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1008.使徒と元使徒

「我ら新帝国ヴァールハイトの、敵ではないな」

「……白夜」

「それが良さそうですわね」


 劣勢に追い込まれたツバメたち。

 結晶を『橙青』に輝かせる黒仮面を見て、白夜はうなずいた。


「どちらも強力ですが、連携を崩せば楽になりますわ」

「そういうことね。さっさと片づけちゃいましょう」

「ええ。ですがお忘れなく。怪しい動きがあればすぐに、その背をわたくしのレイピアが――」

「【連続魔法】【ファイアボルト】!」


 白夜の言葉を、最後まで聞かずに放つ炎弾。

『橙青』の黒仮面は、これを当然のようにかわしながら前進。

 狙い通り、近接での戦いに持ち込んでくる。


「【投擲】!」


 一方ツバメも、レンたちと同じことを考えていたのだろう。

【投擲】で『紫緑』の黒仮面を攻撃してターゲットを奪い、敵二体を分割する。


「【劇毒闘技】」


『橙青』の狙いはレン。

 そこにクールな挙動で、白夜が立ち塞がった。

 放つジャブを、軽快なサイドステップでかわす。

 すると拳から出た毒液の雫が、顔の横を通り過ぎて行った。

 続いて左拳、右拳と続く拳打からも、弾丸のように飛び出す毒液。

 さらに大きな振りのフックは、毒液の鎌を生み出す。

 これを、しゃがんでかわした白夜。


「【エンジェライズ】!」


 背中に生やした小さな翼で、回り込むように移動。


「【ベノム・ラピッドラッシュ】!」


 それを見た『橙青』黒仮面は、怒涛の勢いで生まれる毒水球に拳を連打。

 生まれる猛烈な毒飛沫を、容赦なく連射する。


「白夜、対角線なら! 【低空高速飛行】【旋回飛行】!」

「いいですわね!」


 白夜とレンは、短い言葉で意思を疎通。

 黒仮面を挟んで対角線になるよう回転移動することで、常にどちらかが背後を取れるように移動。


「高速【連続魔法】【誘導弾】【ファイアボルト】!」


 レンは回り込むようにしながら魔法を連射し、『橙青』黒仮面のHPを削る。


「【エーテルジャベリン】!」


 振り返ったところで白夜が魔力槍を放ち、さらに削る。

 すると二人の戦い方の意図に気づいた黒仮面は、レンに狙いをつけ接近。


「はいそこっ! 開放っ!」


 しかし白夜の【エーテルジャベリン】に意識を取られた隙に、レンは【設置魔法】を準備済み。

 吹き上がる【フレアストライク】が炸裂し、大きく体勢を崩した。

 ここでレンは下がる。


「【エーテルランス・スキュア】!」


 白夜の放つ光の長槍が、背中から突き刺さる。

 すると続けて二本の長槍がクロスする形で刺さり、順次炸裂。

 一本目が刺さった時点で続く二本も確実に刺さるという、そのスキル。

 大きく体勢を崩した黒仮面は、その場にヒザを突く。


「【劇毒噴射】!」


 黒仮面は地面から吹き上がる激毒液で、白夜の追撃をけん制。


「【フレアストライク】!」

「【吸魔結束帯】!」

「ッ!?」


 そしてレンが放った炎砲弾と、黒仮面の放ったスキルが空中ですれ違う。

 燃え上がる炎砲弾に、弾かれる黒仮面。

 一方レンの左腕には赤光が巻き付き、MPを減少させ始める。


「【エンジェライズ】!」


 白夜はすぐに黒仮面へ接近。

 レイピアによる連続突きから、振り払いへ。

 敵がこれを回避し、反撃体勢に入ったところで――。


「【エーテルライズ・エクステンド】!」


 自身の周りに十本の円柱の輝きを突き上げることで、敵の動きを止めた。

 そしてレンはここで一度、大きくうなずいてみせた。

 突き上がった光柱が粒子を散らして消え去り、視界が開けたところで飛び出してきた黒仮面。

 結晶を煌々と『橙青』に輝かせ、高速の拳を白夜に叩き込みにいく。そして。


「ッ!?」


 駆け抜ける電流に、突然動きを止めた。


「なっ!?」


 これには黒仮面はもちろん、白夜も驚いた。

『紫緑』の攻撃から、まもりの盾に隠れて様子をうかがっていたツバメ。

 レンのうなずき一つで、完璧に二つに分かれていた戦いの裏を突き、【不可視】【投擲】で放った【雷ブレード】をヒットさせた。


「【ライトニングスラスト】!」


 白夜も、光の使徒を率いるプレイヤー。

 驚きの中にありながらも、判断は早い。

 低空を高速で駆け抜ける刺突が、『橙青』に突き刺さる。


「【極光乱舞】!」


