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1060.そっくりさん

 異世界への動きもあり、いつも以上に込み合っている王都ロマリアの大通り。


「しつれいしますっ!」

「失礼します!」


 四人が追いかけるのは、メイにそっくりな誰か。

 あまりに似ているため、発見者のツバメは思わず二度見、三度見したほどだ。


「待ってー!」


 メイは呼びかけるが、そっくりさんの足は速く、大通りをスムーズに通過。


「髪型だけでなく、猫耳と尻尾まで再現するとはお見事です」


 その意気や良しと、ツバメも必死に後を追う。


「【ラビットジャンプ】!」

「【跳躍】【エアリアル】!」


 メイとツバメは一度脇にそれ、建物の上からターゲットを追うことにする。

 この位置から飛び降りて捕まえるというのはさすがに厳しいが、メイの視力なら見失う可能性はないだろう。

 狙いはそっくりさんが途中で道を変え、人通りが少し落ち着く場所までいったところで声をかける形だ。


「待ってー!」


 メイは叫んでみるが、この人並の中ではさすがに届かない。

 幸い猫耳が目立つおかげで見失うことはなく、そっくりメイが角を曲がったところをしっかりと目撃。

 行き先はある程度、人通りの少ない道になっている。


「ツバメちゃん!」

「はいっ!」


 大通りの左側の建物を走る、メイとツバメ。

 そっくりメイは、右側の角を曲がった形だ。

 今からまた地上に降り、人の川を横切る形で追うのはさすがに不可能。


「ツバメちゃんっ!」

「し、失礼いたします」


 ツバメはちょっと照れながら、メイに抱き着く。


「いきますっ!【ラビットジャンプ】!」


 するとそのままツバメを連れて、メイは大ジャンプ。

 王都の中央通りともなれば、一つのジャンプで飛び越えられる距離ではないが――。


「【ターザンロープ】!」


 メイは向こう側の建物の屋根の出っ張りに、ロープをかけた。


「アーむぐっ」


 うっかり「アーアアー!」しそうになるメイの口を、塞ぐツバメ。

 メイはちょっと恥ずかしそうに「てへへ」と笑って、ロープを強く引く。

 そしてそのまま、大通り右側の建物屋根に着地した。


「あっち!」


 もちろんメイは、それでもターゲットを見失わない。

 人気が減った道を、スイスイ進むそっくりメイを追って、そのまま屋根上を進行。

 そして王都の外れ近くまで進み、ようやく普通の街並みより少し多いくらいの人通りになったところで、地面に着地。


「待ってー!」


 メイはもう一度声を張るが、やはりそっくりメイは止まらない。


「【疾風迅雷】【加速】【加速】【加速】【リブースト】!」


 そんな中、ツバメは道の端にできた『人のいない』直線を利用して一気に加速。

 ついに、そっくりメイの背中に追いついた。


「少々よろしいででょうか……っ!」


 そう言ってそっくりメイの肩に手をかけると、振り返ったその姿は――。


「メイさん……?」

「ええええええ――――っ!?」


 これにはさすがに、メイも驚きの声を上げる。

 そっくりさんどころか、顔も格好も全くメイと同じ。

 それはまるで、クローンのようだ。


「メイさん、実は双子だったのですか?」

「そのような記憶は、ございませんっ!」

「それなら一体、この方は……」


 何度も両者の顔を見返して、困惑するツバメ。


「おい見ろ」

「あっ、メイちゃん……二人いる?」


 まさかのメイとメイの邂逅に、通りがかりプレイヤーたちも首を傾げる。


「あなたは一体、誰ですかっ?」


 そしてメイが、そっくりメイを前にそう問いかけたところで――。


「「ッ!!」」


 頭上に現れるHPゲージと共に、そっくりメイは剣を抜いた。


「【ローリングブレード】」


 大きな踏み込みから放たれるのは、移動しながらの回転撃。

 メイとツバメは慌てて後方へ大きく跳躍して、これを回避する。


「さすがにスキルまで一緒とはいきませんか! 【電光石火】!」


 着地から放つ速い斬り抜けを、そっくりメイは剣で防御。


「【フルスイング】!」


 そこに飛び込んできた本物メイの振り払いを、こちらも後方への大きな跳躍で回避。


「【エクスプロードシェル】」


 左手から放たれた炎弾の狙いは、本物メイだ。


「っ! 【装備変更】【フルスイング】!」


【魔断の棍棒】でとっさに撃ち返した炎弾は、慌てて身体を低くしたそっくりメイの頭上数センチをかすめて、建物に直撃。

 大きな爆発を起こして、粉塵を巻き上げる。


「「「おおおおおお――っ!?」」」


 豪快な戦いに、あがる驚きの声。

 するとそっくりメイは建物の壁をスキルもなしに駆け上がり、そのまま宙に躍り出た。

 そして、手にした剣を掲げる。


「【ガイアストライク】」

「【バンビステップ】!」

「【跳躍】!」


 メイとツバメは、後方移動で距離を取る。

 するとそっくりメイの叩きつけた一撃が、王都の石床に大きな穴を穿った。

 その威力に、観戦者たちが倒れ込む。


「な、なんだか本当にメイさんと戦っているかのようです……!」


 相手が完全にメイと同じ姿だったため躊躇していたが、侮れない強さを誇るそっくりメイに、油断は許されない。


「いきます! 【連続投擲】!」

「っ!?」


 ツバメの投じた【風ブレード】が巻き起こす烈風に、そっくりメイがわずかに体勢を崩す。


「【加速】!」


 砂煙が晴れたところで、武器を【村雨】に替えたツバメは新スキルを発動。


「【妖刀化】【稲妻】!」

「【装備変更】!」


 メイもここで、【白鯨の弓】に装備を変更。


「【アクロバット】からの【曲芸連射】!」


 バク宙しながら放つ五連発の矢を、そっくりメイの右腕から左腕にかけてヒットさせた。


「やっぱりHPはあんまり減ってない……! ていうかなんであんな『弱い矢』を!?」


 好機に状態異常の矢を使ったメイに、あがる驚きの声。しかし。


「動きが、止まったぞ!?」

「あの強さの敵に、一発で状態異常が入った!?」


 そっくりメイは、その場で突然の硬直。


「上手くいっているようですね!」


 メイが放ったのは【痺れ矢】

 状態異常武器ということで、単純な火力は低め。

 そして蓄積型のため、数を当てないと【麻痺】を発生させられない。

 そのため弓術士は、確実に当てられる状況なら『火力の高い攻撃スキル』で通常の矢をぶつける。

 まして中ボスクラスになれば、状態異常耐性も高い。

 そのせいで『星屑』では、割と『死に武器』になっている類の状態異常矢。

 だが【妖刀化】による『耐性ダウン』を施してからであれば、その限りではない。

 何かの攻撃をしようとしたのか、半端なポーズのまま停止中のそっくりメイ。

 もちろんこの隙を、ツバメは逃さない。


「【雷光閃火】!」


 ツバメは武器を短剣に持ち替え、そっくりメイに一撃。

 火花を上げ、大きな爆発が起きると、戻ってきた短剣をキャッチする。

 するとHPゲージの消えたそっくりメイは、そのまま粒子になって消えていった。


「なんだこれ……」

「メイちゃんがメイちゃんと戦って、勝ったメイちゃんはアサシンちゃんとハイタッチして、負けたメイちゃんは魔物みたいに粒子化して消えていった」


 突然街中で始まった、メイとメイの戦い。

 その顛末に、誰もが不思議そうに首を傾げたのだった。

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