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1011.世界を変えうる者Ⅱ

 残りHPは7割強。

 黒獅子は結晶を『緑』色に煌々と輝かせる。

 するとその口元に、緑の風刃がくわえられた。

 メイが一歩前に出れば、その狙いが決まる。

 飛び掛かりから放つ、風刃の振り払い。

 これをしゃがんでかわすと、黒獅子は右ほお側にあった刃を左側に変更して、逆方向への振り払いを続ける。


「【ラビットジャンプ】!」


 メイは低めの垂直跳躍で、再びかわしてみせた。

 すると黒獅子はそのまま一回転して、劇毒結晶をまとった尾をひと払い。

 低めのジャンプが功を奏す。

 着地がギリギリで間に合ったメイは、もう一度しゃがんで回避に成功。

 このタイミングで左右から、エトワールとミヤビが駆け込んでくる。


「【シャイニングステップ】」


 その狙いは先制を決め、ミヤビのランス攻撃へつなぐこと。

 そしてメイ、ヒカリへ続くという流れを計算。

 それに気付いたメイは、攻撃体勢に入ろうとして――。


「待つがいい! 風刃の大技が来る、対応準備を!」


 四足歩行型が前後の脚を曲げ体勢を下げた時、続く行動は大技の可能性が高い。

『世界を変えうる者』たる口調で、メイは二人に危機を伝える。


「【ルミナスシールド】!」

「【フラッシュジャンプ】!」


 かつて聖教都市アルティシアで、メイの能力を知った光の使徒。

 すぐに対応する。

 直後、黒獅子のくわえた風刃は大きく伸長。

 放つ二回転斬りが、強風を巻き起こしながら空を切り刻んだ。


「「っ!」」


 盾で受けたミヤビは大きく後退し、その威力に息を飲む。

 高い跳躍でかわしたエトワールも、風刃の火力を見て安堵の息をついた。


「【バンビステップ】」


 そんな中、メイは走り出す。

【風型刃】による二回転斬りは、予期していただけあり問題なく回避。

 ここで攻守の交代を狙う形だ。


「【フルスイング】!」


 放つ振り上げに対し、黒獅子は結晶を『紫』に輝かせて防御。

 全身にまとった硬質な紫結晶が、物理攻撃を大きく減衰させる。


「見事な防御だ! だが……っ!」


 続けて『世界を変えうる者】の雰囲気を出していくメイ、その視線は後方へ。


「【ホーリーストライク】!」


 狙い通り、ヒカリの魔法が飛来。

 しかし黒獅子に向かって飛んだ光弾は、【風壁】に軌道をそらされ空中で弾けて散った。


「やるな! だがまだ終わらぬぞ……っ!」


 二連続の防御に、気合を入れるメイ。

 物理防御と魔法防御を連続させた黒獅子に、これ以上の防御スキル使用は不可能だ。


「【ラピッドスラスト】!」


 ランスによる素早い連続突きを、ミヤビが叩き込む。


「【チェンジアームズ】【シャインセイヴァー】!」


 続いてエトワールの生み出した光の槍での刺突が決まると、黒獅子は大きくのけ反った。


「【エンジェルラダー】!」


 続くのは、地面から突き上がる強烈な光柱の炸裂。

 この一撃が黒獅子を持ち上げたところに、再び踏み込んで行くのはミヤビ。


「【天仰突き】だぁぁぁ!」


 力強く突き上げるランスが放つ、衝撃波。

【エンジェルラダー】から続いた場合に生まれる、敵の弾き上げ効果。

 光の使徒三人が一斉に、メイに視線を送る。


「「「今だ! 世界を変えうる者!」」」

「っ!!」


 この流れと、かけられた言葉にメイは目を輝かせ、尻尾を大きく振って跳躍。


「【ラビットジャンプ】そして……【フルスイング】だ――っ!!」


 空中で放った一撃が、黒獅子を地面に叩きつけて転がした。


「さすがは世界を変えうる者、やりますね」

「監視対象の持つ驚異的な力が、味方になるとこんなに頼もしいだなんてな」

「まったく、皮肉なものだね」


 光の使徒たちはさっそく、世界観を感じさせる言葉で続く。


「あっ、ええと、ありがとう……じゃなくて、礼を言うぞ」


 レンのようにスラスラ良いのが出てこないメイは、慌てて言い直した。


「グルルルル……!」


 一方黒獅子は、HPが5割を割ったことで戦い方を変えてくる。

 吐き出すのは、喰らえば劇毒を受ける【毒爆風砲】

 ヒカリはすぐに距離を取り、エトワールは動き続けることで回避。

 ミヤビも盾をしっかり前面に向けることで、対応する。

 弾けた毒風は付近に広がるため、各自の間に距離が生まれたところで、黒獅子は結晶を『橙緑』に輝かせて走り出す。

【毒風まとい】による特攻だ。


「【シャイニングステップ】!」


