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1032.巨人族ギガンティス

 動き出す第七陣の大ボス、巨人族ギガンティス。


「おそらく炎は効かないはず! 【フリーズストライク】!」


 レンの予想は正解。

 ギガンティスに炎系は、効果が低い。

 そして放った氷砲弾も、その拳一つで破壊されて散った。


「【バンビステップ】!」


 この隙を突き、駆け出していたのはメイ。


「大きくなーれ! 【フルスイング】!」


 強い踏み込みから、縦の回転で振り下ろす【蒼樹の白剣】は大きく伸長。

 すさまじい勢いで、ギガンティスを叩きつけにいく。


「「「っ!?」」」


 鳴り響く衝突音。

 なんとギガンティスは、メイの振り降ろしを左腕で受け止めた。

 大きくヒザを曲げて後ずさったものの、ダメージはなし。


「馬鹿力が、こういう形で活きるわけね……!」

「体大きくて攻撃を当てやすい分、そもそも『硬い』ってところかな」


 ローランの読みは正解。

 高い物理耐性と、一部の魔法を弾くスキル。

 そこに異常な攻撃力を持つのが、このギガンティスという敵の構成だ。


「反撃、くるよ!」

「この距離からか!?」


 大きく引いた足。

 ギガースの動きに、わずかに首を傾げるグラムだが――。


「「「ッ!?」」」


 その意図に、すぐ気づいた。

【蹴り上げ】で豪快に振り上げる足は『蹴る』ためではなく、地面を『抉り飛ばす』ためのもの。


「【バンビステップ】!」

「【疾風迅雷】!」

「【ソニックドライブ】!」


 砲弾サイズから人間並みの大きさの石片が、散弾のように飛び散る。

 敏捷型の三人は、全力で集中してこれを回避する。


「まもりの後ろにっ!」


 一方で後方にいたレンはローランの手を引いて、盾の背後へ。

 金糸雀も、慌てて飛び込む。


「【コンティニューガード】【不動】【地壁の盾】!」


 直後、鳴り響く盛大な衝突音。

 銃弾のような速度で飛んでくる石や岩が盾にぶつかり、恐ろしい音を響かせる。


「この範囲でこの速度は、相当ヤベえな」


 シンプルだが、くらえば大ダメージであろう【蹴り上げ】に、苦笑いしかない金糸雀。


「これがまもりちゃんか、さすがだね! レンちゃん、私に続いて!」


 生まれた攻撃のチャンス。

 ローランはそう言って、洋弓を構える。

【蹴り上げ】はシンプルゆえに、連発される可能性がある。

 ここで一度、この距離間での戦闘の流れを切っておきたい。


「【裂空一矢】【バーストアロー】!」


 弓による超長距離攻撃を可能とするスキルで放った矢は、着弾と同時に爆発を起こす。


「なるほどね! 【魔砲術】【フリーズストライク】!」


 そして先に矢で攻撃を受けていれば、拳で氷砲弾を弾くこともできない。

 二つの攻撃を受けたギガースは、一歩だけ足を引いた。

 これで即時の【蹴り上げ】はない。

 この単純な『順番変更』一つで氷結魔法を生き返らせるのは、さすがローランといったところだ。


「跳ぶかも……!」


 突然、メイがつぶやいた。

 見れば下がった足を使い、ギガンティスは大きく腰を落とす。


「おい! 本当に跳んだぞ!」


 その巨体が地を蹴り飛び上がる姿は、大迫力。


「【ソニックドライブ】!」

「【バンビステップ】!」

「【加速】!」


 その着地は、当然【踏みつけ】となる。

 三人が散開した直後、ギガースの足が三人のいたところにめり込み、付近に衝撃を地面に走らせた。さらに。


「もう一回だと!?」

「また、跳びました……っ!」


 着地の反動を利用して、もうひと跳び。

 しかも今度の狙いは、後衛組だ。

 予想外の展開に、駆ける緊張。

 メイたちの回避を見ていたため、駆け出した後衛組は直撃を避けることに成功する。


「「「「ッ!!」」」」


 しかし深々とめり込んだ足から走る衝撃に、そのまま転倒を奪われた。


「【加速】【リブースト】!」

「【バンビステップ】!」


 すぐに駆け込んできた、ツバメとメイ。


「【電光石火】!」

「【フルスイング】!」


 その軸足に攻撃を叩き込むと、すぐさまグラムが後に続く。


「【雷煌砲】!」


 空いた手から放たれた、強烈な雷光が駆け抜ける。

 メイとツバメの放った物理攻撃への薄い反応、そしてレンの放った魔法への対応を見て、『雷』の魔法へ攻撃を変えたのは見事な選択。

 だがそれでも三つの攻撃が与えたダメージは少なく、行動を多少遅らせることはできても、止めるには至らない。

 右足を高く上げたギガンティスは、そのまま強く【踏みつけ】る。


「うわわっ!」


 モーションは強めの踏みつけ。

 地面を駆ける衝撃がメイたちにまでたたらを踏ませ、転倒状態の後衛組には起き上がることを許さない。

 するとギガンティスはさらに高く足を上げ、今度は【踏み下ろし】を放ってきた。


「なにっ!?」


 これには驚きの声をあげるグラム。

 深々とめり込んだ足は土煙を上げ、前衛組でも立っていられないほどの衝撃を地面に走らせる。


「うわわわわわわっ!」


