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1030.覚醒の聖騎士

「今回は持っていかれちゃったね」


 そう言って、笑う怪盗。

【原始結晶】による驚異の攻勢は、ツバメの【スティール】成功によって強制終了した。


「この戦いが終わったら、あたしの仕事も手伝ってね!」

「ありがとうございました。できれば、【スティール】なしの役割でお願いします」


 消えていく怪盗に、手を振り返すツバメ。

 メイやレンを中心に巻き起こる、温かな拍手に恐縮する。

 こうして【原始結晶】を失った古の迷い人は、HPが3割を切った。


「くるぞ」


 当然ここから、戦い方を苛烈なものに変えてくる。

 広い『溜まり』の上を、駆け出す古の迷い人。

 速い移動で、アルトリッテのもとへ。

 踏み込みから放つ、豪快な振り払い。


「【フルスヰング】」

「っ!」


 これをかわすと古の迷い人は、新たなスキルを発動。


「【追憶ノ戦士】」


 溜まりが生み出した影の戦士は古の迷い人を飛び越え、ハルバードを振り下ろす。

 高々と突き上がる衝撃波に弾かれたアルトリッテは、二歩ほど下がる。


「【加速】!」


 これを見たツバメは、加勢に入るが――。


「【追憶ノ騎士】」


 対応するように飛び込んできた影の騎士が剣を振り降ろし、払い、そして速い踏み込みからの突きへと続ける。

 放つ怒涛の剣撃。


「これは……っ!」


 ツバメを回避に集中させるほどの剣技、これはどうにか避け切るが――。


「【紫電壱閃】」

「っ!」


 古の迷い人が超高速の斬り抜けを放ち、回避直後のツバメの腕を切り裂いていく。


「【ラビットジャンプ】! からの――!」


 そこに迫るのはメイ。

 跳躍から一気に、掲げた剣を叩き込みにいく。


「【追憶ノ魔導士】」


 しかし古の迷い人の二歩後ろに現れた影の魔導士が、放つ爆炎魔法。


「わあああああああ――――っ!


