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1076/1383

1076.突入

 見事、大蛇を操っていた魔導士トカゲを打倒したメイたち。

 四人は勝利に笑い合った後、残った大蛇の方へ視線を向ける。

 崖下りの際に現れて、強制的に戦闘へ駆り出されていた大きなヘビ。

 戦いの最後には共闘までしたその魔物は、力なく伏せていた。


「わあっ! 大丈夫ーっ!?」


 一見すれば怖く感じそうな大蛇も、ジャングル育ちのメイには関係なし。

 近づいても逃げることはなく、さっそくその美しい色使いの鱗に触れてみる。


「元気がない……」


 大蛇はこちらをじっと、力の抜けた状態で見つめている。

 こんなことはこれまでなかったため、困惑してしまう。


「おそらくこのヘビの救出は、ミッションになると思うんだけど……」


 本来なら崖での戦いで退けるか、打倒して終わり。

 こうして後を追ってくるような形で再会し、魔導士トカゲたちから解放するのは、間違いなく追加のクエストだ。


「今の状況って、段階制のクエストを途中まで成立させた状態に見えるのよね」


 魔導士トカゲの手から解放して、第二段階が終了。

 しかしマップ上にはまだクエストアイコンが残っている状況を、レンは想像する。


「……もしかして、お腹が減ってるのかな?」

「それ、ありえるわ」


 メイの何気ない言葉に、大きくうなずくレン。


「なるほど、このクエストが異世界解放の後に出て来たのであれば、その可能性はあります」


 これにはツバメも賛同する。


「で、では【マッドブルのシチュー】はどうでしょうか」


 そう言ってさっそく、まもりが料理を取り出して大蛇の前に置いた。

 すると大蛇はシチューの入った小型の寸胴をうれしそうにくわえ上げ、そのまま口の中へ。


「鍋ごといきました」

「ふふ、さすがに寸胴だけ律儀に吐き出したりはしないのね」

「た、足りなくないでしょうか」


 大蛇にとっては、人間で言えばクッキー一枚になるかくらいの量。

 量の少なさを心配するまもりだが、大蛇は満足そうに息をつく。

 そして、メイのもとへ寄ってきた。


「もしかして、一緒に来てくれるのっ?」


 すっかり元気な大蛇に、問いかけるメイ。

 すると大蛇もメイの身体に巻きついて、うれしそうに頭をすり付ける。


「とても人懐っこい感じですね」


 どうやら今度は巻きつかれても、ダメージにならないようだ。


「元気になって良かった! これからどうぞ、よろしくお願いいたしますっ!」


 メイがブンッと元気に頭を下げると契約が成立し、【召喚の指輪】に新たな力が宿る。


「なるほど、召喚獣だったのですね」

「段階制クエストの報酬は新たな召喚獣。なかなかいい感じね。来たかいがあったわ」


 こうしてメイはミッションを見事に達成、新たな召喚獣を仲間にしたのだった。


「さて、思わぬ形で仲間もできたし、次はあの洞穴に行ってみましょうか」


 断崖の下部には、芸術的な紋様と共に掘られた住居のようなものが並んでいる。

 中には、見張り台の用途を兼ねているものもあるだろう。

 だがそんな中に、見るからに本命ルートであろう高さ3メートルほどの洞穴が一つある。

 そこには銀などの金属なども使った、住居区画よりも豪華な意匠が施されている。

 そしてその前には、左右三体ずつのトカゲ像。

 掲げる形で交差させた剣や槍、杖がアーチとなっている。


「行ってみようよ!」


 村人たちを救うため、躊躇することなく進むメイ。

 四人は自然と、洞穴に向けて歩を進める。

 途中、断崖に開けられた窓から見張りであろうトカゲの顔がのぞくが、メイはしっかりと木の陰を選んで進攻。

 ゴールデンリザード狩りでは、そっと近づいて弱点を一撃で狙うのが一番早い。

 そのため、木々で視線を遮るような動きもお手の物だ。


「見張り台からこの洞穴を見られる位置にいるトカゲは二体だね。でも視線を左右に動かしてるから、どっちかだけ倒せば通れそうだよ」

「了解しました【隠密】【忍び足】」


 この言葉を受けて動くのはツバメ。

 トカゲの視線が外れた瞬間に一気に全員で駆けつけて、トカゲ兵を打倒するが基本。

 しかしメイたちの場合は、少し違ってくる。

 ツバメは音もなく壁を上がり、トカゲ兵のもとに進むと、もう一体の見張りの視線が離れたところでスキルを発動。


