表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1019/1385

1019.暗夜教団と共に

「さあいこうか。異世界の魔物が、ボクにひざまずくんだ」

「そういうのはいいから……」


 杖を持たず、魔法は右腕のバングルで放つという特殊な戦い方をする刹那。

 右手だけ執刀医のように上げるのが、彼女の構えだ。

 相手は、大きな翼を持った二足のアンデッド。


「くるよ」


 死翼竜は、朽ちかけの大きな灰翼を広げて滑空。

 そのまま低空飛行でけん制してから空へ登ると、開いた口から【大炎弾】を連発する。


「【飛び影】」


 細かく速い足運びで、刹那は難なくこれをかわす。


「【ファントムダンス】」

「【夜駆け】」


 続く二人も良い移動スキルを持つため、回避は上々。

 死翼竜は【大炎弾】を連射した後、わずかな『ため』を見せて再放出。

【溜め大炎弾】はそのまま地面に深く突き刺さって地面を割り、火柱を突きあげた。

 広い範囲を持つ攻撃だが、三人は冷静にかわす。


「さすがね。これくらいは問題にならない」


 暗夜教団の回避能力に、うなずくレン。

 すると死翼竜は強く一度羽ばたき、降下を開始。

 並ぶ刹那と輪廻目がけて、特攻を仕掛けてくる。

 二人は翼による衝突に気をつながら、サイドステップでこれをかわしにかかるが――。


「「「ッ!?」」」


 これには四人全員が驚愕する。

 死翼竜はなんと、そのまま刹那と輪廻の間に『墜落』した。

 身体が折れて飛び散り、翼や脚も千切れ飛び、そのまま転がり爆破。


「くっ」


 盛大な炎が走り、本当に飛行機の墜落現場のようになった。

 爆炎に弾かれた二人は転がり、どうにか体勢を起こす。

 すると死翼竜の『壊れた』部分は、あっという間に再生。

 どうやらこの【超速再生】が、死翼竜の武器の一つのようだ。


「再生速度が異常に速い……でもHPが回復しないのは助かるわね! 【フリーズボルト】!」

「【ファントムダンス】」


 すぐに元通りになった死翼竜のもとに、けん制を放つレン。

 そこに駆けつけるのは、如月輪廻。

 使用武器は属性効果を持つ宝石剣と、新体操のようなリボン。

 ここでは手にした宝石剣で、敵の足もとを斬りつける。


「【雷光剣】」


 すると雷撃の剣を受けた死翼竜は、すぐさま反撃。

 腕による二連続の叩きつけ、これをかわした輪廻が反撃に入ろうとするが――。

 三度目の叩きつけは、体重をかけ肩ごといく。

 潰されないよう、慌ててバックステップでかわす輪廻。

 すると竜の肩は地面にめり込み、へし折れた腕が跳ね転がってきた。

 そして千切れた腕はなお、輪廻をつかみにくる。


「ッ!?」


 まさかの展開に、驚愕する如月輪廻。


「驚異的な攻撃。これでは大ダメージは避けらないか――――否! 【スピンターン】!」


 ダンスのような動きの半回転には、わずかな無敵回避時間あり。

 竜の手は、その肩を弾くに留まった。

 だがそれでも、死翼竜の攻撃は続く。

 転がり起き上がるのと同時に、斜めの軌道で叩きつける尾。

 これを真横へのステップでかわすと、今度は千切れた尾が跳ね転がる。


「っ!!」


 輪廻はとっさにしゃがみ、運良く直撃を回避。

 燃え上がった尾を見て、思わず息を飲む。


「危険でございます! 【呪爆の矢】!」

「【連続魔法】【フリーズボルト】!」


 さらに追撃をかけようとする死翼竜に、彼方とレンが援護に入る。

 すると死翼竜は、これをかわして宙へ退避。

 広げた大きな翼に走る、複雑な紋様の輝き。

【扇翼閃光】は、翼の表面から大量の光線が発射される攻撃だ。


「見たことのない軌道でございます!」


 六道彼方が驚きの声をあげた。

 一見シンプルなその攻撃は、『あみだくじ』の線を描くような迫り方をするため軌道が読みにくく、回避が難しい。

 刹那は冷静に見計らって回避に動き、輪廻はとにかく軽いフットワークで逃げる。

 そして彼方は無理をせず、回避と防御を繰り返しつつ対応した。


「めずらしい攻撃……」


 特殊な軌道で迫る光線。

 しかしこの瞬間も後方のレンは、光線だけでなく死翼竜の動きに注目する。

 死翼竜は回避が難しい初見のスキルを使用し、こちらの注意を奪ったところで翼の角度を変えるのが見えた。


「ここでもう一度、急降下!」


 目くらましからの、自爆特攻。

 一直線に、輪廻の方に向けて急降下して来る。


「させないわ! 【魔砲術】【超高速魔法】【ファイアボルト】!」


 気づいたレンが放つ、狙撃のような炎弾。

 空を一直線に駆け、そのまま死翼竜の胸元に直撃した。


「「ッ!?」」


 空中でわずかに体勢を崩した死翼竜は着地点をずらされ、そのまま暗夜教団二人の真横を砂煙をあげて転がっていく。


「「「うまいっ!!」」」


 レンの見事な対応に、使徒志望勢からあがる歓声。


「攻めてっ!」

「ならばまずは如月が! 【ペインワルツ】!」


 レンの指示にいち早く気づいたのは輪廻。

 ムチやリボンを自在に打ち付けるスキルで、【風刃リボン】を三連発。


「【呪爆の矢】でございます!」


 続く彼方の矢が炸裂し、さらなる隙を作り出す。


「さすがだよナイトメア……! 【連続魔】【ブレイズキャノン】!」


