表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1016/1381

1016.到着早々

「第二陣が来た! 新種の相手は高レベルプレイヤーが先行してくれ!」

「そこから強さを見極めて振り分けていこう!」


 ゼティアの門からやってきた、異世界の魔物たち。

 敵数を大きく減らすと、さらに門から新手が大量に流入してきた。

 それを見た参戦者たちは、気合を入れ直す。


「少しでもメイちゃんたちの消耗を減らせるよう、気合入れていくぞ!」

「「「おうっ!」」」


 声を上げ、敵陣に駆け込んでいくプレイヤーたち。


「ミノタウロス型は、レベル70くらいが適正だ! 頼む!」

「了解!」


 敵の強さを伝達し合い、上手に分担して戦っていく。


「次はそこね! 【誘導弾】【フレアストライク】!」


 それを見たレンは、できるだけ有効な先制攻撃を決めることに意識を変更。

 少ない手数で敵陣を崩し、即座に追撃のプレイヤー陣が詰めることで、見事な連携を見せる。


「ここでも全体を見てるんだな、使徒長は」

「さすがです……っ!」


 樹氷の魔女も戦いながら、その姿に感激する。


「……なんだ、あいつは?」


 そんな中、ゼティアの門から新たに出て来たのは、高さ5メートルに及ぶ人型の魔物たち。

 その巨躯と手にした巨大な棍棒を見るだけで、すぐに強敵だと理解できる。


「【誘導弾】【フリーズストライク】!」


 レンが先制して放つ氷砲弾。

 単眼の魔物はこれを見て、棍棒を振り上げる。

 すると氷砲弾が粉々に砕け散って、氷片をまき散らした。


「いくぞ、すみれ!」

「うんっ」


 それを見た蘭すみれ姉妹が急行し、戦闘を開始。


「【メイルフラッド】!」


 振るう巨剣【ポセイダル】で起こす、水塊爆破。

 巻き起こる激流を、単眼の魔物たちは防御で耐えてみせた。


「【走破閃】!」


 そこに続くのは、すみれの一撃。

 刀で起こす扇形の剣閃が、深い傷を打ち付ける。


「こいつは少し、気合入れて行かないとダメみたいだな!」

「うんっ」


 単眼の魔物三体を引き付けた蘭すみれ姉妹は、互いに背を向け合う形で構えを取った。


「撃てぇぇぇぇ――――ッ!!」

「【ウィンドアロー】!」

「【十連氷砲】!」

「【飛瞬の矢】!」


 蘭すみれ姉妹から、離れること百メートル。

 後衛部隊が放つ一斉魔法攻撃を、巨大な四枚羽の蛇龍は難なく回避して接近。

 額の宝石のごとき複眼から、強烈な熱線を放つ。


「「「うわあああああ――っ!!」」」


 描かれた赤熱の『ライン』が、遅れて爆発。

 後衛魔法部隊を吹き飛ばす。


「ここは、あたしたちに任せときなっ!」


 そこに駆けつけたのは、アンジェラたち七新星。

 転がった後衛部隊はすぐに、この場を任せて退避。

 適正レベルの敵を探して走り出す。


「こいつは侮れないレベルっぽいな。気を抜くなよーっ!」

「もっちろん!」

「当然でしょおん」


 ココとキュービィは、アンジェラの掛け声に元気に応える。


「いくぞ――っ! 【明王斬月】だぁぁぁぁーっ!!」


 こうして七新星は、宙を舞う蛇龍を相手に陣を組み、攻撃を開始した。


「……間違いない、ここはボス級の一団だ……っ!」

「すぐにトップ勢に伝えろ! こいつらが本格的に動き出したら大きな損害が出るぞ!」


 第二陣の魔物流入。

 その中でも、そこは異質だった。

 翼を持つ大型の鳥人、通常の五倍の体格を持つ銀色豹、両手に金属刃を持った二足のサーべルタイガー。

 それは第二陣の中でも、ボス級の魔物たちが一団となった『超危険地帯』


「「「うわあああああ――――っ!!」」」


 鳥人の風撃でまとめて吹き飛ばされた十数人の前衛を見て、思わず息を飲む弓術師。


「ここだね」


 レンの指差し一つで、その意図に気づいたアーリィ。

 その言葉に、灰猫が一歩前に出る。


「――――いくにゃん」


 杖を構えると、付近の参戦者たちが顔色を変えて走り出す。


「く、くるぞォォォォ――っ! 全員退避!!」

「射線上に残るな! 無理をしてでも全員連れ出せ――っ!!」


 強烈な黄金の輝きが、灰猫の杖に灯る。

 射線から味方が消え、強敵だけが残ったのを見て放つ一撃は、『地形を変える』と呼ばれるほどの高火力魔法。


「【デモンスレイブ】」


 目を焼くほどの輝きを見せる巨大な金の十字光が、大地に突き立った。

 大地を揺らすほどの一撃。

 巻き込まれた多数の敵は、ボス級の魔物たちを巻き込み消滅した。


「さすがね、ここぞという魔物はしっかりトップ勢が抑えてるわ」

「すごーい!」


 レンが大きくうなずき、メイが跳び跳ねる。

 こちらの陣を崩しかけていたボス級の一団が消え、再び『五月晴れ』の優位が確定。


「お、おみごとですね」

「まったくです」


 まもりとツバメも、押せ押せの戦況に感心する。

 しかし数が減れば、新たな異世界の魔物たちがゼティアの門を抜けてやって来る。


「……来るぞ! 第三陣だ!」


 あがる大きな声。

 流入してきた魔物の数は、これまでよりもさらに多かった。


「狙いは……あいつ!」


 そんな中、レンは早々に大型の魔物に目をつけた。

 単眼型をさらに上回る体格を誇る一体のサイクロプスは、どう見ても第三陣冒頭の主要格だ。


「りょうかいですっ! 【バンビステップ】!」


 すぐさま走り出すメイ。