 突き刺したレイピアから巻き起こる、盛大な光の爆発。

 以前よりもさらに威力をあげた一撃が、『橙青』黒仮面を吹き飛ばした。


「このまま攻めますわ!」

「了解!」


 転倒から起き上がった『橙青』黒仮面のもとへ、詰めにいくレンと白夜。


「「ッ!?」」


 だが見えたのは、強烈に輝く『橙青』結晶。


「毒を以て敵を切り裂け――――【輪転劇毒刃】!」


 拳を地に突くと、惑星の輪を思わせる二枚の水刃が、豪快な飛沫をあげて放たれる。

 まずは一枚目。

 広がっていく水輪が飛来。

 これを白夜とレンは、必死にかわす。

 続く二枚目。

 レンは無理をせず【劇毒】を受け入れる形で防御。

 これで【MP減少】との、重複異常に追い込まれた。


「【エンジェライズ】!」


 対して白夜は、高い跳躍でさらに回避。

 手にしたレイピアを、空中で引いた。


「【空覇刃】」

「「ッ!?」」


 しかし黒仮面の攻撃には、『三撃目』があった。

 貫き手で撃つ水刃が、天に向けて放たれる。


「フレア――! 白夜?」


 白夜に高速魔法をぶつけて、水刃の攻撃範囲から逃がそうと杖を構えたレン。

 動きに違和感を覚えて、魔法の発射を止めた。


「【ライトニングスラスト】!」


 白夜はなんと、真下に向けて【ライトニングスラスト】を発動。

 床にレイピアを突き刺す形の高速着地で、敵の攻撃を回避する。

 激しい水刃は虚しく、空中に散った。


「うまい……っ!」


『飛ばせて落とす連携』を逆手に取ることで隙を作った白夜は、両脚を開き、左手を地面に突いたまま。

 スーパーヒーローの着地のような姿勢はまるで、『レンなら必ず続く』と確信しているかのようだ。


「【フレアストライク】!」


 その頭上を、レンの放った炎砲弾が突き進み炸裂。

 再び『橙青』の黒仮面を弾き飛ばした。

 残りHPは、もうわずか。


「【低空高速飛行】!」

「【エンジェライズ】!」


 トドメを刺しに向かう二人。

 一方転がりから見事なアクロバットで身体を起こした黒仮面は、その手をレンに向けた。


「【劇毒水覇砲】」


 猛烈な橙青結晶の輝きの直後、その掌から放たれたのは、数十メートルを一瞬で駆け抜ける飛沫砲。

 幅を3メートルほどに絞った、高速の水撃。


「ッ!?」


 そんな一撃が、カウンター気味の形で突き進む。

 レンはとっさに【低空高速飛行】を解くが、もはや防御も間に合わない状況だ。


「【ライトニングスラスト】――――っ!!」


 真横からされた体当たりは、レイピアを刺さずに外すことで可能となるもの。


「きゃあああっ!」


 レンを水覇砲の『ライン』から弾き飛ばし、身代わりになった白夜は『劇毒』を受けて転がる。


「【低空高速飛行】!」


 この場でするべきは、勝負をつけること。

 レンは白夜をうかがうことなく、再加速。

【魔剣の御柄】に魔法を込め、奥義使用直後の『橙青』黒仮面を斬り裂いた。


「解放!」


 そしてそのまま、【フレアバースト】を叩き込む。

 HPを失った『橙青』の黒仮面は、そのまま倒れ伏した。


「白夜!」


 レンが駆けつけると、そこには倒れたままでいる白夜の姿。


「……監視対象のために自らを盾にするなんて……わたくしも、甘くなったものですわ……」


 そのままゆっくりと、目を閉じていく。


「……ですが。貴方との戦い……悪く……ありませんでしたわ」


 そしてその手からついに、レイピアがこぼれ落ちた。


「ありがとう白夜。でも別に――――死んではいないでしょ」


 普通にそこそこ残っているHP。

 相変わらずの白夜に、レンも変わらぬ苦笑いをこぼしたのだった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 普通にそこそこ残ってるHPは草。 たしかに被弾ほとんどしてないもんなw [気になる点] MPスリップダメージも状態異常だったか… HPはよくあるけどMPは致命傷になりやすい(特に魔導士型は…
[一言] 論理クイズ「幼女と消えた1ドル」で冷静な計算力を試そう 問題 幼女3人がホテルに泊まることになった。 宿泊料は1人10ドル。 幼女たちは合計30ドルを受付係にわたした。 その後、キャン…
[一言] これ公式のまとめをレンが見て後で恥ずかしくなるパターンかも。
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