 メイが両手をグルグルさせて耐えなくてはならない一撃に、ツバメは空中で狙われる危険を覚悟して後方へ【跳躍】

 グラムは、片手を突くことで転倒だけは阻止。


「これだけシンプルな動きでこの火力、かなりの強敵だね……っ!」


 思わずローランがつぶやく。

 大きな有利を取ったギガンティスは、ここで剣を高々と振り上げた。

 狙いは、前衛から後衛までも巻き込んだ巨大炎剣の叩きつけだ。


「……マズいっ!! でもなあっ!!」


 ここで動き出したのは、前衛と後衛の間にいた金糸雀。


「【アクセルスウィング】【キャンセル】!」


『突撃からの振り回し』というスキルを強制停止することで、ギガンティスへの距離を詰めていく。

「悪ィな! 体勢崩しにはそこそこ耐性があんだよ!」


 そして力強い踏み込みから、手にしたハンマーを豪快に振り回す。


「さあ気をつけなぁ! でけえのが倒れんぞォォォォ――ッ!」


 叫んで振るう大型ハンマーの振りは縦ではなく、だるま落としのような横の起動。


「【打脚驚天撃】ィィィィィィ――――ッ!!」


 轟音と共に放たれた新スキルは、そのままギガースの足の外甲部分に直撃。

 なんとそのまま容赦なく足を内側に払い飛ばし、転倒に持ち込んだ。


「すっごーい!」


 大型の敵の足を払って転倒を奪うそのスキルは、たとえ相手が数十メートルの巨体でもしっかりと機能する。

 地を揺るがすほどの派手な転倒に、メイが思わず拳を突き上げ歓声をあげた。


「さあ頼んだぜ! グラム!」


 危機を脱した上に、巨人族を転ばせるという大仕事をやってのけた金糸雀が叫ぶ。

 そしてそのスキルの効果を知っていたグラムは、外部で戦う一人のプレイヤーに目をつけていた。


「戦乙女、一瞬手を貸すがいい!」

「……私!?」


 呼ばれたアーリィは、とにかく急いでこちらへ駆けてくる。


「レン、お前もだ!」

「私も?」


 意外そうな顔をするレンだが、グラムは止まらない。


「まずは戦乙女から! いけ!」

「【リトルウィング】【エアダッシュ】!」


 空を駆け、やって来たアーリィは手にした剣を振り下ろす。


「【ヴァルキリーストライク】【クロスエッジ】!」


 そしてそのまま振り払いにつなぎ、十字の剣撃を叩き込む。


「【ソニックドライブ】!」


 この時すでに高速移動で駆け出していたグラムは、位置を整え槍を大きく引く。


「【クインビー・アサルト】!」


 砂煙を上げながら放つシンプルな突きは、穂先から放たれた閃光を炸裂させ、すさまじい衝撃を放つ。

 その勢いは、以前よりさらに火力をあげていた。

 転倒状態にあったギガンティスを、容赦なく吹き飛ばす。


「今だ! ルーンを使え!」

「そういうことね!」


 レンは転がってくる巨体が、目前で跳ね上がったところをどうにかタッチ。

 すぐさま体勢を立て直したギガンティスが、ヒザを突いたところで――。


「燃えなさい! 【燃焼のルーン】!」


 グラムの動きを見ながら、鳴らす指。

 するとルーンが発動し、ギガンティスの巨体を炎が包み込んだ。

 あがる業火。

 やはり炎属性には強いようで、ダメージは高くない。

 それでもルーンを使った本当の狙いは、この後だ。


「さあいくぞ! 貫け、我が神槍【グングニル】!」


 砂煙をあげる勢いで放たれた神槍が、重い破裂音を鳴り響かせながら放たれる。

 空に閃光の尾を引きながら駆けた槍は直撃し、巻き起こった爆発が突風を巻き起こす。

 その一撃はギガンティスを、再び吹き飛ばした。


「わっはっは! 戦乙女とルーンを操り、グングニルで巨人族を撃つ。もはや私はオーディンだ!」


 戻ってきた【グングニル】を手に笑うグラム。


「この連携の名は『ラグナロク』! 運営よ――――ここは見開きだぞ!」


 そう言って、カッコよく槍を振り払ってみせた。


「それじゃ最後は、メイに狼を召喚してもらいましょうか」

「やめろ! 縁起でもない!」


 最後はフェンリルに喰われて死んだオーディンを茶化したレンの冗談に、ちゃんとツッコミを入れるグラム。


「やっぱり、メイちゃんたちと一緒の戦いは楽しいなぁ」


 そしてローランは、楽しそうな二人の掛け合いにクスクスと笑うのだった。

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[良い点] こうやって新たな神話が紡がれるのですね [一言] メイちゃんの友達に竜系はなんか違うかなと思ってたが… 次の友達はやたら金糸雀に喧嘩をうる巨大な毒蛇とかありかな?
[良い点] たーおれーるぞー! [気になる点] 倒れた巨人をガリバー旅行記よろしく拘束したり乗って攻撃するのも楽しそう。 [一言] メイちゃんの狼はちゃんと咥えるから締めには最適だね、神話的には咥えら…
[一言] 論理クイズ「幼女と2頭の馬レース」は発想力100%の問題 行きますね。 これは割りと有名かも…。 問題 幼女2人がそれぞれ自分の馬に乗っている。 そこを通りかかった王様がこう言った。 …
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