 サイクロプスは手にした巨大な岩石剣を引き、風が巻き起こるほどの事前エフェクトを展開。


「しまった! 出てきて一発目に広範囲高火力攻撃でくるタイプか!」

「ある程度の死に戻りは、もう仕方がない! イチかバチか防御、回避をしながら生存を祈れ!」


 一気に流れを奪うために現れた強敵の登場に、先行プレイヤーの一人が叫んだ瞬間。

 サイクロプスの足元に、レンの放った炎砲弾が炸裂した。

 体勢を崩させてスキルの使用を止める、そこに駆け込んできたのはメイ。


「【モンキークライム】からの【アクロバット】!」


 そのまま体勢を崩したサイクロプスを駆け上がり、肩を蹴って跳躍。


「【フルスイング】だああああ――――っ!!」


 叩き込んだ強烈な一撃で、一発打倒。


「敵に主導権を渡さない判断。さすが使徒長ちゃんだねっ!」

「この目利きの早さは、本当にいい流れを作り出している……!」


 バニーと夜琉は、迫る敵を斬り飛ばしながら、思わず興奮の声をあげた。

 こうなれば、数を減らすための攻撃が得意な者たちが活きてくる。


「喰らえーっ! 【プロミネンス】!」


 蘭は大剣【サラマンドラ】から深紅の爆炎を放ち、すぐさま得意の連撃へとつなぐ。


「【武器交換】【テンペスト】!」


 続けて風の大剣【シルフィーレ】が起こす暴風は、属性効果を生み爆炎の範囲を大きく引き上げる。

 この一撃で、大量の魔物たちが粒子となって消えた。


「本当に使徒長の狙いが、次々刺さってるな」

「いや見事だよ。こんな速さで敵が減ってるのは、この進行あってこそだ」


 参戦組は感嘆の声をあげる。しかし。


「おい、マジかよ」

「第四陣……?」

「この数の増援が、もう行われるのか……っ!?」


 異世界からの流入は終わらない。

 再び大量の魔物たちが、ゼティアの門を通って王都前に侵入。

 さらに第四陣ともなると、敵の様相も変わり出す。


「強い敵が……多いぞ!」


 強敵の数が増え、高レベルプレイヤーがその対処に手を取られる。

 そのため軸となるトップ級を欠いた状態で、大量の魔物たちを討ち続ける必要が出てくる。


「くっ! 強い!」

「おいおい、この人数でも押されるのか!?」

「メイちゃんたちがいてくれるから、どうにか戦線は安定しているが……!」


 次々に上がり出す悲鳴。

 HPもMPも目に見えて減ってきた状態ではどうしても、攻め気が弱くなってしまう。

 戦線は少しずつ膠着し、異世界側に傾き始める。

 ゼティアの門がにわかに輝きを強め、嫌な気配を感じさせ始めたその時。


「……え?」


 その存在に最初に気がついたのは、門の左前方で戦っていた中級レベル帯のプレイヤーだった。


「貴様、どういう風の吹き回しだ?」

「世界の裏に潜んでいた、闇の匂いに誘われたんだよ」

「どうだかな」


「フン」と息をつく、重厚な黒の全身鎧に身を固めた剣士は、黒神リズ・レクイエム。


「それに、これだけ大きな力が動いているんだよ? ぼんやりと眺めているだけなんて、できるはずないよねぇ」


 その隣で不穏な笑みを浮かべながら、小さく舌なめずりしてみせたのは、維月刹那・ルナティック。

 両者の後方に続くのは、鳴花雨涙。

 そして如月輪廻と、六道彼方。

『闇の使徒』と『暗夜教団』の到着が、ここでかち合ったようだ。


「あら、今頃の到着ですの?」


 そんな闇の者たちにさっそく、強気の笑みを向ける白夜たち。


「異世界の力というものに、興味があってね」

「この危機だ。放っておけば光も闇もなくなってしまうからな」

「……利害の一致、というところでしょうか」


「なるほど」と、うなずいた白夜は、あらためてレイピアを構える。


「精々、後れを取らないよう気を付けてくださいね」

「フン、言われるまでもない」

「ボクに限って、そんなことはあり得ないよ」


 世界の危機に至ってもなお、光と闇の挑発的な会話は変わらない。

 しかし新たなトップパーティの到着に、押されていたプレイヤーたちは意気をあげる。


「カッコいいーっ!!」


 これにはメイも尻尾がブンブンだ。そして。


「……なんで皆、一斉に私を見るのよ」


 使徒たちの集合によって集まる視線に、レンはそっと顔を背けるのだった。

脱字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!

返信はご感想欄にてっ!


お読みいただきありがとうございました!

少しでも「いいね」と思っていただけましたら。

【ブックマーク】・【ポイント】等にて、応援よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ついに明かされる宿業の密命。 歴戦の戦乙女を指先一つで動かし 杖を向けし先に絶対の優位を生み出す…。 光と闇の使者、荒ぶる野生と集い来る英傑。 その全てを指揮者のごとく纏め上げ 異界を…
[一言] あえて触れないようにしてるのに注目されちゃうレンちゃん(笑) ところで『なろう』アクセス障害だったの? ものすごく繋がらなくて焦ったんだけど。 まさかこれも“ヤツラ”の仕業!? レン…
[良い点] 光と闇と暗夜が、闇を越えた…そう、明けの明星たる使徒長を視る! [気になる点] レンちゃん完全に使徒長どころじゃなくて異世界反抗連合総司令官である。 …大丈夫?全部終わったあとに連合女帝と…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