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1031.様子見してました

「これが聖剣のアルトリッテか、さすがだな!」

「メイちゃんと一緒だと、元気も勢いも二倍って感じで最高ですね!」


 第六陣との戦いも佳境。

 メイたちが古の迷い人を打倒したことによって、わき立つプレイヤーたち。


「あぶないっ!」


 二足型の虎が速い動きで迫り、振り下ろす石斧。

 輝くエフェクトは、範囲攻撃のものだ。


「「「っ!?」」」


 しかしどこからか飛んできた矢が、虎型戦士の足に刺さり爆発。

 その体勢を大きく崩した。

 この隙を突き、すぐさま攻撃を叩き込む参戦者たち。

 見事そのまま勝利をつかんだ。


「なんかちょくちょく援護が入るけど、どこから来てるんだろう……?」


 しかし付近にそれらしき者はなく、首を傾げる参戦者。


「これで終わり――っ!」


 ここでアーリィが【エアダッシュ】からの【ヴァルキリーストライク】で、最後の敵を打倒。

 見事、第六陣を全て片付けた。


「アーリィちゃん、ないすーっ!」


 拳をあげて飛び跳ねるメイに、気づいたアーリィも手を振り返す。


「……でも、どこまで続くのかしら」


 レンが息をつく。

 第六陣が片付いても、『鍵』の青年やゼティアの門に変化はなし。

 プレイヤーたちが陣形を組み直せば、再びゼティアの門に輝きが灯る。

 異世界の魔物は今回も、大名行列のような形で登場する。


「数が少ないですね」

「そ、その分強そうです……っ」


 敵は大型の魔物が10体ほど。

 見慣れない姿だが、その外見からすぐにボス級だと分かる。

 それを見て、トップ勢が自然と前に出る。

 そして、最後尾は――――。

 ゼティアの門から出てきた手が、縁をつかむ。

 まるで暖簾でも潜るかのように、こちらの世界へ入り込んでくる怪物。


「これは、大物だ……」


 見上げるほど大きい濃灰色の身体に、燃えるように赤いボサボサの長髪。

 その内側に輝く、金の瞳。

 腰に巻かれた獣の皮。

 踏み出す度に、重低音を鳴り響かせる。

 燃え盛る巨大な木剣を引きずる姿は、圧巻の一言だ。


「最初に出てきて、新帝国の『天使の輪』をつかみ落とした怪物と似てるわね」

「巨人族と、言ったところでしょうか」

「おおー、すごーいっ」

「お、恐ろしいですね……っ」


 巨人族ギガンティス。

 これが、第七陣の大ボスだ。

 この大物を相手に、今度は『天使の輪』が使えない。

 誰もが恐れる巨大な怪物を前にして、再び始まる戦い。


「いきますわよ」

「「「はいっ」」」


 今回はボス級の敵が並んでいるため、トップ勢が先行して攻撃。

 続く参戦者たちは、その戦いを見ながら魔物に追撃を入れていくという形を取る。

 トップ勢たちが斬り開く道。

 メイたちは進み、ギガンティスのもとへ。

 あらためて、人型としてはめったに見ない巨大さに驚く。


「この迫力、半端じゃないわね」


 思わずつぶやく言葉。

 ギガースはこちらの接近に気づき、手にした炎の木剣を掲げた。


「さあ、勝負だーっ!」


 盛大な炎をあげながら、振り下ろされる剣。

 これをメイが、大きなサイドステップでかわす。

 するとギガンティスは、そのまま炎剣を振り払う。


「っ!」


 駆け抜ける豪炎。

 さらにギガンティスが炎剣を高く掲げ、吹き上がる炎のエフェクトを輝かせたところで――。


「【バーストアロー】!」


 飛来した矢が肩口で爆発し、いきなり体勢を崩した。


「【ソニックドライブ】!」


 そこに恐ろしい速さで飛び込んできたのは、ツバメよりもわずかに小さな、長い白髪の少女。

 黒いコートに、黒銀の部分鎧。

 その手には、白金の長槍が握られている。


「【グングニル】!」


 投じた神の槍は、轟音と空気を割るようなエフェクトと共に猛進。

 そのままギガンティスを貫き豪快に炸裂、ヒザを突かせてみせた。


「あ、あれは……!」


 そのすさまじい火力に、ざわつく戦場。


「ようやく、我が神槍の出番のようだな」


 回転しながら戻ってきた【グングニル】を手に取り、余裕の笑みと共に振り返ったのは――。


「待たせたな――――グラム・クインロードの登場だ」


 星屑界が誇るトッププレイヤー、神槍のグラムだった。


「よう、フェスぶりだな」


 続けてやってきたのは、長い金髪を雑に結んだ、ちょっと不良っぽい雰囲気の少女。

 金糸雀は、鈍い銀色のチェストアーマーに、大きめのガントレットでつかんだハンマーが特徴だ。


「どうにか間に合ったみたいだね」


 最後に苦笑いと共に駆けつけてきたのは、頭部と脚だけに西洋鎧を装備した、ポニーテールの少女。

 さわやかな笑顔が似合う洋弓使い、ローラン・アゼリア。


「ここは下がっていろ、聖剣」

「む?」


 グラムはアルトリッテに掌を向け、その動きを制する。


「大丈夫か? 見るからに強敵だぞ」


 そんなアルトリッテの言葉に、グラムは「フッ」と笑みをこぼす。


「知らないのか? 神槍のグラムが来たということは――――敗北などありえなくなったということだ」

「全開だねぇ」

「まあ、手間取った上に舞台が舞台だからな」


 得意げに胸を張るグラムに、笑うローランと金糸雀。


「手間取った? 何かあったの?」


 レンが二人に問いかける。


「本当はもっと早く登場したかったんだけど、先を越されちゃったんだよね」

「一度カッコよく登場しようとしたんだけどよ、先に聖剣たちが来て慌てて隠れたんだよな」

「言うなー! 神槍のグラムには、ふさわしい登場が必要だったのだ!」


 実はアルトリッテの【不敗の命運】と【サンクチュアリ】による攻撃を見て、「このまま終わっちゃったらどうしよう……」と、冷や冷やだったグラム。

 第七陣の登場に、心の底から安堵しているのだった。


「わっはっは! やはり見せ場はこのグラムのために準備されていた!」


 グラムは残されていた大物に歓喜しながら、神槍グングニルをギガンティスに向けた。


「それはすなわち、貴様がこのグラム・クインロードに――――倒されるということだ!」

「おおーっ! カッコいいーっ!!」


 そして新たな仲間の登場に歓喜の声をあげたメイに、得意げな顔をして見せるのだった。

誤字脱字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!

返信はご感想欄にてっ!


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― 新着の感想 ―
[一言] グラム(見せ場が残ってて良かったーーー!) アルトリッテ(判るぞその気持ち!) レンちゃん(………そこはかとなく不安を感じるわ)
[一言] 答えは正解ですね、やっぱり瞬殺でしたね、模範解答と模範解法は。 正解 15枚 解説 先週1週間で着たシャツは7枚。 今週1週間で着たシャツも7枚。 クリーニング店に預けるのも渡すのも、毎…
[良い点] 矢で援護と言えばやっぱり…と思ったら既に到着してて出待ちw [一言] ギガンティスの一撃をメイちゃんが力押しで弾き飛ばしたら凄い映えそう。
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