1009.打倒『紫緑』
『紫緑』の結晶を使用する黒仮面。
攻撃力の高い結晶化攻撃と、風を使った戦い方には要注意だ。
「【爆風進】」
風を操る緑結晶によって、『ジェット』を思わせる速度で直進。
「【剛腕結晶】」
「【跳躍】!」
すでに劇毒でHPを減らしているツバメは、これを後方へのジャンプで回避。
直後、地面に深くめり込む右の紫結晶碗。
すぐさま砕けて、元の腕に戻る。
「【剛爪風刃】」
続けて放たれる、左の結晶爪。
「【かばう】【地壁の盾】!」
鳴り響く擦過音のすさまじさが、その威力を物語る。
見事な防御だが、敵の手数が多くないため反撃がしづらい。
さらに劇毒を受けている分、時間を喰うほどこちらが不利になる。
黒仮面に向かい合うのは、やはりツバメの役割だ。
「【疾風迅雷】【加速】」
一気に距離を詰め、放つ斬撃。
「【加速】【加速】【加速】【加速】【加速】っ!」
風に押される直線移動以外は、決して速くない黒仮面。
六芒星を描くような鋭角な移動攻撃で翻弄し、しっかりとダメージを与える。
「【爆風進】」
不利な状況。
黒仮面は、後方への高速直線移動で退避する。
「【爆風結晶拳打】!」
そして始まる、高速拳打。
拳の緑結晶から放たれる烈風が、次々に通り過ぎていく。
「「ッ!?」」
吹き抜ける風は範囲こそ大きくないが、とにかく速くて強力。
耐久が低ければ、かすめるだけでも転倒を取られてしまうだろう。
さらに風による攻撃は、『目視』で範囲を把握できない。
「こ、この位置で、転倒を取られるのですか……!?」
肩に触れた爆風に、強く弾かれ転がる。
ツバメは受け身のような動きで、慌てて体勢を立て直すが――。
「無様だな、冒険者よ。【グラウンド・ストーム】」
まるでこちらを弄ぶかのように、体勢崩しのスキルを続けてきた。
「【不動】!」
足元を抜けていく烈風に、まもりは【不動】で対応。
だがすでに転倒状態のツバメは、地面を跳ね転がっていく。
黒仮面はさらに、体勢崩しを続ける。
「【引き風】」
立ち上がれずにいるツバメを、最後には一気に引き付ける。
単純だがやっかいな連携に、止まれないツバメはそのまま黒仮面のもとへ。
「ツバメさんっ!」
思いっきり伸ばした手。
ツバメも伸ばし、互いの手をしっかりと握り合う。
こうしてすでにHPの低いツバメは、どうにか『引き付けての攻撃』から免れた。しかし。
「【巨腕結晶】」
「「ッ!?」」
突き上げた右腕の紫結晶が、輝き出す。
そのまま後方に倒すようにして、引いた腕。
腕から肩、わき腹までが一気に結晶化し、巨大な紫結晶の腕となる。
続けて紫結晶の甲に輝く『緑結晶』が、ブースターとなって加速。
家すら潰してしまいそうな巨大な掌が、そのまま叩きつけられる。
「【コンティニューガード】【不動】【地壁の盾】っ!!」
まもりは片足を引き、盾を掲げて対応。
直後、叩きつけられた結晶製の巨碗が炸裂した。
「お願いしますっ!」
「はいっ! 【加速】!」
結晶碗と盾の間にできた空間を、ツバメは一直線に走り出す。
砕け散り、弾け飛ぶ紫の結晶塊。
だが黒仮面も、次の行動のためにこちらの動きをしっかりと見定めていた。
「……二つの結晶を同時に使えても、二つのスキルを同時に使うことはできません」
ツバメの目は、砕けた紫の結晶に反射するレンの姿を捉えていた。
【誘導弾】によって弧を描きながら落下してくる、四つの炎弾。
さらに正面から迫る、二刀流のアサシン。
黒仮面は突然、どちらに対応するかを迫られることになる。
「【風界】」
『紫緑』の黒仮面は、風の守りでレンの放った魔法に対処。
「【リブースト】」
その瞬間ツバメは、超加速で敵の前へ。
「【電光石火】【反転】【電光石火】!」
得意の『ツバメ返し』で、行って戻る。
高火力スキルを使わなかったのは、戻り際にすれ違った白夜のため。
「【ライトニングスラスト・クルシフィクス】!」
