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1033/1384

1033.最強のパーティ×2

 北欧神話の要素を集めたグラムの連携、『ラグナロク』が決まった。

 物理耐性に加えて、一部魔法にも強い強敵ギガンティスは、距離を取りつつ起き上がる。


「ヤマトのイベントで初めて見た時、びっくりしたよね」

「ああ、メイたちの強さには驚かされたもんだ」

「まさかそこに、星屑を騒がせる盾の名人が加入するなんてね」

「鬼に大盾だな」

「い、いえいえそんなっ!」


 笑うローランと金糸雀に、まもりは恐縮する。


「ヤマトの対抗戦は、毎年『天軍』が勝つって評判だったし、今年も行けると思ってた。ね、グラム?」

「来年は分からんぞ! 何せこのオーディンの化身がいるんだからな!」


 神槍を突き上げて怒るグラムに、レンやツバメも笑う。


「こんな大ボスと一緒に戦えてるんだから、あの時メイちゃんたちがイベントに来てくれてよかったよ」

「まったくだ」

「えへへ」

「来年は我らが勝つけどな!」

「さあ、来るわよ!」


 大きなダメージを受けた巨人族ギガンティスは、炎の木剣を手に立ち上がる。


「蹴り上げ、きます!」


 ツバメが声をあげると、始まる豪快な【蹴り上げ】

 前衛組は全力で集中して、飛んでくる無数の石塊を回避する。


「【コンティニューガード】【不動】【地壁の盾】!」


 すさまじい勢いで盾を叩く石片が、鳴らす爆音。

 ようやく落ち着いたところで、見えたのは左脚を振り上げようとするギガンティス。


「もう一度、きます……っ! 【クイックガード】【不動】【地壁の盾】!」


【蹴り上げ】二連発に、まもりは再び防御に入る。

 今回も防御は完璧。

 しかし直前で高くバウンドした岩が、まもりの頭上を超えてレンたちのもとへ落下する。


「「「ッ!?」」」


 三人は全力で飛び転がって、直撃を回避。

 そこにギガンティスはなんと、三度目の【蹴り上げ】を狙う。

 陣形を崩された状況で、喰らってしまうのは厳しい。

 慌てて片ヒザ立ちになったローランは、急いで弓を引く。


「【ライトニングアロー】!」


 超高速の矢は見事にギガンティスに刺さり、どうにか攻撃を遅らせることに成功。

 だがこちらが陣を立て直したところで見えたのは、新たなモーション。


「くるよ! 見たことのない攻撃っ!」


 ギガンティスは手にした炎の木剣を、叩きつけにくる。

 メイたちはすぐに左右へ退避を開始するが、地面を叩いた炎の木剣から巻き起こる爆炎。

 その範囲は広く、ここからの回避は間に合わない。


「【大車輪】!」


 グラムは手にした槍を、回転させて対応。


「【穴を掘る】!」


 メイはなんと、自ら穴に落ちることでこれを回避。


「【加速】【跳躍】!」


 一方ツバメは、ギガンティスの方へ跳ぶことでの回避となった。

 すると空いた方の手を大きく引き、繰り出される『つかみ』

 空中で捕まれば、その圧倒的な力で地面に叩きつけられる可能性が高い。

 ローランは慌てて矢をつがえるが、さすがに間に合わない。


「【エアリアル】!」


 ツバメは迫る手を二段ジャンプで回避して、さらにギガンティスの方へ。

 しかしギガンティスはつかみそこなった手を、今度は払う形で攻撃に転化。

 叩かれたツバメは、そのまま弾き飛ばされた。


「ツバメちゃん!」


 叫ぶローラン。しかし。


「問題ありません。それは【残像】です」


 ツバメはここで跳躍の頂点につき、両手に持った短剣を振るう。


「【八連剣舞】!」

「うまい……っ!」


 これにはローランが、思わず声をあげた。


「ツバメ、やるな……!」

「すっげえ!」


 グラムも金糸雀も驚く。

 八連続の剣撃を受けたギガンティスは、大きく足を引き、なんとそのまま転倒。

 腰から地面に落ちる形になった。


「転倒した!?」


 物理耐性を持つギガンティスが、思わぬ形で見せた隙。


「【ソニックドライブ】!」

「【バンビステップ】!」

「【アクセルスウィング】【キャンセル】!」


 ここでこの好機を攻めるため、駆け込んできた三人。


「「「ッ!?」」」


 同時に驚愕する。

 ダメージに見合わぬ転倒は、プレイヤーを引き寄せるための罠。

 なんとギガンティスは、そのまま地面を転がる形でボディプレスを仕掛けてきた。


「おい! なんだそれはーっ!」

「ぐああっ!」

「うわあーっ!」


 これはさすがに回避不可能。

 グラムと金糸雀、メイが押しつぶされる形でダメージを受けた。

 そのまま立ち上がったギガンティスは、再び炎の木剣を使って攻撃に入る。

 炎剣の振り上げによって、地面を駆け抜ける轟炎。

【爆烈走火】は火力もあり、範囲も広く、連打も可能という強スキルだ。


「【天雲の盾】!」


 だが後衛には、まもりの盾がある。