「【アサシンピアス】」


【致命の葬刃】の『認識外時の攻撃力増加』もあり、見事一撃で打倒。

 最速の打倒によって、生まれた余裕。

 メイたちは問題なく、洞穴に踏み込んでいく。

 次にもう一体の見張りトカゲが振り返った時には、四人全員が内部への侵入に成功した後だった。


「ここが本命で、間違いなさそうね」

「は、はひっ」


 紋様入りの石壁が続く道を真っ直ぐに進んでいくと、その先には一つの小さなホール。

 そこには円形に並んだ、金意匠入りの石柱が八本。

 石床の中央には、刻まれた魔法陣と埋め込まれた宝珠が見られる。

 転移方陣だ。

 四人がその中央に乗ると、宝珠から光が流れ、魔法陣が輝く。

 たどり着いたのは静かで暗い、大型のホール。


「「「「……ッ!?」」」」


 その足もとは大理石のような石材で作られ、魔法陣が無数に描かれている。

 天井には等間隔で埋められた魔法珠に、青い光が灯っている状況だ。

 だが何より異質だったのは、整然と居並ぶ1000体を超えるトカゲたち。


「いきますっ!」

「はいっ!」


 メイとツバメが、すぐさま武器を手に特攻。

 しかし駆け出した二人は、その速度を徐々に緩めて足を止めた。

【ソードバッシュ】で先制を仕掛けようとしたメイが剣を下ろし、思わずトカゲを見つめる。


「……冬眠してるみたい」


 目を閉じたまま、動かないトカゲたち。

 その身体は冷たく、そして固い。

 立像の様に動かないトカゲたちの列を抜けて進むと、奥の壁には大きな世界地図が描かれていた。


「こ、ここで世界侵攻の計画を立てていたのでしょうか……っ」


 地図には、村や町らしき場所にピンが押され、その色によって攻略中、侵略済みなどに分かれているのだろう。


「こう見ると、やっぱり知能が高いのが分かるわね」

「誰かくるよっ!」

「「「っ!?」」」


 メイの、まさかの言葉に耳を澄ます。

 すると下り階段から聞こえてくる、重い足音。

 四人はすぐさま、石壁の出っ張りに隠れる。

 出入り口からやって来たのは、マントを付けた指揮官級の重装トカゲ。

 続いて、長いローブをまとった魔術師の首領のような大トカゲ。

 そして、軽装ながらも鋭い目をした淡い色のトカゲ。

 見るからに大物といった感じの三体のトカゲたちは、世界地図を確認。

 魔術師のようなトカゲが手にした杖を輝かせると、冬眠状態のトカゲたちが目を覚ました。

 続けてホール中央に、旧型ポータルが登場。

 指揮官トカゲはそのまま、1000体のトカゲを引きつれどこかへと消えていく。

 そして、再び減った分の冬眠トカゲが足元の魔法陣から現れ、元通りの光景となった。


「こんなのが世界中に散らばっていったら……本当に国も大陸も乗っ取られるわ」

「しかも皆、何かしらの変身能力持ちですか」


 派兵を確認した魔術師トカゲと鋭い目をしたトカゲは、ホールの出入り口から去っていった。


「お、おそろしい光景でした」


 メイたちは新たに設置された冬眠トカゲたちに息を飲みながら、魔術師トカゲの去っていった出入り口へと向かう。


「っ!?」


 するとメイが再び、違和感に顔を上げた。

 出入り口を出てすぐのところで、頭上に開いた穴から何かが落ちてきた。


「「わああああああ――――っ!?」」


 思わず声を上げたメイは、落ちてきた何者かに押しつぶされた。

 まもりが盾を持ち、レンの前に立つ。

 そしてツバメが短剣を手に駆け出したところで、メイが「あれ?」と首と尻尾を傾げた。

 落ちてきた者の姿に、見覚えあり。


「迷子ちゃん!?」

「メイさん!?」


 現れたボロボロのメイド服姿の少女は、行方不明中の迷子ちゃんだった。

誤字脱字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!

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― 新着の感想 ―
[一言] そんな気はしてたけどやっぱり召喚獣追加のサブクエかー……メイちゃんファミリーが増えたw 流石迷子ちゃん、登場タイミングが読めない
[一言] さすが迷子ちゃん。登場の仕方からしてひと味違いますね!
[一言] 論理クイズはこれだと不十分ですね、最初に南波は市民(正直者)と言っていますし。
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