真っ直ぐに飛んでいった白夜のレイピアが、黒仮面に突き刺さる。
直後、巻き起こる白光の爆発。
空中に弾き上げられた黒仮面に、足元から放たれた魔力光の槍が一本、二本、三本と突き刺さる。
こうして黒仮面は、磔のように魔力の槍に繋ぎ止められた。
「あと、お任せしてもよろしくて?」
「【フレアバースト】!」
「【連続投擲】!」
レンの放った爆炎と、ツバメの放った【風ブレード】が、属性効果で天を焼くほどの炎を起こし、磔になっていた黒仮面のHPを焼き尽くす。
勝敗など確認するまでもないと、敵に背を向けカッコ良く歩く白夜。
白と黒の共闘に感嘆する観戦者たちを前に、白夜は余裕の笑みを浮かべてツバメを見る。
「ツバメさんの恐れ知らずの接近戦は、相変わらずお見事ですわ」
そしてそのまま、視線をレンに。
「お二人とも、今からでも光の道を歩んではいかが?」
「私は光も闇も、どっちも歩いてないつもりなんだけど」
「……私には少し、まぶしすぎるようです」
「ツバメ、ちょっとだけ乗っからないの!」
そう言って苦笑いしながらも、レンは片手で軽く白夜とハイタッチ。
もちろん『光と闇みたいなのは卒業した』という意味で「どっちも歩いてない」と言ったレンと、『すでに光や闇という枠を超えた場所を歩いている』という意味で受け取った白夜は、ここでも完全にすれ違っているのだった。
◆
ヴァールハイトの繰り出した大型の黒獅子は、四人の出方をうかがうように、ソロソロと弧を描くように歩く。
それはまさに、獲物を狙う野生動物ならではの足運び。
「よろしくおねがいしますっ」
それでもメイは恐れることもなく、光の使徒たちに元気なあいさつ。
「メイさんのスキルには覚えがあります。連携にも多少は覚えが」
「りょうかいですっ」
星野エトワールはそう言って、「よろしくお願いします」とうなずく。
「まあ、監視対象だからという形ではあるがな」
「監視対象……?」
花森ミヤビの言葉に、メイが首を傾げる。
「貴方たちの行動は、しっかりと監視させていただいてます」
「メイ。闇を超えし者が行動を共にする重要人物にして、世界を賭けたクエストにたどり着いた者」
「そして――――世界を変えうる者だね」
「え、ええっ?」
雪崎ヒカリの言葉に、思わず驚愕。
「そ、そんなカッコいい風に思われてるのーっ!?」
『世界を変えうる存在』という評価にメイ、思わず目を輝かせる。
尻尾もブンブンと、歓喜に揺れ出した。
世界には自分を『野生』と呼ばない、奇跡の存在がいる。
それを知ったメイは、「よーし!」と気合を入れた。
「世界を変えうる者、いきますっ!」
自然とメイを最前にした、ひし形の陣を取る四人。
黒獅子は短く吠えて、走り出す。
そしてそのま先頭のメイに向けて駆け出すと、額の結晶を輝かせる。
すると『紫』結晶のたてがみが生え、烈風に押される形で特攻。
「風を使った、高速の突進だね!」
メイは四足歩行特有の『後ろ足へのため』と『緑』の輝きを見て、すぐさま攻撃の方向性を見抜いた。
直後、すさまじい速度の突進を見せる黒獅子。
振り下ろす爪は、『紫』結晶製だ。
「次は咆哮、もしくは属性弾っ!」
四人がこれをかわすと、メイは再び声をあげた。
黒獅子が振り向きと同時に放った風弾は、劇毒を含む一撃。
しかしメイの早い注意が、危なげない回避を引き出した。
「黒獅子は、三つの結晶を使ってくるようですね……!」
思わぬ攻撃に、星野エトワールは大きく息をつく。
「でも、あの一瞬で敵の攻撃を見抜くんだな……」
花森ミヤビに驚きの視線を向けられる。すると。
「ふふふ。この『世界を変えうる者』に、四足歩行は通じない……」
メイはちょっとだけ、闇の使徒のような雰囲気で応えたのだった。
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