 そして刹那の放った魔砲弾が三連発で直撃して、闇色の炎を巻き上げた。


「初級魔法なら五連発、上級魔法でも三連発可能って、本当に美味しいスキルね」


 味方の危機を救い、連携の流れを生み出したレンに注がれる称賛の視線。

 しかし当の本人は意に介さない。

 強力な連続魔法スキルに息をつきながら、すでにリズたちの戦況確認に入っていた。

 やがて連携によってあがった煙が、ゆっくりと晴れていく。

 その中に、見えた輝き。


「回避!」


 それでも指示は早い。

 レンが叫んだ次の瞬間、死翼竜は【レーザーブレス】を放出。


「【ファントムダンス】」


 煙を貫いて放たれた光線を、輪廻は細かく速い足さばきで回避。


「【夜駆け】」


 彼方も大きな連続バックステップでかわす。

 すると死翼竜は顔を下げ、光線を『下から上へ』吐き出す。

 レーザーブレスで草原に『線』を引けば、吹き上がる炎の壁が刹那一人を分断する。

 死翼竜は、その場で翼を大きく開く。

 火の壁で逃げ場を制限し、【扇翼閃光】を刹那一人に放つ狙いだ。


「そうはさせないわ! 【誘導弾】【連続魔法】【フリーズボルト】!」


 しかし緩い弧を描いて飛ぶ四つの氷弾は、炎の壁を飛び越えるようにして飛来。

 落ちる軌道で、死翼竜の頭部に直撃。

 攻撃を事前に止めてみせた。


「……全く大したものだね。加勢だけじゃなく救援までこなしちゃうなんてさぁ」


 そう言って振り返った刹那。


「……っ?」

「そこまで! 【フリーズストライク】!」


 しかしレンが続けざまに放った次撃はなんと、使徒連合側の死伏竜に向けたもの。

 歓声が上がり、レンの攻撃が『向こう側』で大きな役割をこなしたのが分かる。


「……やるね。でもキミがボク以外に目を奪われてるなんて、ちょっとだけ嫉妬しちゃうなぁ」


 その視野を活かした戦いぶりに、思わず笑みを浮かべる刹那。


「いいから攻撃しなさい!」

「ふふ、分かったよ。【飛び影】【連続魔】【ブレイズバレット】!」


 レンの言葉に、敵に迫りながら五連続の魔法を放つ刹那。

 死翼竜の目前で、その足を踏み鳴らす。


「【チェーンスキューア】」


 すると矢じり付きの鎖が、八本一気に突き出し敵を刺した。


「ここは如月が続きます【スワンジャンプ】【エクステンダー】」


 ふわりとした跳躍から放つは、手持ちのリボンを伸ばして打ち付ける一撃。

 消えていく炎の壁を、突き抜け炸裂。

 死翼竜がまとった体表の死肉を、弾いて散らす。


「【弾幕斉射】」


 続くのは、六道彼方。

【技量】に依存する矢の一斉掃射は、なんと前回より10本増え、50本の矢の雨を降らした。


「【フリーズストライク】!」


 最後はレンの氷砲弾が炸裂し、大きく下がった死翼竜はたまらず空へ。

 今度はレンを狙って、滑空を開始する。


「【ブリザード】!」


 しかしレンは、この可能性も予想済み。

 早めの対応で、自身の前に張る激しい氷嵐の壁。

 これを目の当たりにした死翼竜は、直前で進路を変更してターン。


「追わせてもらうわ! 高速【魔砲術】【誘導弾】【連続魔法】【ファイアボルト】! 【魔砲術】【誘導弾】【連続魔法】【ファイアボルト】! 【魔砲術】【誘導弾】【連続魔法】【ファイアボルト】!」


 12発の炎弾を【魔砲術】【誘導弾】で放てば、空を逃げる竜を炎弾が猛スピードで追いかける形になる。

 炎の尾を引き迫る12の炎弾。

 死翼竜は急に速度を上げ、振り返るのと同時に【大炎弾】で対抗。

 燃え上がり、飛び散る火の粉。

 それでも全ての炎弾を弾くことはできず、3発ほど喰らって落下。

 ズズン、と大きな音を立てて不時着した。

 これは死翼竜を設計した者ですら、想像もしなかった展開だ。


「すごい光景だったな……」

「あの位置から、ここまで戦いをコントロールできるものなのか……?」


 レンの放つ遠距離連続魔法が死翼竜を追う光景には、付近のプレイヤーたちも目を奪われる。


「……さすがナイトメアだね。でも、このまま独壇場にされちゃうのは気に入らないなぁ」


 そう言って、笑みを浮かべる刹那。


「そろそろいこうか。輪廻、彼方」

「如月はすでに、準備を終えている」

「了解でございます」


 レンの炎弾連射は、暗夜教団に『自由に使える時間』を生み出した。

 そうなれば当然、召喚魔法の利用も可能だ。


「さあ――――悪魔たちのお出ましだ」

誤字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!

返信はご感想欄にてっ!


お読みいただきありがとうございました!

少しでも「いいね」と思っていただけましたら。

【ブックマーク】・【ポイント】等にて、応援よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ファイアボルトさん大活躍! [一言] 次回、怪獣大戦争。
[一言] 論理クイズ「幼女とミルクとコーヒー」が直感を裏切る 行きますね。 問題 2つのカップA,Bがある。 Aにはミルクが、Bにはコーヒーが入っている。 いま、AのミルクをスプーンですくってB…
[一言] 中二病達のターンはつづきますね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