1067.偽アルトリッテ
町を支配するために潜り込んでいた伏兵、町人トカゲとの戦い。
そこに現れたのは、聖騎士アルトリッテの姿をした個体だった。
「プレイヤーそっくりトカゲは、クエストが進むたびに強化されてる気がするから、気を付けたいわね」
「に、偽物でも、【エクスカリバー】は迫力があります……っ」
本物のアルトリッテは、小さくとも驚異的な火力を誇る。
偽物がどこまでの力を持つか、思わず走る緊張。
「【連続魔法】【ファイアボルト】！」
先手を打ったのはレン。
駆け出した偽アルトリッテは、回避しながら接近。
見事な脚力を見せる。
「【ホーリーロール】」
強い踏み込みから、豪快に一回転して攻撃に入る。
どうやら、スキルまで真似ることのできる個体のようだ。
「【クイックガード】【地壁の盾】！」
聖なる光を灯した、横なぎの剣撃を続ける。
そこからさらに、連続で二回転。
「盾！ 盾！」
しかしまもりも、続く二連発のところまで想定してしっかり防御。
「【シールドバッシュ】！」
反撃は、盾の突きつけによる衝撃波。
「【セイントシールド】」
対して偽アルトリッテも盾の攻撃を盾で受け、砂煙をあげつつ後退。
「【フレアアロー】！」
生まれた距離。
偽アルトリッテは前方への『跳躍』で、追撃の炎矢を回避しながら接近する。
「【シールドブラスト】」
「「っ!!」」
剣ではなく盾の叩きつけは、まもりの足元へ叩きつけられた。
回避しても吹き付ける暴風でレンにヒザを突かせ、まもりの体勢を崩す見事な攻撃だ。
「【エクスクルセイド】」
まもりが慌てて体勢を立て直したところで、偽アルトリッテが繰り出すのは、聖なる輝きの刃。
「【天雲の盾】からの【天雲の盾】っ！」
この剣撃は、輝きの刃の後に聖属性の爆発を巻き起こす。
しかし本物のアルトリッテと一緒に戦ったことがあるまもりは、そのことを知っている。
続く爆発まで、しっかりと防御。
「おっと！ つまらない横やりはさせないぜ！ 【ソードエクスプロード】！」
まもりを背後から狙いにいこうとした町人トカゲを、掲示板組パーティが連携で打倒する。
「助かるわ！ 【フレアストライク】！」
それを見たレンはすぐに、迫り来ていた町人トカゲから、偽アルトリッテに攻撃魔法の狙いを変えて発射。
【セイントシールド】は間に合わず、肩を弾いた炎砲弾がHPを1割強ほど削り取った。
「【連続魔法】【ファイアボルト】！」
尻もちをついた偽アルトリッテ。
ここでレンは町人トカゲを軽い魔法攻撃でけん制し、動きを見る。
すると町人トカゲは回避しながらの前進で、再度まもりを狙いにいく。
短距離高速移動で踏み込めば、当然まもりは盾を構え、レンは防御直後の隙を狙う形を取る。しかし。
「シュルルルルルル!!」
放たれたのは、特有の音を発する【号令】
「「っ!?」」
『走行』や『跳躍』といった、トカゲの固有スキル。
その中でも、リーダー級だけが持つ『召喚』の使用。
まもりを囲む形で空中に現れた六つの魔法陣から、付近にいた町人トカゲたちが同時に飛び出してきた。
掲げた武器を、全員が一斉に振り下ろす。
二枚の盾でも防ぐのが難しい包囲攻撃は、回避力のないまもりには最悪の攻撃だ。しかし。
右の【獅子霊の盾】と左の【太陽紋の盾】を持ち、まもりはそのまま一回転。
「【大回転撃】！」
豪快な二つの盾の振り回しは、町人トカゲたちをカウンターで弾き飛ばす。
六体全てが、地面をバウンドして転がり、転倒を取られた。
「いくぞ！」
「「「おうっ！」」」
すかさず掲示板組パーティが続いて、倒れ込んでいる町人トカゲたちの打倒に回る。
「いい連携……っ！」
こうなればレンは再び、偽アルトリッテに集中することが可能となる。
「【コンセントレイト】【低空高速飛行】！」
魔力を溜めながら距離を詰めるレンは、偽アルトリッテの目前へ。
杖を突きつければ、アルトリッテに化けたトカゲは必ず、盾による防御を選択するだろうと予想。
「【セイントシールド】」
予想通りの展開に、思わずこぼれる笑み。
「アルトリッテ本人だったら絶対に回避を選んでるわ！ 【ペネトレーション】【フレアバースト】！」
杖から放たれた爆炎は盾を貫通し、偽アルトリッテを吹き飛ばす。
溜めから放った一発で、残りHPは3割以下。
ここで詰めに行くのは、まもり。
対して起き上がった偽アルトリッテは、すぐさま剣を引く。
「【セイクリッドレイジ】」
放つ高速の剣舞は凄まじい速度で、聖なる光の刃を連発する。
「【チャリオット】！ 【クイックガード】【天雲の盾】！ 盾盾盾盾盾盾盾っ！」
だがまもりも止まらない。
巻き上がる聖属性の爆発まで押しのける形で、そのまま偽アルトリッテのもとへ。
「いきますっ！ はああああああ――――っ！」
そのまま【魔神の大剣】を叩き込んでトドメ。
変身が解けたトカゲは倒れ、粒子となって消えた。
「いい詰めだったわね！」
「アルトリッテさん本人より火力が低かったので、なんとか……っ」
「本物だったら、もっと地面を転がされてるものね。それに私とまもりが相手なら、足元から突き上がる【グランドクルス】の方が正解。使われる前に叩けて良かったわ」
「や、破れかぶれタックルもありませんでした」
「意外とあの勢いが、いい味を出してるのよね」
本物のことを思い出して、レンがフフッと笑う。
「あ、あの、ありがとうございましたっ」
すると盾の後ろに隠れながら、まもりが掲示板組パーティにペコペコと頭を下げた。
「普通に助かっちゃたわね」
レンも持ち上げた杖を振って、礼とする。
「……使徒長ちゃんと一緒に戦うと、自分が強く優秀になったかのような勘違いができるんだよなぁ」
「あるある」
笑う掲示板組パーティ。
偽アルトリッテ以外の町人トカゲも、掲示板組パーティがしっかりと打倒していく。
町に隠れていた伏兵たちは、このまま全て片付けられそうだ。
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