烈風刃】! いけるぞ、確かに強いがゼティアの魔物ほどのパワーはない!」


 トカゲの数はそこそこいるが、掲示板組含めこの街に滞在していたプレイヤーも少なくない。

 彼らに状況を説明することで、戦況は自然と優位になっていく。


「「「っ!?」」」


 突如、巻き起こった爆発。

 振り返るとそこには、戻ってくる槍をつかむ少女の姿。


「来た! ここにグラムの参戦はもう、勝ったも同然だろ!」


 歓喜にわく掲示板組。

 その勢いに応えるようにグラムは槍を構え、そのまま投擲する。


「【グングニル】」

「「「うおおおおおお――――っ!?」」」


 グラムの攻撃に吹き飛ばされた掲示板組は、地面を跳ね転がった。


「お、おい! これはどういうことだ!?」

「そうか……そいつがメイちゃんたちが言ってた『プレイヤーに化けた』トカゲだ!」

「ちょっと待て、グングニルってことは……スキルも同じなのかよっ!!」

「【クインビーアサルト】」

「「「うわあああああ――――っ!!」」」


 偽グラムが、速い踏み込みから放つ突き。

 その一撃は衝撃波で、さらに掲示板組の面々を吹き飛ばす。

 そのままトドメを刺しに、駆ける偽グラム。


「【クインビーアサルト】」

「【飛び跳ね】! からの【硬化】【可変】ぽよ!」


 その前に飛び込んで来たのは、スライム。

 固い壁になることで衝撃波を受け止めれば、跳ね飛ばされてもダメージはなし。


「【三連射】【アイシクルエッジ】!」


 すぐさま続く、樹氷の魔女の氷弾。

 これに偽グラムは、ジグザグのバックステップでかわした。


「助かった!」

「でも、相手がグラムじゃキツいぞ……掲示板組でも止めるのは難しいだろ」


 一騎当千の少女を前に、自然と鳴らすノド。


「いや、勝てない相手ではない。なぜなら本物と同じなら最初の【グングニル】で崩壊。続く【クインビーアサルト】の時点で戦いは終わっていたはず」

「三発目までかかっていることを考えると、ステータスは高いものの、本物には劣っていると考えられるぽよっ」


 樹氷の魔女とスライムは、敵が本物のグラムと同じではないからこそ、勝てると確信。

 偽グラム相手に、構えを取る。


「【ソニックドライブ】」


 高速移動スキルによる、接近。


「【斬空閃】」

「っぽよ!」


 鮮烈なエフェクトを描く薙ぎ払いを、スライムは平たくなって回避する。


「【三連射】【アイシクルエッジ】」


 すぐさま樹氷の魔女が、三連発の氷刃を飛ばして攻撃。


「【大車輪】」


 これを偽グラムは、槍を回転させることでかき消した。


「それなら! 切り裂いて! 【氷のイバラ】!」


 地面を伸びる氷の枝から伸びる氷刃が、偽グラムを切り裂きにいく。


「【ソニックドライブ】」


 対して偽グラムは、逃げるのではなくあえて突進。


「【強制転回】」


 伸びていく無数のイバラの隙間を、すり抜けていく。


「まさか、越えてくるというのか……っ!?」


 イバラが伸び切り、刺さる前に駆け抜ける。

 高速直線移動を何度も折り返す形の疾走で、偽グラムは樹氷の魔女の前に飛び出してきた。


「【斬空閃花】」


 放つは、一振りで駆ける六本の軌跡。


「くっ!」


 とっさの防御も、派手に地面を転がる。


「威力も上々だが、本物ほど火力になっていないのは僥倖か……!」


 追撃に動き出す偽グラム。


「【飛び跳ね】! 【巨大化Ⅰ】【ボディプレス】ぽよっ!」


 助けにやってきたスライムは高く跳ね、落下攻撃を仕掛ける。


「【ソニックドライブ】【強制転回】」


 すると偽グラムは無理をせず、駆け抜けて反転。


「【クインビー・アサルト】」

「ぽっよおおおお――っ!!」


 穂先から放たれた閃光が炸裂し、駆け抜ける猛烈な衝撃に転がるスライム。


「さすがトップの中のトップ。ステータスが下がっていても、戦況を一人で変えると言われる能力は驚異的ぽよっ!」


 こうして優位を取った偽グラムは、攻勢に入る。

 早い踏み込みから放つ三連撃。

 これをスライムが細くなってかわすと、樹氷の魔女が攻撃を挟む。


「【三連射】【アイシクルエッジ】」


 攻撃の終わり際を狙った一撃に、偽グラムはやや急ぎの回避となった。


「もう一回【三連射】【アイシクルエッジ】」


 続けざまの魔法攻撃は、もちろんスライムの攻撃チャンスを作るため。


「【材質変化・鋼】【可変・大槌】ぽよっ!」