 メイを大きく吹き飛ばす。

 その範囲は【ヘクセンナハト】を手にした、レンにも劣らない。


「レンさん! マリーカさん! 【かばう】【天雲の盾】!」


 燃え上がった炎を切り裂くようにして飛んできた【暗宵剱】の剣撃を、まもりが受ける。


「【フレアストライク】!」

「……【霊鳥鳳火】」


 レンとマリーカは反撃に入るが、古の迷い人は右側に退避し数センチの回避を見せた。


「ほとんど分身ね、本体はかなり自由に動けてるわ」


 一気に優位を奪った、古の迷い人。

 ここでさらに、猛攻をしかけにくる。


「【追憶ノ壱行】」

「「「ッ!!」」」


 なんと三体の影が、同時に登場。

 駆け出す先にいたのは、またもアルトリッテ。

 先手を打ってきた、追憶の騎士による払い。

 下がったところに、大きな踏み込みから放つ豪快な振り降ろし。


「【セイントシールド】!」


 これを金の盾で受けると、その火力に大きく弾かれた。

 そこに駆け込んでくるのは、追憶の戦士。

 今度は大きな横回転で、弧を描く力任せの一撃。


「くっ! なんというパワーだ!」


 続けざまにこれを受けたアルトリッテは、尻もちをつき転がる。

 ここで古の迷い人は、『動けばそこを撃つ』というチラ見一つで、魔導士組をけん制。

 必然的に、まもりまでその場に縫い付ける。


「【バンビステップ】!」

「【加速】!」


 そのため追撃を止めに向かうのは、メイとツバメ。

 しかし追憶の魔導士は、手にした影の杖で地面を叩くよう振り下ろした。

 自身を中心にした凄絶な爆発は、驚くほどの高火力。


「「「っ!?」」」


 前衛組三人を、容赦なく吹き飛ばす。

『追憶』たちの恐ろしい連携は、その火力も一級品だ。


「メイ! 【ペガサス】!」


 爆破の煙の中、見えたエフェクトの輝きに駆け出すアルトリッテ。

 高く跳んだ古の迷い人は、手にした槍を投じる。


「これは……っ!?」


 連携の最後に続く形で、古の迷い人にこれまでに見られない動き。

 その手には、これまでの『影』ではない『古い実物の槍』


「【不治呪ノ鎗】」


 炎と煙を吹き飛ばすようにして突き進む一本の槍は、そのままメイに突き刺さる寸前で――。


「【ハードコンタクト】!」

「アルトリッテちゃん!?」


 激しい体当たりによる、入れ替わり。

 身代わりになったアルトリッテの肩を、そのまま貫いた。

 槍は溜まりに刺さり、そのまま消えていく。


「これは……」


 ダメージは約1割。

 だが、それに加えて【不治】という状態異常に陥った。


「【暗宵剱】」


 古の迷い人は、攻撃を続ける。

 放った剣撃をアルトリッテがかわすと、毒のようにHPが減少。


「【ペガサス】!」


 距離を詰めるため、スキルを発動した瞬間にHPが大きく減少。


「【ホーリーロール】!」


 続く回転撃を放つと、さらに大きく減少。

 古の迷い人は、これをかわして剣を握る。


「【フルスヰング】」


 これにアルトリッテは、慌てて距離を取る。

 するとそのバックステップに合わせて、またもHPが減った。


「……そういうことか」


 足を止め、HPの減少が一時的に止まったのを見て確信に至る。

【不治呪ノ鎗】を受けると、始まる異常。

 それは移動せずに止まっていれば、ダメージはなし。

 しかし動けばダメージ、攻撃や防御で高ダメージ、スキルを使えば大ダメージという恐ろしい状態異常だ。


「アルトリッテ下がって! おそらくそれは神話をもとにした呪い。たどり着く先は死に戻りしかない!」


 それは戦力としてはもう、見込めないということ。

 生き残るには、下がって待つこと以外に何もできない。


「いや……ちょうどいい」


 しかしアルトリッテは、その場でそっと輝きの剣を掲げた。


「アルトリッテ……? どういうこと?」

「ゆくぞ【エクスカリバー】……ついに、時がきた」


 つぶやくアルトリッテは、ここで新スキルを発動する。


「守れ! 【不敗の命運】!」


 アルトリッテの身体が、まばゆい黄金の光に包まれた。

 そして輝きの剣を、古の迷い人へと向ける。


「我が鞘の守りを、お前に破れるか? 【ペガサス】!」


 スキルの発動と同時に大きく減ったHPは、なんと一瞬で元通り。

 聖剣【エクスカリバー】を最強たらしめる鞘の加護が、減少するHPを即座に補充。さらに。


「【サンクチュアリ】!」


 アルトリッテは勝負をかける。

 発動と同時に広がる、光の領域。

 それは時間と範囲限定で聖属性の武器とスキルを、大きく強化するもの。

