1024.軍勢
「なんという……圧倒的な力……!」
「すばらしい。これが闇の始祖か」
「始祖そろいし時、世界の深淵が開かれる」
使徒勢はこの並びを見て、震えながら歓喜を口にする。
「まったく、古い連携を持ち出したものだな」
「どうだい、懐かしかったかな?」
「ああ。やはりこのメンバーは悪くない」
「またいつでも一緒に戦いましょう。ただし、貴方たちの目が覚めたらね」
「目が覚めたらか……分かっているぞ、ナイトメア」
レンが笑いながら言うと、リズが穏やかな声で返した。
「貴方、もしかして……!」
真っ直ぐにこちらを見るリズに、レンは一つの可能性に思い至る。
それは『目が覚めていたけど乗っかっていた』というものだ。
「闇の力に酔うな。そういうことだろう?」
「悪いけどボクは、このまま君に先を行かせるつもりはないよ。でも、力に酔っているわけでもない」
「そういうのから目が覚めたらよ!」
「あら。光の使徒であれば、闇から目覚める必要はありませんわよ?」
「ああもうっ!」
そう言ってレンは、苦笑いを浮かべるのだった。
赤月の夜によって始まった、異世界からの魔物流入。
第四陣は強力な魔物が多かったため、消耗も大きく苦戦の様相が見られていた。しかし。
「アンデッドの王が倒れたぞォォォォ――――!!」
「「「ウオオオオオオオオ――――ッ」」」
第四陣の核である死骸王が、闇の始祖と白夜によって倒されたという事実が、皆の意気をあげる。
「いきますっ! 【ソードバッシュ】!」
【鹿角】メイの速い移動から繰り出される、援護の衝撃波が敵を削る。
「いまだー! かかれーっ!」
「【加速】【電光石火】!」
「――【封魔手裏剣】」
動きの速い豹型のボス級にツバメの斬り抜けが決まり、続く雨涙の大型手裏剣で隙を生み出す。
そこから始まる参戦者たちの連携で、一気に戦況が決する。
「ヒカリ、先手をお願いします!」
「【ホワイトノヴァ】!」
「いくぜ! 【ディバインスラスト】!」
光の使徒たちを中心にした『白色』の一団による、敵密度が高いポイントへの攻撃。
敵陣を崩したところにプレイヤーたちが攻撃を仕掛けていけば、こちらも問題なく勝負がつく。
「後はそいつらだけだ!」
殲滅戦も、いよいよ大詰め。
六道彼方は最後の魔物に向けて【照準】を使用。
攻撃の的を一人に絞ることで、あいまいな狙いでも矢がその対象を狙って飛ぶそのスキルで、攻撃を仕掛ける。
「【神速連射】!」
放つ高速の連射に、虎人型の魔物は速い回避をみせた。
「【弾幕斉射】!」
そこから50本に及ぶ矢を一斉に放つが、これも速い動きで回避。
一転、その速い足を使った反撃を狙いにいくが――。
「矢の雨をかわしたことで、危機を脱した――――否。如月の狙いは、始めからこの瞬間」
【ゴーストダイブ】によって影に沈んで移動してきた如月輪廻は、敵の背後を取る形で登場。
「【バックスタブ】」
手にした宝石剣。
背後から決めれば大ダメージを与える一撃で、見事に最後の魔物を打倒した。
「「「「やったぞおおおお――――っ!」」」」
あがる歓声。
これで第四陣の魔物、全てが片付いた。
広い王都前草原に残っているのは、プレイヤーだけだ。
敵数の多さに苦しんだものの、闇の使徒と暗夜教団の介入が、プレイヤー側に勢いを与える形となった。
「レンちゃんお疲れ様ーっ!」
「お、お見事でした……っ」
「最高の戦いでした。詠唱で参加できなかったのが残念です」
「何を残念がってるのよ。でも、援護を中心にすることで回復も進んだみたいね」
集まれば、自然と笑いがこぼれる四人。
いつものようにハイタッチで、互いの健闘を称える。
「さて、ここからどうなるかしら」
風雲渦巻く『赤月』は未だ、その輝きを失っていない。
『鍵』の青年も新たな封を張るために、懸命に力を使い続けている。
これまでは敵数が減れば、次の流入が始まるという形だった。
今回は完全に、敵の増加が途切れた状況だ。
「この静けさが、逆に奇妙ですね」
「は、はひっ」
闇の使徒と暗夜教団も様相を見守り、皆がゼティアの門の動きに視線を向ける。
「……何か来たよ!」
見えたのは、新たな魔物の姿。
しかし先ほどまでの一斉大量流入とは、形式が違う。
「な、なんだか、大名行列みたいです」
それを見たまもりが、つぶやいた。
ゼティアの門から出て来るのは、しっかり整列した魔物の行列。
「これまでとは違って、明らかに弱そうな個体がいない……」
聞こえてきた参戦者の声。
確かに数を減らした分だけ、質を高めたように見える。
「あの感じだと、ちょっとしたボスの行列って感じね」
レンの見立ては、正解だ。
好き勝手に流入してきていたこれまでとは違い、魔物の一軍勢といった形になっている。
それは何者かに、率いられているような感じがする。
先手の好機ではあるが、レンは攻撃をせず様子をうかがう。
付近のプレイヤーたちも、攻撃の開始と同時に開戦となってしまう可能性を考えて動かない。
「来たぞ……」
「こいつがこの軍勢の、大トリか……!」
第五陣はまるで、将が率いる魔物の一団。
行列の最後尾から悠々と『こちらの世界』にやって来たのは、一体の大きな怪物。
ほの暗く青白い肌をした、鬼を思わせる敵だ。
その顔には白く輝く目のような模様と、並んだ牙の模様のみ。
頭部の非対称かつ鋭利な三本角が目に付くが、何より特徴的なのは大きな背から生える腕。
左右に4本ずつ、合計8本。
その手の全てに鉱石や宝石でつくられた剣を持っている姿は異様で、かなりの迫力がある。
また上半身には、鉤爪で付けられた傷のような紋様が光っている。
まるで配下のように並べた、ボス級の魔物たち。
見ただけで大物だと分かる堂々とした姿に、誰もが息を飲む。
「第五陣、いよいよといった感じがありますね」
「うん、本当だねっ」
「あ、あんな敵の攻撃、どうにかなる気がしません……っ」
「始まるわ」
居並ぶ第五陣の魔物と、控える怪物。
敵が好き放題出てくる形は終わり、明らかに変わった戦闘方式。
「どうやら数で押す形は終わりを迎えたみたい。ここからはおそらく……最後の流れよ」
多腕の悪鬼が、掲げる腕。
それを合図に、次なる戦いが始まった。
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