1050.まもりと味覚試験
風光明媚な、トリアスの街。
その一角で見つけた、タヌキのシェフたちが開店準備をしているレストラン。
出てきた料理を『美味しさ順に並べる』という新たな問題を前に、メイは「全部美味しい!」と答えた。
それからイチかバチかで並べてみたものの、さすがに不正解。
これまでなかったタイプの、高難度試験。
ここで名乗りを上げたのは、まもりだった。
「まもりちゃん! がんばって!」
メイはさっそく、拳を握って応援する。
目の前に並んだ、三つの皿。
その上に乗ったステーキは、全てサイコロ型の一口サイズだ。
「それでは、どうぞ」
タヌキシェフの言葉に、まもりは目を輝かせながら、さっそく一つ。
「はぁ……美味しいです」
うれしそうに笑って、次のステーキをかみしめる。
「はぁ……美味しいです」
そして最後のステーキを、鼻歌交じりにいただく。
「まもりちゃん、どう?」
「はいぃ、美味しいですぅ」
「ダメそうなんだけど……」
「メイさんの時と同じですね」
頬をほころばせながら、応えるまもり。
三つとも「美味しい」という展開は、メイの時とまるで同じだ。
そこはかとなく、不正解の気配が流れ出す。
「では、美味しさ順に並べてみてください」
タヌキのシェフに言われたまもりは、意外にも何も迷うことなく皿を並べた。
するとタヌキのシェフは順番を確認して「なるほど」と、うなずいた後――。
「正解です!」
短い手で『マル』を作ってみせた。
「すごーい!」
「やるじゃない!」
「これは驚きました」
すぐにまもりの肩を、ポンと叩くレン。
メイとツバメは拍手で、成功を祝う。
「あ、ありがとうございますっ。で、でもこれ結構難しいと思います。肉質の差ということは、味付けは同じだと思うので……」
「なるほど、それだと確かに難しいわね」
味付けが同じだと、そこにある差にはなかなか気づけない。
シビアな問題に、食へのこだわりを持つまもりの感度が活きたようだ。
「それで、合格すると何かクエストの依頼を受けられたりするの?」
「ぜひお願いしますっ。ボクたちはグルメな魔物たちのためのレストランを開こうと思っているのですが、中には食材である魔獣の狩りが必要になるものもあるのです」
「一部料理の材料が、魔獣とかになってるのね」
「考えてみれば『マッドブル』はほとんど牛ですし、『グランボア』は猪。そういった要素が入ってきているわけですね」
現実に牛肉と言っても、様々な種類がある。
その種類の差を、魔獣の種類で再現しているのだろう。
ここでは魔獣を狩り、そのドロップが食材になるのだと、レンは予想する。
いよいよ本格的になってきた、料理システム。
異世界マップの更新と共に解放されたばかりだが、早くもまもりに発見される形になったようだ。
「実はその食材狩り担当に『フレキ』という魔狼を頼りにしたいのですが、まずは契約金代わりとして、最高にうまい料理を食べさせろと言われているんです……」
「さ、最高に美味しい料理……」
その言葉を聞いたまもりは、ゴクリとノドを鳴らす。
「あ、あの……っ」
「このクエストを受けたいって話でしょう? いいわよ」
「新しい方向性ですね。料理作りのお手伝いというのは、面白そうです」
「わたしたちも食べられるのかなっ!」
さっそくワクワクに尻尾を振るメイ。
「お願いしたいのは香辛料【ローヤルクローブ】の購入と、【切り裂き鹿のもも肉】の入手です」
タヌキシェフに渡されたメモには、その入手先と方法が、主にひらがなで書かれている。
「他の食材はそろっているので、あとはこの二つがそろえば、グルメ魔狼であるフレキを満足させる料理が作れると思います。ただどちらも入手が非常に難しく、簡単には用意できません。しかしこの二つを料理に使うことができれば、最高に美味しい料理ができるはずですっ」
「なるほどね。香辛料は商人相手からの購入だし、まずはそっちから行ってみましょうか」
「りょうかいですっ!」
「その後の『切り裂き鹿』に関しては狩りになるのですね……ただ魔獣を倒すではないというのは、少し不思議な感じです。『生息範囲』や『攻撃場所指定』という要素も気になります」
「お、美味しい料理のために、がんばりますっ!」
どうやら狩りの方法にも、一癖あるようだ。
料理系クエストという新機軸のクエストを、四人は快く受注。
「「「よろしくおねがいしますっ」」」
するとタヌキシェフたちが、並んでペコっと頭を下げた。
その勢いで帽子を落とす姿に笑いながら、メイたちは食材回収クエストに動き出す。
「それではいきましょう! まずは香辛料屋さんのもとへっ!」
四人はツタだらけの両開きドアを、数十センチほど開いて外へ。
「それにしても、タヌキさんたちは可愛かったですね」
「はひっ。メイさんとタヌキシェフの並びは、とても愛らしかったですっ……」
「まさか初めて受ける料理系クエストが、人間ではなく動物たちからの依頼になるとは思わなかったわ」
「本当だねぇ」
「やっぱりメイは世界を救った後も、野生に追いかけられているのかもね」
「うわはーっ!」
そんなレンの推測に、頭を抱えるメイ。
新たな冒険にも、早くも笑い声が響くのだった。
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