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105.あやういツバメ

「侍のお化けだって……怖いねぇ」


 時刻は夕暮れ、逢魔が時。

 僧兵の後に続き、三人はヤマトを進んでいた。

 ドキドキしながらも、ワクワクしているメイ。

 尻尾をブルブルと震わせながら、レンの腕に抱き着く。


「私がモンスターなら、メイの方がよっぽど怖いと思うけどね」


 レベル200を超えるプレイヤーなんて裸足で逃げ出すわ、と笑うレン。


「スティール……スティール……」


 一方のツバメは装備を【強奪のグローブ】に変えて、早くも緊張状態にあった。


「ま、陰陽師のところに行くのは急ぎでもないし、道草くらいの感覚でいきましょう」


 レンを見上げて「りょうかいですっ!」と笑って応えるメイに、ほほ笑み返すレン。


「……ヤマトでは、妖気がもとになっている事件がたびたび起きているのだ」

「それ、九尾の仕業なんでしょう?」

「その通りだ。九尾は封じられてもなお、その強力な妖気によって事件を起こし続けている」


 たどり着いたのは、ヤマトの街外れ。

 三千院橋と呼ばれる木造の大橋。

 その下には、夕日を反射して揺れる川の流れが見える。


「ヤツの持つ【妖刀】を、なんとしても奪い取ってくれ。収集家としてアレは絶対に手に入れたいのだ!」


 熱く語った僧兵が一歩、足を引く。

 すると三千院橋の中央から、長い着流しを引きずった二メートルのほどの侍がゆらりと現れた。

 禍々しい文様の彫り込まれた居合刀を手に、静かに構えを取る。


「【連続魔法】! 【ファイアボルト】!」


 先行したのはレン。

 まずはいつも通り、三つの炎を妖怪侍に放り込む。

 しかし妖怪侍は、その場を動くことなく抜刀。

 早すぎる剣の振りで、三発全ての炎を切り捨てた。さらに。

 一瞬の納刀から、ほぼノータイムで放つ四連撃。

 そのすさまじい速度の剣閃は、離れた相手すら斬り刻む。


「うわっと!」

「ッ!?」


 左右から迫っていたメイとツバメを、同時に足止め。

 かわされた斬撃は、そのまま川べりに立っていた木を真っ二つにした。

 どうやら妖怪侍の攻撃に、剣の長さは関係なさそうだ。


「これは相当の威力と速度ね……思ってた以上だわ」


 初動だけで、このクエストの難しさを思い知るレン。


「形としてはメイには回避に専念してもらって、その隙にツバメが【スティール】を連発する形かしら……私要らない子だけど」

「やってみるよ!」


 短く応えて、メイはさっそく妖怪侍のもとへ。

 即座に迫り来る剣閃。


「うわ、うわわっ! うわっととと!」


 一人で受けるとなれば、一瞬の油断も許されない。

 さらにここで、発動するライトエフェクト。


「メイ! 気をつけて!」

「【ラビットジャンプ】!」


 超高速で放たれた四連続の剣閃が、足元を通り過ぎて行く。


「すっごく速い……」


 メイも認める、妖怪侍の攻撃速度。

 時間稼ぎは、なかなか難しそうだ。


「そういうことならっ」


 しかしメイは辺りを見回して、しっかりと他プレイヤーがいないかどうか確認。


「【裸足の女神】!」


 百花のブーツが消える。

 裸足になり、【敏捷】値が一気に10%向上。

 さらに移動跳躍系スキルの効果も上昇。

 再び妖怪侍のもとに飛び込み、抜刀攻撃に立ち向かう。

 放たれる高速の横なぎ、そして返す刃。


「よっ、はっ!」


 続く振り上げからの斬り下ろし。そして十文字を描く連撃。


「左っ、右っ、からの右しゃがみっ!」


 一連の連続攻撃を、見事にかわす。

 輝くライトエフェクト。

 それは稀に来る、超高速の連続攻撃。


「【バンビステップ】!」


 速く鋭い足の運びで、これも見事に回避する。


「やった! 【裸足の女神】なら問題なさそうだよ!」


 目撃する人がいないのなら、ギリギリ許せる野生具合。

 【裸足の女神】による運動性の向上で、メイは高速の居合に対応してみせた。


「さすがメイね! ツバメ、これならいけるわ!」

「メイさん、ありがとうございます! 【スティール】!」


 見事に敵を引き付けるメイ。

 その隙を狙い、ツバメは再び強奪を狙う。


「【スティール】【スティール】【スティール】」


 だが、失敗。

 妖怪侍の視線がツバメに向く。


「【加速】」


 即座に距離を取る。

 すると妖怪侍の狙いは、再びメイに戻った。


「やはり、難しいです……っ」

「まあ仕方ないわ。でもメイの回避ならまだまだ問題ないでしょうから、焦らずいきましょう」

「はいっ。必ず手に入れてみせます!」


 気合と共に応えるツバメは、愚直に【スティール】だけを狙いにいく。



 そして――――3時間の時が過ぎた。



「……レンさん、少しいいですか?」

「どうしたの?」

「【強奪のグローブ】を、左手に装備してみます」

「え、どうして?」

「ここで……乱数を変えます」


 ツバメは少し、おかしくなり始めていた。

ご感想いただきました! ありがとうございます!

その通りですっ!


お読みいただきありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 乱数に囚われてしまったか……
[良い点] いつも楽しく読ませてもらってます [一言] 「乱数を変える」 ガチャとかで沼った人の常套句よねw でもそれで乱数を変えられてるかもわからない上に そもそも元より遠ざかる乱数かもしれないとい…
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