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1018.戦局を操る者

 四足型のアンデッド、死伏竜。

 そして二足型のアンデッド、死翼竜の登場。

 死伏竜を受け持つのは闇の使徒二人と、九条院白夜だ。


「高速【誘導弾】【連続魔法】【フリーズボルト】!」


 最後尾のレンが死伏竜を撃ち、ターゲットを奪う。

 すぐさま燐光をまき散らしながら突撃してくる敵を見て、白夜に視線を一つ。

 迫る死伏竜の前に割り込んだ白夜は、レイピアを振り上げる。


「【エーテルライズ・エクステンド】!」


 怒涛の勢いで迫る死伏竜の目前に、白夜は10本の光柱を展開させて足止めに成功。


「【魔法陣牢】」


 光に打たれる敵の頭上に、続け様に浮かんだ闇の小型魔法陣から、魔力光が降り注ぐ。

 突き上がる光から、落下する闇の輝き。

 そんなコントラストの残滓の中を駆けるのは、鳴花雨涙。


「――【早駆け】【流刃】」


 通常攻撃の速度と威力を上げるスキルで、速い短刀の連続攻撃を決め、そのまま空いた手を伸ばす。


「――【水遁・天嵐砲】」


 放たれる水流の忍術が、死伏竜を大きく下がらせた。


「見事だ」


 良い連携が決まり、うなずくリズ。

 すると「わっ!」と、歓声が上がった。

 見れば暗夜教団側でも、レンを起点とした連携が決まり、死翼竜にダメージを与えたところだった。


「使徒長、やはりただ者ではない……」

「これぞ闇を超えし者……!」


 二体の大ボスと戦う、二つのパーティ。

 両方を同時に援護するという、レン以外で見られない指揮官のような形式の戦いに、闇の使徒志望たちは感心。

 向けられる熱い視線に、当の本人は「……やめて」と恥ずかしそうに顔を背ける。

 しかし敵のHPも、半分を割ったこの状態。

 死伏竜の攻撃は、さらに苛烈なものとなる。


「「「っ!!」」」


 飛び掛かりをかわすと、その体表には無数の燐光。

 すぐさま放つ【燐光爆破】に、前衛三者は慌てて防御態勢を取る。

 すると死伏竜は、豪速で尾を回転。

 三人を弾き、さらに地面に描かれた燐光の円が遅れて炎上。

 防御の継続を、余儀なくされる。

 こうして陣形を崩したところで、死伏竜は再び接近。

 狙われた白夜は頭突きに備え、斜め後方へのバックステップで回避を狙うが――。


「つかみですって!?」


【燐光掌握爆破】は、トカゲのような前足で敵をつかんで燃やす大技。

 握る手に弾かれた白夜はゴロゴロと転がり、転倒。

 直後、死伏竜が握った前足から豪快な黄緑の炎が燃え上がった。


「【フリーズストライク】!」


 レンはすぐさま、反撃とけん制の氷砲弾を放つ。

 しかしこれをギリギリでかわした死伏竜は、大きく頭部を引いて息を吸った。


「来るっ! ブレス!」


 死伏竜の口内に、黄緑の輝きが見えた。

 転倒中の白夜にとっては、大きな危機だ。

 だがレンは、この瞬間を狙っていた。


「雨涙! 【心頭滅却】でオトリに!」

「――了解した」


 自らの持つ防御スキルまで記憶しているレンに、驚きながらも了承。

 ここまで早めの指示による回避で、大きなダメージもない雨涙。

 ダメージを7割減させ、かつ氷結や炎のブレスに突っ込むことが可能というスキルの有用性を、レンは逃さない。


「――【早掛け】【心頭滅却】」


 慌てて下がる白夜の前に飛び出した雨涙を、死伏竜の吐く黄緑の炎が飲み込んだ。

 しかしダメージを受ける代わりに、前へ進むことができるこのスキル。

 雨涙は、黄緑の炎の中を駆けて行く。

 飛び出した瞬間、突き出す左手。


「――【火遁・竜鳴砲】」

「【闇の翼】」

「【エンジェライズ】!」


 雨涙の放った炎が死伏竜の胸部を焼けば、空から迫るリズが大剣を振り降ろし、続けて白夜がレイピアで斬りかかる。

 白と黒の飛行斬りが決まり、のけ反る死伏竜。


「【エーテルジャベリン】!」

「【闇十字】!」


 白夜が光の槍を連発し、リズが十字の剣閃で追撃。

 さらに敵を弾き飛ばす。

 攻撃チャンスを生み出し、連携を任せたレンは再び暗夜教団側の状況を把握。

 さらにメイやツバメたちの位置まで確認してから、あらためて死伏竜に視線を向ける。


「様子が変わったわね」


 HPが残り3割程度となった死伏竜。

 その全身から、黄緑の炎が燃え立ち始める。

【死蝕炎纏】は、死肉を燃やすことで生まれる熱でプレイヤーにスリップダメージを与えつつ、全ての攻撃に爆破を乗せる暴走モード。

 身体を燃やし続けながら突撃と攻撃を繰り返すという、死なばもろ共の攻撃だ。


「くるぞ!」


 突進から振り下ろす、燃える右前足。

 雨涙がこれをバックステップでかわすと、続けて左の前足。

 続けて回避するも、巻き起こる炎の炸裂に足元が揺らぐ。

 そこへ続くのは、【飛び掛かり】だ。

 すでに体勢を崩している雨涙は、回避を諦め防御。


「――ああっ!」


 しかし爆発の威力に、大きく弾かれ転がる。


「【闇の翼】!」


 追撃を止めるため、空から迫るリズの一撃を短い後方跳躍でかわした死伏竜は、そのまま一回転。


「くっ!! 【剣盾】!」


 黄緑の炎に燃える尾の爆破で、さらにリズを吹き飛ばす。