 コンテナ級のハンマーによる落下攻撃は範囲もあり、完全な回避は不可能。

 ダメージ必至の状態に、しかし偽グラムは慌てない。


「【鬼人の加護】」


 ごく短時間だが、物理ダメージを大幅減少するスキルでやり過ごす。


「【ソニックドライブ】」


 そして再び、攻撃のターンへ。

 連続突きを、下がってかわすスライム。

 距離ができると、偽グラムはさらに【ソニックドライブ】で後を追う。


「【クインビーアサルト】」

「ぽっよおおおお!」


 直撃は回避するも、放たれた衝撃波に再び転がる。


「【グングニル】」


 そして態勢を崩したところを突く、必殺の一撃。

 重い破裂音を鳴り響かせての投擲は、閃光を走らせる。


「【アイシクルエッジ】!」


 しかしこの瞬間を、樹氷の魔女が必死のフォロー。

 肩を弾いた氷刃が、【グングニル】の軌道をわずかに変更させた。


「スライムよ、槍がない状況なら反撃の流れが来るはずだ」

「……そういうことぽよかっ!」


 槍を投じたばかりの偽グラムの前に、駆け込むスライム。

 しかしグラムの攻勢に、隙はない。

 戻る槍を待たずに、偽グラムは空いた手を突き出した。


「【雷煌震砲】」


 その手に、弾けるほどのエネルギーが収束。

 轟雷が、猛烈な輝きを放った。

 強烈な火力を誇る一撃は、近接かつ投擲もできる槍使いが所持するには、『反則』というしかない一発。

 付近の掲示板組が、「マズい」と息を飲む。しかし。


「これを待っていたぽよっ! 【帯電】!」


 樹氷の魔女が告げた『槍がないからこそ』生まれる反撃の流れ。

 スライムは、猛烈な雷の輝きを吸収。

 その身体にまとうと、反撃に移る。


「【砲弾跳躍】ぽよ――っ!」


 大きく跳ねての突撃で、偽グラムを吹き飛ばす。

 煌々と輝く稲光と共に、地を転がる偽グラム。


「顕現せよ、冷徹なる零度の白牢――――【臨界氷樹】!」


 渦巻く冷気が敵の足元に集まり、急速に降りる霜が一気に氷の大樹を生み出す。

 転がり、その中心へと飛び込んだ偽グラムは凍結し、直後の爆発に巻き込まれた。さらに。


「【超可変・海王】!」


 巨大な一角の海獣に変身したスライムが、空を舞い飛び掛かる。

 激突。

 残ったHPゲージを一撃で消し飛ばされた偽グラムは、解ける変身と共に粒子となって消えた。


「やはり本人ほどのパワーや、技術はなかったようだな」


 クールに杖を下ろすのは、レンの真似。

 カッコよく決めたところで、これまたクールにスライムとハイタッチ。


「偽グラムが落ちたぞ! 俺たちもこのまま突き進めぇぇぇぇ!!」


 そしてこの勝利は、街を守るために戦う掲示板組や住民たちを勢いづけた。

 南部の要所ジャリオデネイロは無事、プレイヤーたちによって取り戻されたのだった。



   ◆



「これがトカゲたちの使ってたポータルか……」

「これを辿れば、メイちゃんたちのいるところに行けるんだよな!」

「メイちゃんに会えるのか!」

「楽しみぽよっ!」

「使徒長、今向かいます」


 こうして掲示板組は、ポータルを遡る形でジャングルへ。

 たどり着いたのはクク・ルル島、パピテアの断崖を下った先。

 まさに、メイたちのいるダンジョン内の森林だ。


「ここがメイちゃんの故郷……!」

「しまった、親御さんへの手土産がない!」

「よし、近くの魔物を狩って持っていきましょう!」

「それもう、ご両親ともトカゲで想像してない?」

「あっいた! メイちゃんだ!」


 全員の目が、見つけたメイに向かう。


「「「え……っ?」」」


 そして全員が、その状況に自らの目を疑った。

誤字脱字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!

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― 新着の感想 ―
[一言] 掲示板組対蜥蜴メイ対銀メイ対ダークラメイ ファイ!
[一言] トカゲメイに遭遇したのか、ニセメイ軍団に遭遇したか
[一言] 論理クイズは正確ですね、 模範解答は kaitoさんの解答 6月30日の木曜日 3人の意見は以下の通りです。  明 5月 12日 月曜  博 6月 12日 木曜  健 6月 14日 火…
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