 そしてアルトリッテのスキルは、そのほとんどが聖属性。

 自動回復と、強化された装備。

 ここからは、聖騎士アルトリッテの絶対時間だ。


「【追憶ノ戦士】」


 駆けつけてきた影の戦士が、振り払うハルバード。

 しゃがんでかわすと、巻き起こる衝撃波が駆け抜ける。

 続く一撃は振り降ろし。

 荒々しいエフェクトが広がる。


「【ホーリーロール】」


 しかしそれを超える黄金の輝きが、戦士を一撃で斬り飛ばす。


「【追憶ノ騎士】」


 古の迷い人が、すぐさま繰り出す影の騎士。

 大きな跳びかかりで、放つ剣。


「【ホーリーライト】」


 しかしこれを、勢いよく突き上がった聖なる光の柱が消し飛ばす。さらに。


「【追憶ノ魔導士】」

「解放剣技【エクスクルセイド】!」


 登場の流れをすでに読まれていた魔導士は、登場と同時に消し飛ばされた。

 すると古の迷い人は、その右手を高く突き上げる。


「【追憶ノ壱行】」


 戦士がハルバードで放つ、烈風の一撃。

 騎士が振り下ろす剣から放たれる、巨大な真空刃。

 魔導士が撃つ、豪炎の魔法。

 三者の攻撃が一つになる、同時攻撃。

 迫る必殺の一撃を受けても、即時回復のアルトリッテは止まらない。


「【グランドクルス】!」


 足元から立ち昇る黄金の輝きは、そのまま天を焼くほどの巨大な十字聖光を突き上げる。

【サンクチュアリ】によって強化されたその一撃は、なんと一発で【追憶の壱行】を全員消し去った。


「残り時間はわずか。このまま全て片付けるっ!」


 残りHPの減ったボスが、モードを変えた際に見せる驚異的な攻勢。

 それに真っ向から打って出られる、至上のスキル。

 アルトリッテはそのまま勝負を付けにいくが、古の迷い人も奥義でそれに対抗する。


「――――【函舟】」

「ッ!?」


 溜まりが大きく波打ち、荒れ狂う海のように変わる。

 そして迫る高い波間から飛び出してきたのは、紋様の刻まれた影の巨大箱舟。

 回避を許さぬ一撃が、アルトリッテを押し潰さんと迫りくる。


「アルトリッテちゃん!」

「メイ! いくぞ!」


 隣りに駆け込んできたメイに、アルトリッテは合図一つで前を向く。

 二人は剣を掲げると、そのまま正面から箱舟にぶつかり合う。


「【セイクリッド・レイジ】!」


 聖なる怒りという名の剣技は、【エクスクルセイド】を連発するような超火力剣技。

 その強烈な一撃が決まるごとに、砕け散っていく箱舟。


「いきますっ! 【装備変更】からの【ソードバッシュ】――――エクスプロード!」


 そこにメイの【狐火】の一撃が決まり、迫る巨大な箱舟を見事粉砕。

 しかし、ここで切れる【不敗の命運】

 再び始まるHPの減少。


「【バンビステップ】!」

「【ペガサス】!」


 それでもアルトリッテは、メイと共に前へ。


「アルトリッテ! あとはメイに!」

「……アルトなら、大丈夫」

「【フルスイング】!」


 メイが豪快に振り下ろす一撃を、古の迷い人は後方への跳躍で回避する。

 しかしこれは、続く一撃のための布石。


「そこまでだ! 解放剣技【エクスクルセイド】!」


 直後に続いたアルトリッテの一撃が聖なる光を吹き上げ、古の迷い人を消し飛ばした。


「……最後はアルトの勢いとパワーが敵を打ち砕く。これは――――いつものこと」


 宙を舞った古の迷い人はそのまま落下し、『溜まり』に飲まれる。

 その溜まりも蒸発するように消え去れば、残された鎧と兜も崩れて砂となった。


「アルトリッテちゃーん! すごかったよー!」

「肝心なところでは、メイに助けられてしまったな!」


 残りHPはわずか。

 アルトリッテは駆けつけてきたメイとハイタッチして、抱き合う。


「この鞘がある限り、我が勝利は運命に導かれる!」


 はしゃぐアルトリッテ。


「……なくしそう」

「やめろ、縁起でもない!」

「……失くした途端に転落する、第二のアーサー王になりそう」

「やめろおおおお――っ!」


 そしてそんなマリーカとの掛け合いに、皆笑うのだった。

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[良い点] おお絶対防御ではなく即時超回復! そこに聖域発動でのエクスクルセイド乱舞! アルトリッテちゃんが完成した! [気になる点] アルトリッテ王、メイの超腕力ハイタッチで残ったHP消し飛ばされて…
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