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「……思った以上に早い」


 二人の黒仮面と、黒獅子の打倒。

 その早さに、驚く黒仮面たち。

 頭上には、煌々と輝くハイリゲンシャイン。

 傀儡化された『鍵』の青年は今も、ゼティアの門にかけた封を解くため能力を使用中。


「ならば。ヴァールハイトで最も『結晶兵器に適応した』この私が相手になろう」


 胸元の結晶が、四つの色に輝く。


「なるほど、最後は四つ全部使えるやつが相手になるわけね」


 どうやら結晶兵器には、適合率のようなものがあるようだ。

 そしてこの黒仮面は、特に高い適合性を誇るのだろう。


「考えるだけで恐ろしいだろう?」


 余裕を見せる黒仮面に、花森ミヤビが思わず息を飲む。


「それだけでどうにかなると思っているのだとしたら、ずいぶんと短絡的だわ」


 しかしレンは、そう言って軽く笑った。


「今度は、多少期待してよろしいのかしら?」


 そしてそんなレンの言葉に、当たり前のように続く白夜。

 二人の『使徒感』に、メイが「おおー……っ!」と感嘆する。


「こちらには光の使徒と闇を超えし者が並び、かの野生児までもが控えているのですけど」

「ッ!!」


 野生児という言葉に、尻尾をビビっと震わせる。


「その通りです。世界を変えうる者の力は、さらに驚異的なものとなっています」

「……ほっ」


 そして、星野エトワールの言葉に安堵。


「この大いなる儀式。貴様たちを贄として、異世界の怪物を呼び出すとしよう」


 そう言って笑うと、黒仮面は手を肩の高さに上げ、挑発でもするように掌をクイっと曲げる。


「「ッ!!」」


 するとメイたちの足元から突然、紫結晶の剣山が突き立った。


「【ラビットジャンプ】!」

「【跳躍】!」


 先頭にいたメイとツバメは、即座に跳んでこれをかわす。

 砕けて散る結晶剣山の高さは5メートルにも及び、なおかつ黒仮面の挙動は片手のみ。

 隙はとても短い。


「【連続投擲】!」


 着地際を狙われないよう、ツバメは先行して【炎ブレード】でけん制。

 燃え上がる炎が、敵の接近を許さない。


「ありがとうツバメちゃん! くるよっ!」


 火が消えた瞬間、『橙青』の輝きと共に放つ二発の回し蹴り。

 そこから放たれた二本の毒水刃を二人がかわすと、見えた『緑』の輝き。

 風による高速低空跳躍で、黒仮面が回転蹴りを放ってきた。

 ツバメはしゃがむことで、メイに至っては身体を反ることで鼻先数センチの回避を見せる。

 振り返るのと同時に、『紫』に輝く結晶。

 猛烈な勢いで集結し、生み出される巨碗は真っすぐ、高速で伸びてくる。


「「ッ!!」」


 二人すぐさま、左右へ分かれるようにステップ。

 間を通り過ぎていった結晶碗は、そのまま粉砕して消えた。


「結構な大技なのに、隙が短いわね」

「劇毒の減少効果が切れる前ですのに……本当に命知らずのアサシンですわね」


 華麗な回避で敵の速度や攻撃の方向性を探ってみせた二人に、思わず白夜は息を飲む。


「【バンビステップ】!」


 メイが迫り、剣を払って返す。


「【電光石火】!」


 黒仮面はこれを下がってかわし、続くツバメの斬り抜けを回転跳躍で回避。


「【劇毒噴射】!」


 着地と同時に地面から吹き上げる、大量の毒飛沫。

 範囲は広いが、飛沫自体にダメージはなし。

【原始肉】の効果が続くメイは走り出し、攻撃を狙いにいく。そして。


「ッ!!」


 発動するのは結晶を用いない、個人のスキル。

【雷光撃】が閃きを放つ。

 シンプルな電撃属性魔法は、回避だけなら難しくない。

 しかし劇毒水の飛沫は、属性効果を生み出す。


「わあっ!」


 飛沫の範囲に感電で広がる電撃が、メイを強く弾く。

 だが状態異常を受けないメイには、多少のダメージが入るだけ。


「高速【誘導弾】【連続魔法】【ファイアボルト】!」


 すぐさまレンが続き、放たれた炎弾は誘導効果もあり三発が直撃。

 これによって狙いを変えた黒仮面は、結晶を『緑』に輝かせて高速接近。

 低空飛行でレンを補足。

 そのまま一直線に、紫結晶の爪で斬り裂きにいく。


「【かばう】【地壁の盾】!」


 ここでまもりが防御に割り込むが、なんと黒仮面は足を着き跳躍。

 まもりを飛び越し、レンに爪を振り下ろす。


「上手な切り替えね! でもその程度じゃ届かないわ! 【入替のルーン】!」


 レンがルーンを発動すると、先ほどかわされたばかりのまもりが、再びレンの前に。


「ちちち【地壁の盾】ーっ!」


 今度こそ爪の一撃を、見事に防御してみせた。


「【加速】【スライディング】【四連剣舞】!」


 両者の間に、生まれた隙間。

 まもりの足元をすべり込んできたツバメは、二刀流の連続斬りでダメージを与える。


「ヒカリ、続きましょう!」

「そうだねっ!」


 エトワールの言葉に駆け出すヒカリは、後衛にも関わらずツバメを追い抜き、金色の杖を振り下ろす。