 最初の狙いはエトワール。

 猛烈な飛び掛かりを、速い移動でかわす。

 すると黒獅子は、【毒爆風砲】をドンドンドン! と三連発。

 メイをけん制し、ミヤビをその場に縫い留め、後方のヒカリまで狙う。

 さらに黒獅子が持ち上げた前足を地に突くと、地面を駆ける雷光。


「【フラッシュジャンプ】!」

「【ラビットジャンプ】!」


 メイとエトワールは、慌てて跳躍。

 ミヤビも慌てて距離を取る。


「麻痺を受ければ、劇毒攻撃を避けられない。劇毒を受けた後に電撃を受ければ『重複異常』という連携」


 世界を変えうる者メイは、敵の攻勢にカッコ良く目を細める。

 どちらから喰らっても危機に陥る、状態異常連携。

 これは、とても難しい状況だ。


「世界を変えうる者よ。確か『状態異常』を防ぐ道具を持っていましたね。ここで私たちが流れを奪い、時間を稼ぎます」

「りょうかいした」


【原始肉】の使用を提案したエトワールは、ミヤビたちとうなずき合う。


「来ますよ!」


 再び始まる【毒爆風砲】は四連射。

 先頭に出たエトワールを狙い、ヒカリを狙い、そしてメイへの二連発で足止め。

 この隙に近づこうとしたミヤビに向け、放つ【毒風まとい】特攻。


「【ルミナスシールド】!」


 これを盾で受けると、大きく弾かれた。

 バランスを崩したところに、再び始まる【毒爆風砲】

 体勢を崩していたところを狙われたミヤビは、どうにか片手で防いだもののヒザを突く。


「【ホーリーストライク】!」


 放つ魔法で、追撃をけん制。

 ここでエトワールは、接近からの攻撃を狙うが――。

 地面に走り出す、雷光の輝き。


「っ!!」


 バリバリと轟音を鳴らして駆け抜ける光を、必死のジャンプでかわす。

 しかし黒獅子の狙いは、着地後だ。


「うああああああっ!」


【毒風まとい】による体当たりを避け切れず、エトワールは劇毒を受けてしまった。

 さらに追撃をかける黒獅子。

 これを助けに向かったミヤビに放たれるのは、【毒爆風砲】の連射。


「くっ」


 盾の構えが一種の遅れ、肩を弾かれ転倒。

 続く劇毒風弾は炸裂して風を起こし、メイやヒカリの動きを止める。


「やっぱり、状態異常攻撃を振り回されるのは厳しいね……っ!」


 おとずれた窮地に思わずつぶやくヒカリ。しかし。


「いいえ、ここです!」


 なんとエトワールはこの危機の中、反転攻勢を指示。


「世界を変えうる者が状態異常対策を行えば、戦況はひっくり返ります!」


 叫んだ直後。

 劇毒を受けているミヤビのところに、駆ける雷光。


「【シャイニングステップ】!」


 そのままミヤビを突き飛ばして、代わりに雷光を受けにいく。


「【四連射】【ホーリーバレット】!」


 すぐさまヒカリが黒獅子を魔法攻撃で続き、雷攻撃を強制停止。

 わずかに光った雷光は、エトワールの脚を強く弾いたが直撃を免れたため麻痺はなし。

 地を転がりながら、すぐさま体勢を整える。


「【ホーリーストライク】!」


 ここで攻撃を仕掛けたのは、後衛の雪崎ヒカリ。

 輝きの魔法をかわした黒獅子は、【毒爆風砲】を三連発。

 まだ劇毒を受けていないヒカリはこれを必死に避け、転がってかわす。

 すると黒獅子は一気に距離を詰め、【毒風まとい】での突撃を仕掛ける。

 ヒザを突いた状態からの回避は、さすがに不可能だ。


「【スケープゴート】!」


 しかしヒカリはここで、『身代わり』と位置を変えるスキルを発動。


「【ルミナスシールド】! きゃあっ!」


 代わったミヤビは、黒獅子の突撃を受け止め弾かれる。


「【シャイニングステップ】【シャインセイヴァー】!」


 その背後から駆けてきたエトワールが、そのまま光剣を二連撃。

 雷撃を放とうする、黒獅子の隙を突く。さらに。


「【後光】!」


 それは半径1mほどの狭い範囲だが、当たれば確実に隙を作れる閃光スキル。


「【ディバインスラスト】!」


 すぐにミヤビが続き、ヒカリが杖を向ける。


「【ホワイトノヴァ】!」


 そして白光の爆発で、黒獅子から転倒を奪い取った。


「世界を変えうる者、準備はいいか!?」


 ミヤビの問いに、できるだけカッコいい感じで【原始肉】をもぐもぐしたメイが答える。


「……もちろんだ」


 一方HPが4割を切った黒獅子は、結晶を『緑橙』に煌々と輝かせ始めた。

 すさまじい勢いで四人の前に飛び込んできた黒獅子は、二本の剣を柄の部分でつないだような作りの『劇毒』の【風型両刃】を振り回す。

 これまでに見たことのない武器。

