1007.黒仮面vs白黒チーム
敵はヴァールハイトの結晶兵器を身に着けた、二人の黒仮面。
黒獅子の放った一撃で、分かれたチーム。
それは光の使徒の三人とメイ、白夜とレンたちという形だ。
白夜たちのもとに迫り来るのは、二人の黒仮面。
「それでは、早いところ片付けてしまいましょうか」
レイピアを手に、余裕の笑みを浮かべる白夜。
「見た感じ、結構やっかいそうだけど?」
その隣に黒い装備のレンが並べば、それだけで『世界観』が生まれ出す。
「問題ありません。この程度の闇を払えないようでは、『本物の闇』に立ち向かうことはできないでしょう?」
「なんで私を見ながら笑うのよ」
当たり前のように、そんな掛け合いを交わす二人。
先手を打ってきたのは、濃灰色の軍服のような制服を身にまとった黒仮面の片割れ。
接近し、手甲に埋め込まれた結晶を輝かせた。
見えたのは、『橙』と『青』の二色の輝き。
「「「「ッ!!」」」」
「【劇毒水刃】」
手刀の振り払いで迫るのは、橙の毒水刃。
「二つの結晶を、一緒に使うのですか!?」
劇毒の『橙結晶』と水の『青結晶』を融合させたものを同時に使うことで、毒の水刃を放つ黒仮面。
思わずツバメが声をあげる。
「気を付けてください。『劇毒』は非常に減りの早い毒で、他の状態異常とも重複します」
ツバメは高跳びのベリーロールを思わせる錐もみ回転ジャンプで、水刃を回避。
「それはやっかいですわね!」
白夜は両足を開き、左手を地につく形で続く。
すると橙青の黒仮面は、右手を手刀にしたまま突き出した。
「【劇毒十字刃】」
放たれる『×』型の毒水刃。
「【エンジェライズ】」
「【スライディング】」
これを白夜は、中央のへこんだ部分を狙って飛ぶことで回避。
ツバメは下のへこみを滑って斬り抜ける。
そしてそのまま、近接戦に持ち込む。
「【エーテルジャベリン】」
六本の魔力の槍を左右に三本ずつ展開し、射出しながら接近。
これによって敵は回避を選び、【劇毒水刃】による攻撃を放てない。
「【ライトニングスラスト】!」
続けて放つは、高速の低空飛行突き。
美しいポーズで突き出されるレイピアは、必死の回避を見せた黒仮面の肩を斬っていく。
もちろんこの隙を、ツバメは逃さない。
「【加速】電光石――!」
「【劇毒水壁】!」
「ッ!!」
慌てて急停止。
水壁によるけん制は、触れれば『劇毒』という恐ろしい攻撃。
ツバメは思わず息を飲む。
「けん制の水壁に劇毒はやっかいね! 【誘導弾】【ファイアボルト】!」
レンは毒水壁を超えるような角度で魔法を放ち、斜めに落ちるような攻撃を狙う。
対して『橙青』の黒仮面は、前方に疾走して逃れる。
さらに自ら張った毒水壁を突き破って、白夜に接近。
「【劇毒手】」
大きな踏み込みから、貫き手を放つ。
白夜はこれを、大きなバックステップで回避。
「ライトニング――――」
そのまま反撃の高速刺突のため、レイピアを引く。
「【ヴェノム・スプラッシュ】」
すると黒仮面は、目前に生み出した毒水球に強烈な拳打を叩き込んだ。
毒水球は弾け、放たれた水弾がショットガンのような勢いで迫りくる。
「【連続投擲】!」
ツバメはまとめて四つの【風ブレード】を投げ、どうにか迫る毒水弾から白夜を守ることに成功。
「助かりましたわ」
「ギリギリでしたね」
思わず息をつく、ツバメと白夜。
「拳打と劇毒の水。相当やっかいね」
形状を自由に変える『水』の属性攻撃に、『劇毒』の効果が乗る。
これが水刃になれば、ダメージを受けた後に劇毒にHPを減らされることになる。
想像以上に厳しい攻撃だ。
「もう一体、動いてます!」
叫んだのは、まもり。
背後で戦況を見守っていた黒仮面が、『紫緑』の結晶兵器を起動。
「【グラウンド・ストーム】」
生み出した凄まじい勢いの烈風は、一瞬。
しかし足元を吹き抜けていく風の勢いは、圧倒的だった。
「「「「ッ!?」」」」
