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1062.違和感が大事

「トカゲたちは単純な武力だけではなく、『人間に化けた仲間』を増やしていって世界を奪うってこと?」

「そうなります。トカゲが王都までやって来ているということは、すでに侵略は始まっていると考えていいでしょう」


 レンの問いに、考古学者は静かにうなずいた。


「『星屑』は本当に、変わったクエストをもってくるわね」

「メイさんの偽物を倒したことで始まったクエスト……この後はどこに向かえばいいのでしょうか」

「すみません。情報がとても少ないので、今は何とも……」

「次はレンちゃんかツバメちゃん、まもりちゃんのそっくりさんを探すのかな」

「それってかなり難しいわよね。この広い世界で……」

「自分にしか見えないそっくりさんが、今この世界のどこかにいると思うと不思議な感じがします」


 まもりも「ご迷惑をかけていなければいいのですが……」と、心配そうにつぶやく。


「そっくりさん探しの場合はやはり、『こんな顔の人が来ませんでしたか』と、自分の顔を指さしながら聞いて回るのでしょうか」

「二十面相みたいな怪盗を、探す時のやり方ね」

「……っ」


 自分で言い出しておいて、怪盗のという言葉に白目をむくツバメ。

 すると考古学者は、メイのもとにやって来た。


「もし変身トカゲを見つけた場合、あえてギリギリで打倒しないという手が有効かもしれません。弱って変身が解ければ、仲間たちのもとに逃げ帰る可能性があるので」

「なるほどー」


 そんなアドバイスに、こくこくとうなずく。


「やはり今できる事としては、南下して怪しい街や村を探して、トカゲを見つけ出す。または自分に似た人の目撃情報を集めるのどちらかですね」

「そうなるわね。一応、南の街から順に見てみましょうか」

「それがいいと思います」


『何かあったら聞きに来てください』と、王都で待つ考古学者と分かれた四人。

 変わらず混んでいるロマリアの街並みを、ポータル目指して進む。


「こうして誰もが楽しそうに異世界へ向かっている中、ひっそりと新たな影がこの世界に伸びている。そう考えると恐ろしいですね」

「まさかプレイヤーに化けてその勢力を伸ばしてくるなんて。その中に自分そっくりに化けた魔物がいるかもしれないって考えると、本当にすごいわね」

「ちょっと怖いのに、ドキドキしちゃうよ……っ」

「は、はひっ。不思議なドキドキ感があります……!」


 まもりも、盾を手にしたままブンブンとうなずく。

 恐いのになぜかワクワクできるのは、まさにゲーム世界の特権だろう。

 四人は付近をキョロキョロと見回しながら、人だらけのポータルへ。

 世界南部の大きな街の一つ、『ラバンコク』へとたどり着いた。


「緑が多いですね」


 広がる光景に、ツバメが辺りを見回す。


「街並みが綺麗でいいわねぇ」


 この付近は、密林の間に作られた道を抜けていくようなマップになっており、とにかく植物が多い。

 街中にも各所に木々が並び、鮮やかな花も咲いている。

 また木製の建物が多いため、メイに『ジャングル化された街』のような雰囲気がある。

 街行くNPCたちの格好も、半そでにサンダルといった感じで軽快だ。


「あっ! 食べ物のお店もあるよ!」


 見つけた飲食店は、屋台の形式も多い。

 さっそくメイが駆けつける。


「バナナが普通に売られてるのね」

「できれば、加工した状態でお願いします……っ」


 メイ、バナナそのものを手に持つ姿はできるだけ控えたい。

 広報誌は、どの瞬間を狙ってくるか分からない。


「トムヤムクンや、グリーンカレーを思わせるものもありますね」

「とりあえず、軽く楽しめるバナナスムージーを頼みましょうか。まもりもどう?」


 まもりがこくりとうなずいたのを見て、レンは四人分を購入。

 受け取ったまもりは、静かにバナナスムージーを口にする。


「わあ! おいしいっ!」

「はい、ひんやりとした感覚と風味が良いですね」

「まもりちゃんはどう?」


 メイの問いかけに、まもりは首肯で応える。


「他にも色々あるけど、今回は時間が過ぎるほど侵略が進むみたいだから、先を急ぎましょうか」


 こくりと、うなずくまもり。

 こうして四人は止まることなく食事処をすり抜け、街の外へ。


「……んー」

「メイさん?」

「どうかした? もし何か気になることがあるのなら、話してみて?」


 レンは首を傾げるメイに共感のようなものを覚えて、そっと耳を寄せる。


「……なるほど、ツバメはどう? 何か感じた?」

「今、気になった事と言えば……」


 するとツバメも、後に続く。

 そして確信を得たレンは目を合わせ、三人うなずき合った。


「南国の都市もいいわね。やっぱり自然を感じられる場所はいいわ」

「はい」

「そうだねぇ」

「意外と食べ物関係も、ここならではの物があっていいわね」


 そこまで言ったところで、レンは突然小走りで前に進み、三人と距離を取ったところで振り返る。


「ところでまもりは、口にしたことのない食べ物があるって分かってるのに、ほとんど食べずに進むと、寂しそうな顔をするんだけど……」


 そう言ってまもりに杖を向け、問いかける。


「一切それが表情に出ない貴方は、どこの誰?」

「【バンビステップ】!」

「【加速】【リブースト】【反転】!」

「――――【シールドブラスト】」


 直後、手にした盾を豪快に振り回したまもりが、強烈な烈風を吹き荒れさせた。

 しかし、この流れまで予想していた三人。

 メイとツバメは、質問するのと同時に高速で直進して、レンの横に並んでいた。

 初めての食べ物があるのに無口のままでいたまもりを見て、三人が覚えた違和感。

 どうやら次のクエストに、いち早く気づく形になったようだ。

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[良い点] ま、まもりちゃんが既に敵の手に!? きっと本人は港で変わった食べ物見つけてフラフラしてたら迷子になってその隙に偽まもりちゃんが合流したとみた。 [気になる点] もしやあくまで擬態だから声…
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