 メイはしっかり、攻撃を見据えて回避に入る。


「あぶないです……っ!」


 エトワールが思わず声をあげる。

 続くのは、【毒風まとい】特攻。

 劇毒風の範囲は広く、回避は難しい。

 しかし今のメイは、劇毒の風を受けても問題なし。

 すれ違い際に、剣撃を軽く脚に叩き込む。

 振り返った黒獅子は足を踏み鳴らし、地面から四本の結晶塊を生やしてメイを取り囲んだ。

 そして、特攻。

【風型両刃】を、めちゃくちゃに振り回す。

 行動範囲を制限されたメイは、それでも難なく回避を続ける。

 黒獅子はここで、さらに風の刃を伸ばして一回転。

 付近に突き立った結晶塊を斬り、毒風を炸裂させた。


「【ラビットジャンプ】! そしてそのまま【フルスイング】だ――っ!」


 毒風を裂いて昇る跳躍から放つ剣撃は、逃げる黒獅子の頭部をかすめた。

 弾かれ、転がっていく黒獅子。


「ここが勝負の賭けどころ――」


 つぶやくメイは、右手を突き上げた。


「――――さあ、来訪者は誰となる」


【友達バングル】が、起こす輝き。

 現れた魔法陣からやってきたのは、鶏とトカゲを混ぜたかの様な魔獣。

 雄々しいトサカを持つ、一体のバジリスクだった。

 共に駆け出すメイ。

 しかし黒獅子も、ここで反撃に入る。

 結晶を【紫橙】に輝かせ、放つは【結晶大剣岳】

 それは対象に向けて、大型の結晶山脈が突き上がっていく奥義スキルだ。


「【装備変更】【バンビステップ】!」


 その勢いはすさまじい。

 呼び出したばかりのバジリスクだが、この攻撃を前にしては動けないだろう。

 仕方なくメイは一人、【鹿角】装備で結晶山の隙間を駆け抜けていく。

 数センチ横を突き上がる結晶塊をかわして走り、今まさに突き上がらんとする結晶を飛び越える。

 そうして見事に、紫結晶の隆起を切り抜けた。


「っ!?」


 だが黒獅子は、すでに準備を終えていた。

 結晶を『紫緑橙』に輝かせ、全身に劇毒結晶をまとって突撃。

 風に押される特攻は、速く強烈。

 その火力は、折り紙付きだ。

 完全優位な状況。

 しかし黒獅子には、一つだけ誤算があった。

 なんとバジリスクは、結晶の剣山を乗り越えてきていた。

 もちろん小柄なバジリスクには、黒獅子の突撃を受けることも返すこともできない。だが。

 石化光線を『右前足』だけに集中することで、バランスを崩された黒獅子はド派手に転倒。

 メイの数センチ横を、砂煙をあげて転がっていく。


「いまだ……っ!」

「了解です!」

「ああ、もちろんだな!」

「ここしかないよねっ!」


 振り返ったメイの合図に、光の使徒たちが応える。


「【シャインセイヴァー】!」

「【ディバインスラスト】!」

「【ホワイトノヴァ】!」


 そして三人は同時に、振り返った。

 最後を決めるのはやはり、世界を変えうる者しかない。


「くらうがいい! 必殺の【ソードバッシュ】だああああ――!!」


 放たれた四人がかりの一撃は黒獅子を消し飛ばし、粒子に変える。

 四人と一羽は、勢いのままハイタッチ。


「お見事ですね」

「これが世界を変えうる者の……力だ」


 世界を変えうる者の口調で、バッチリ決めたメイ。

「力だ」と「力ですっ!」が混ざらず歓喜。

 今回も良い仕事したバジリスクを抱えて、思わずクルクル回る。


「「「……っ」」」


 そんなメイの姿に、最後は光の使徒まで魅了されてしまうのだった。


「メイ! そっちも終わったのね!」


 そこに駆けつけてきたのは、二人の黒仮面を打倒したばかりのレン。


「どうだった?」


 メイはバジリスクを下ろし、「フッ」と笑うと――。


「フフフ、問題ないぞ――――闇を超える者よ」

「……だ、誰よォォォォ!! メイに変なこと教え込んだのはああああ――っ!!」


 まさかの事態にレンは頭を抱え、怒りの咆哮をあげたのだった。

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[一言] 論理クイズは特にしていなかったので難易度上げての二セットにしますね、と言うことで 論理クイズ「幼女と6つの回答」のうち正しいものは? 問題 以下のうち、正解の文章はどれ? これより後はす…
[気になる点] レンちゃんは中二病に対して敏感?
[一言] レンちゃん安心して。 どうせメイちゃんじゃその状態を続けるのは無理だから(笑) すでに野生がポロポロこぼれているし(笑)
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