【耐久】の高いまもりでさえ片手片ヒザを突くほどの風は、前衛二人とレンから転倒を奪った。
「これ、劇毒へつなぐ連携……っ!?」
レンの予想は当たる。
戦い始めは動きをほとんど見せなかった黒仮面の、急な結晶兵器使用。
それは意識を『橙青』に向けさせたところで、隙を突くためだ。
「【ヴェノム・ラッシュ】」
黒仮面の目前に現れる劇毒水球を、右拳で打つ。
放たれる劇毒飛沫。
これをツバメは、転がりながらどうにか回避。
敵は即座に現れた二つ目の劇毒水球を、左拳で打つ。
散弾のように飛び散る飛沫も、スレスレでかわす。
だがこのスキルは三連発。
そして三発目が一番、範囲が広く勢いも強い。
ヒザ立ちから飛び込み回避を見せた白夜は、スレスレの回避に成功。
レンも慌てて、まもりの背後に隠れた。
しかし弾け散る劇毒水弾の勢いは、ツバメの回避は許さない。
「っ! 【跳躍】っ!」
これを、強引な姿勢からの跳躍でかわすツバメ。
それでも、黒仮面は止まらない。
「【劇毒蹴刃】」
ハイキックから放たれる、鎌のごとき毒水刃。
「【エアリアル】っ!」
ツバメは二段ジャンプまで使って直撃を避け、観戦者たちを唖然とさせる。しかし。
左の足首が引っかかり、そのまま落下して転がる。
こうしてダメージと共に、『劇毒』を受けることになった。
「【爆風進】」
ここで結晶を輝かせ、追撃に突進するのは『紫緑』の黒仮面。
「【連続魔法】【ファイアボルト】!」
「【風界】」
レンはけん制のために炎弾を放つが、風の守りに阻まれ魔法は軌道を変えられてしまう。
「【剛腕結晶】」
そして信じられない大きさになった紫結晶の腕で、ツバメを叩き潰しに迫る。
「【かばう】【不動】【地壁の盾】!」
立ちはだかったまもりの盾が、見事にこれを防御。
大きな衝突音を鳴らして受け止めた。
「助かりました!」
ツバメは立ち上がり、まもりと共にそのまま『紫緑』に立ち向かう。
「【加速】【電光石火】」
速い斬り抜けが決まり、【反転】ですぐさま体勢を整える。
「【爆風進】【剛腕結晶】」
放たれる巨拳の一撃は、二度のバックステップで回避。
「【剛爪風刃】」
「【スライディング】!」
続くのは爪で切り裂くような、払いの一撃。
放たれた空刃の下を、ツバメは潜って回避する。
「【引き風】」
見事な回避を見せるツバメだが、ここで異変が起きた。
「「ッ!?」」
強烈な『緑』の輝きの直後、巻き起こるすさまじい烈風が背中を押す。
「これは……!」
「て、敵に、引き寄せられます……っ!」
ツバメはもちろん、まもりもまとめて暴風に引っ張られる形で『紫緑』の黒仮面のもとへ。
その先に待つのは、巨大化した紫結晶の拳。
「私が受けます……っ!」
このままでは【耐久】の低いツバメが、先に敵のもとに引き寄せられる。
すでに『劇毒』でHPが減少していっている中の追撃は、どうしても避けたい。
覚悟を決めたまもりは、追い風に任せてなんと前進を開始。
「【剛拳烈波】!」
引き寄せ叩く、必殺の一撃。
迫るのは、派手なエフェクトと共に放たれる紫結晶の一撃。
「【不動】【地壁の盾】っ!!」
前方に自ら駆けて行って、盾で受けるというおかしな動きのまもりに結晶拳が直撃。
砕けた大量の紫結晶片を飛ばしながら、まもりを弾き飛ばしにいく。
しかし【不動】は、それを許さない。
見事な判断で拮抗する二人。だが。
「【追波】!」
遅れて放たれた『緑』の輝き。
『二段目』の烈風が、まもりに襲い掛かった。
「きゃああああっ!」
「ッ!?」
【不動】が切れた直後。
ダメージこそほぼないが、すさまじい速度で吹き飛ばされたまもりは、ツバメを巻き込んで転がった。
「……その程度では、新帝国ヴァールハイトの覇道に立ち塞がることはできない」
すると『紫緑』黒仮面はそう言って、右腕の結晶をこれ見よがしに輝かせてみせた。
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