 炎に身体を焼かせながら迫る竜は、止まらない。


「【連続魔法】【フリーズボルト】!」


 レンの放つ氷弾も、燃え盛る炎に焼かれて消滅した。


「――【水遁・天嵐砲】!」


 炎に対して有効であろう氷結魔法も水遁も、【死蝕炎纏】による【突撃】は止められないようだ。

 暴走する死伏竜は、止まらない。

 四連の【燐光弾】を放ち、こちらを回避に走らせたところで一回転、付近一帯に燐光をまき散らした。

【燐光爆炎撃】は、広範囲に散らばった燐光を一斉に爆発炎上させる範囲攻撃だ。


「すぐに範囲外へ退避を!」


 気づいたレンは、早い指示で全員に高速移動を促す。

 するとどうにか皆が攻撃範囲を転がり出たところで、天を焼くような黄緑の豪炎が立ち上った。


「来たぞ! 反撃の好機だ……!」


 続いた一方的な攻勢。

 ついにおとずれた好機。

 前衛組はすでに、体勢を整え直した後。

 そして大技を使った死伏竜は、まだ硬直の中にある。


「――叩く」

「無論だ!」

「ここで勝負を付けますわ!」


 反撃を狙って、三人が一斉に動き出す。


「…………この感じ」


 気づいたレンは、悩む。

 判断を間違えれば、この好機を逸することになる。

 だがこれまでメイは、『このモーション』を見逃したことはなかった。


「防御ぉぉぉぉ――っ!! 咆哮が来るわ!!」

「「「ッ!?」」」


 これまで声を発することもなく、また死肉ゆえに『発声』できないのではないかという、思い込みの利用。

 明らかな大技の後に見せる『体勢の崩し』は、死伏竜の罠。

 これまでの見事な援護もあり、レンの援護を信用している三人は、明らかな隙につられていたにもかかわらず、防御態勢に入った。

 これが間違いなら絶好の好機を捨てた上、すでに距離を縮めている雨涙や白夜が、敵の次撃に斃れる可能性もある。

 そんな、危険な状況の中。


「ヒュオオオオオオオオ――――――ンッ!!」

「「「きたっ!!」」」


 右側からも左側からも、奇妙な風切りのごとき高音が聞こえる感覚。

 響き渡った【反響咆哮】は、骨格や死肉の反響を使って放つ音波で『長時間の拘束』を奪うもの。

【死蝕炎纏】時に喰らえば、その後は一方的な高火力攻撃にさらされることになるという恐ろしいスキルだ。

 だがレンの指示一つで、最悪の事態は見事に回避された。


「【超高速魔法】【フリーズボルト】!」


 レンはすぐさま、死伏竜の頭に氷弾を撃ち込み隙の時間を伸ばす。


「――闇の使徒長、やはり圧倒的……! 【風遁・爆進脚】!」


 風の後押しによって、雨涙が超高速で跳んでいく。


「――【狂い咲き】!」


 放つのは、シンプルな斬り抜け。

 それは当たれば、その後に八連の斬撃が一気に駆けめぐるという短刀スキル。

 死伏竜に刻まれた斬撃が、派手な血しぶきを飛ばす。


「二つのパーティを援護しながら、よく気づけましたわね……! 生まれたこの隙は、戦いを決める物になりますわ! 【エンジェライズ】!」


 続くのは、小さな翼の羽ばたきで飛び込んできた白夜。

 レイピアによる斬撃を二発放つと、そのまま空いた手を突き出す。


「【エーテルランス・スキュア】!」


 長さ3メートルに渡る光の長槍が正面から突き刺さると、自動で残り二本がクロスする形で刺さって炸裂。

 このスキルの長所は、一本目が刺さった時点で三本目までの直撃が確定し、それによって時間が稼げること。


「続きなさい、闇の使徒!」

「言われるまでもない! 【暗衝】!」


 足の遅いリズも、波動を残しながらの突撃で移動。


「見事だナイトメア。消え去るがいい! ――――【暗天の大剣】!」


 強い踏み込みから放つ回転斬りは、付近一帯を闇色のエフェクトで薙ぎ払う。

 豪快な斬撃を受けた死伏竜は、その場に一時停止したかのように止まった。

 HPゲージ消滅。

 やがてゆっくりと、胸元から上下に真っ二つ。

 滑り落ちるように崩れた死伏竜は、そのまま死骸の山と変わった。


「こやつらには、ナイトメアの存在が悪夢となったようだな」

「そういうのはいいから」

「レンさんが本当に闇の勢力から足を洗ったかどうか、これは世界の命運を左右するかもしれませんわね……」

「――今後も監視が必要」

「それって、足を洗っても逃げられないってこと……!?」


 この戦いを勝利に導いたレンに、向けられる称賛。

 しかし当の本人は、まさかの言葉に頬を引きつらせるのだった。

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[一言] 論理クイズは正解ですね、瞬殺でしたね、模範解答と模範解法は。 正解 1人は相手の帽子の色と「同じ色」を宣言する。 もう1人は相手の帽子と「ちがう色」を宣言する。 解説 2人の帽子の色の組…
[良い点] 開幕から昇天の柱と堕天の輝き。 合間合間のレンちゃんの牽制で追撃をかわしつつ連撃になるという双使徒勢がとても黄色い声をw [気になる点] 光。闇。光。闇。たまに火と水。 傍から見てたらとて…
[一言] 中二病(ナイトメア)からは逃げられない。
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