 迫る爆炎の疾走を、まもりが盾一つで防御。

 後衛組を見事に助ければ、前衛組の状況を見たローランが反撃を狙う。


「【裂空一矢】【バーストアロー】!」


 ギガンティスはこれを器用にかわすが、視線を矢に集中させたことには、大きな意味がある。


「【裸足の女神】!」


 目を取られたことで、超加速で駆け出したメイに対して遅れる対応。

 倒れにくく、物理防御も高い相手に対してメイは、『搦め手』の使用を決意する。


「【モンキークライム】!」


 攻撃はせず、足から一気にギガンティスを駆け登っていく。


「っ!!」


 肩まで登ったところで、大きく払う腕。

 これによってメイは宙に投げ出され、ギガンティスはすぐさまその巨手で叩きつけにいく。


「【ターザンロープ】!」


 しかし先んじて投じたロープが二の腕に絡みつき、メイはそのままブランコのような軌道で回転したところで跳躍。

「アーアアー!」しそうになって、慌てて口を塞ぐ。

 そしてギガンティスの鎖骨前に着地して、一度転がったところで――。


「【グリーンハンド】【アイヴィーシード】!」


 手を突けば、即座に広がるツタの種。

 ギガンティスの巨大な上半身が、あっという間に大量の緑のツタで覆われた。

 おとずれた、攻撃のチャンス。


「ナイスだよ! メイちゃんっ!」


 もがき出すギガンティス。

 この状況で高いダメージを狙うなら、後衛組の攻撃が活きる。


「これだけの時間を、もらえるなら……っ!」


 ここで攻撃体勢に入ったのはローラン。

 溜めの時間を必要とするその一撃に使うのは、先端に芽のついた若枝のような矢。

 吹き始める風が、そのスキルの特別さを物語る。

 やがてまばゆい輝きが、矢の先に灯った。


「いくよ! ――――【ミストルテイン】!」


 放たれた矢は、光の尾を引き一直線。

 どんな耐性による防御も認めない『神すら貫く矢』が、ギガンティスの硬質な身体を突き抜けると、盛大な爆発を巻き起こす。

 これには大きく体勢を崩し、片ヒザを突いた。


「この隙は、逃せない……っ!」


 ここに続くのはレン。


「【絆の宝珠】を、使わせてもらうわ!」


 掲げた宝珠がまばゆい光を放ち、魔法陣を生み出す。

 思った以上に大きな陣から、流れ込む大量の水流。

 その瞬間レンは、理解する。

 突如として、地上に生まれた大海。

 直後、荒れる波間を滑るようにしてできたのは、ボロボロになった一艘の海賊船。

 船に取りつけられた何門もの砲台には、骸骨船員たち。

 リーダー格の骸骨剣士はすでに、『船長』の命令を待っている。


「あんた達……よく来てくれたわっ!!」


 これにはレンが、うれしそうに目を輝かせる。


「準備は、できてるんでしょうね!?」


 そして「もちろんです」とばかりに、うなずくリーダーを確認。


「狙いは巨人族! 撃ち方、始めぇぇぇぇ――――っ!!」


 レン船長が手を振り下ろせば、始まる一斉射撃。

 次々に放たれる砲弾は容赦なく、ギガンティスに叩き込まれる。

 爆破に続く爆破が、王都の暗い空をまばゆく照らす。

 こうしてメイが作り出した好機は、見事にHPを削ることに成功。

 敵HPは、残り5割を切った。

 そして敬礼する海賊たちを乗せた幽霊船は、そのまま波の彼方に消えていく。


「召喚の形でなければ、このまま皆を連れて船に乗り込みたいくらいだわ……っ!」


 全力で杖を振って見送った後、レンは「よかった」と息をついた。


「レンちゃん、もしかして……」


 しかしローランは、一つの異変を感じた。

 向けられた視線に、レンは静かにうなずく。


「前に『MP減少』の状態異常を受けたこともあって……もうMPがないの」


 レンは第四陣辺りから少しずつ、魔法の使いどころを絞っていた。

 それでも、MPは底を突いた。


「だから何かあった時は、まもりはローランを優先して守って」

「っ!!」


 それは最悪の場合、後衛の中心をローランに託すということ。

 その言葉に、まもりは返事をできなかった。

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[気になる点] なんかレンかまもりの強化フラグにしか聞こえない [一言] まさか前に冗談で言った結晶兵器使用か… 腕が結晶化して常時包帯を装備することとかに 本当に右腕に宿って周りから羨ましがられそ…
[一言] MPリソースの枯渇は痛いですね。 回復アイテムとか無いのだろうか? それか瞑想系のスキル。 それそれとして、良くぞ来てくれましたレンちゃん海賊団!!
[良い点] 【穴を掘る】!メイちゃんこのスキル忘れてなかった? …自分は忘れてたw [気になる点] レンちゃんの歓喜の台詞が予想してたのと完全一致してめっちゃ嬉しい! [一言] 指揮官レンちゃん、第…
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