「【聖杖輝剣】!」


 灯る黄金の輝きが、黒仮面を斬りつけた。

 スキル付き杖とはいえ火力が高くないため、敵はすぐに体勢を立て直して反撃。

 迫るのは紫結晶に覆われた、手刀の振り降ろし。


「【スケープゴート】!」

「【ルミナスシールド】!」


 なんと黒仮面の攻撃は再び、ヒカリに代わって現れたミヤビの盾に弾かれる。

 動き出しは、ミヤビが先。

 しかし攻撃は行わず、まるで道を空けるように左へ避ける。

 すると白のドレスをはためかせた白夜が、通り過ぎていった。


「【ライトニングスラスト】【極光乱舞】!」


 レイピアが突き刺さったところで、放つ追撃の輝き。

 まばゆい光を散らす爆発で、黒仮面は吹き飛ばされ転がった。


「二度の入替で、攻撃をつなげたぞ……!」

「反撃する度に入替防御からの反撃を喰らうとか、プレイヤーだったら心折れてるな」


 メイたちに続いた連携の後半は、完全に光の使徒たちのアドリブ。

 見事な流れに、8人は自然と笑みをこぼす。


「……大したものだ。だが、貴様らを贄とする計画に変更はない【水破紋】!」


 黒仮面が両腕を開くと、足元に広がる巨大な魔法陣。

 結晶が『橙青』に輝いたのを見て、レンが叫ぶ。


「逃げて! 劇毒の水刃が上がるわ!」


 全員がすぐさま散る。

 直後、魔法陣に沿う形で高々と吹き上がる激毒水刃。

 視界を埋めた橙色の飛沫。


「ッ!?」


 ヒカリは硬直する。

 劇毒水の壁を突然割って飛び出してきたのは、巨大な結晶碗。


「【バンビステップ】!」


 駆けつけたメイが、ヒカリを抱えて回避に成功。

 それを見た白夜は走り出し、もう一本の腕が狙う先を気にする。

 嫌な予感は的中、毒壁を割って現れた巨碗にツバメが目を奪われ硬直。


「【ライトニングスラスト】!」


 これを白夜は、『外す突進刺突』で体当たり。

 ツバメと共に転がって、難を逃れる。

 そして劇毒水の壁が消え、安堵をしたところで――。

 全員が、頭上の魔法陣に気づいた。

 魔法陣を割るようにして落ちて来たのは、【結晶彗星】

『紫緑青』の輝き、風に押された結晶星はすさまじい速度で落下。


「【不動】【地壁の盾】!」


 これを受けたのはまもり。

 粉砕した結晶の彗星は、弾丸のような水飛沫と共に結晶片をまき散らす。


「【天雲の盾】っ!」


 盾を機関銃で撃ったかのような衝突音に、思わず息を飲む。

 大技を受け止めたまもりは、隙を作ることに成功した。

 しかしメイやヒカリ、ツバメや白夜が結晶片の飛来で動けずにいる状況。

 上位上級魔法の発動には時間が足りず、皆で攻撃を続けるにも態勢が整ってない。

 反撃は自然と、まもりに任される。

 だが剣や盾での攻撃をしようにも距離があり、状況は思ったより難しい。

 そんな中。


「ど、どなたでもいいので……!」


 まもりは祈りながら取り出したのは、【絆の宝珠】だった。


「本当にどなたでもいいので、よろしくお願いしますっ!」


 それでなくても、『絆』が生まれるようなクエストができていた覚えがないまもり。

 誰も来てくれないという最悪の可能性を想像して、強く祈る。

 しかし、生まれた魔法陣は輝き出した。

 現れたのは、一人の老女。


「「「誰!?」」」


 思わず声をあげるメイ、レン、ツバメ。


「こ、この方は、盾クエストで防衛対象だった元王妃の方です……っ!」


 まもりが受け続けていた、そのクエスト。

 それは国を背後から掌握しようとする性悪王妃に、命を狙われる彼女を守るというものだった。


「で、でもどうしてっ!?」

「私には世界を賭けた戦いに呼んでいただけるほどの、力も器もありませんが……」


 そう言って、まもりに笑いかける。


「幾万度と助けていただいた私が、今度は貴方の力になる番です」


 元王妃がそう言うと、召喚陣から続いて現れたのは、王家の誇る魔法隊。


「撃ちなさい!!」


 命令と共に始まる、百人の魔導士による集中砲火。

 一糸乱れぬ、怒涛の魔法連射。

 その凄まじい迫力と火力に、誰もが息を飲む。


「あ、ありがとうございますっ! ありがとうございますっ!」


 黒仮面のHPはなんと、5割まで減少。

 ペコペコと頭を下げるまもりに、元王妃は王族らしい柔らかな笑みを残して消えていった。

誤字報告、ご感想ありがとうございます! 適用させていただきました!

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― 新着の感想 ―
[一言] 論理クイズは何時ものようにやっていけばいけるかも。
[良い点] まもりちゃんも躱されてから交換されてよくガードしきったなw [気になる点] ここでまさかの初見の老王妃! 総員での「だれ!?」はいいなw [一言] 隙少ないけど格ゲーなのに一人弾幕ゲーする…
[一言] まもりコネクションの王女様With魔法隊凄かった。
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