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1002/1381

1002.共闘しますっ!

 メイとシオールの連携でダメージを受けたゴリラ型機械は、その目を強く輝かせる。

 そして、猛然と走り出した。

 腕も使った特殊な四足歩行は想像以上に速く、それ以上に勢いがある。

【爆剛腕】は単純な攻撃力上げに加えて、直撃時に爆破を生み出す攻撃。

 その手を振り回すだけで、大きなエフェクトが生まれる。


「うわっと!」

「あぶないっ!」


 豪快な右拳の振り回し、そのまま左拳の振り回し。

 そして跳躍から一回転して、強烈な拳の叩きつけ。

 巻き起こる爆発は風を起こし、炎を噴き上げる。


「しゃがみですっ!」

「はいっ!」


 シオールとメイは二人そろって、その場にしゃがみ込む。

 すると頭上を、すさまじい勢いで大きな腕が通り過ぎていった。

 この【剛腕ラリアット】、喰らえばそのまま壁まで直進。

 叩きつけられて大爆破という、恐ろしい技だ。


「この勢いと火力は脅威ですね」


 ツバメがそうつぶやいた直後、ゴリラ型が大きく振りかぶる。

 そして体重を乗せる形で、拳を地面に強く叩きつけた。

【剛腕叩きつけ】は、爆風を生むことで一定範囲に『転倒やバランス崩し』を起こさせる攻撃。


「「ッ!?」」


 地面の揺れ、そして吹きつける暴風という二段階攻撃が、二人の体勢を崩した。


「両腕!?」


 思わずシオールが声をあげる。

 ゴリラ型はさらに両拳を掲げ、強烈なエフェクトと共に地面を叩きつけに行く。


「【かばう】!」

「【飛び跳ね】!」


 ここで動いたのは、まもりとスライム。


「【天雲の盾】!」

「【可変】【硬化】ぽよっ!」


 直後、吹き荒れる爆炎は、プレイヤーを壁に叩きつけるほどの一撃。

 メイとシオールの前に立ったまもりとスライムは、広がる爆炎をしっかりと防御した。


「ありがとーっ!」

「助かりましたっ」


 見事な防御を見せる二人。


「ここでようやく出番かなっ?」


 ここで動いたのは、隙を窺っていたローチェだ。


「悪い子には、調教のムチが飛んじゃうぞーっ!」


 高速で迫るムチが、大技によって隙を晒しているゴリラ型を打ち付ける。

 さらに、斜めに回り込むような一撃。

 上段から大きく曲がって落ちる一撃。

 ムチによる攻撃は火力の高さとMP消費の少なさが利点だが、どうしても味方を巻き込みがちだ。

 しかしローチェの攻撃は、前衛組をしっかり避けてゴリラ型に的中する。


「【調教乱打】だーっ!」


 可愛いポーズから放つ物騒な名前のスキルは、ムチの勢いを大きくあげる。

 その凄まじい連打に、弾かれたゴリラ型は慌てて距離を取る。


「この距離で、あの連射は反則ね……!」


 踊るように放つムチの連打に、感嘆するレン。


「最後は派手目に【ファイアウィップ】!」


 大きく振りかぶり、放つ一撃。

 しかしこの『余裕』を、ゴリラ型は見逃さなかった。

 炎をあげるムチを、ギリギリのところで回避。

 連打を叩き込んだローチェに向けて、猛然と走り出す。


「【誘導弾】【連続魔法】【ファイアボルト】!」


 すぐさまレンがフォローに入るが、機敏かつ豪快な動きで見事に回避。

 一気にローチェの目の前へ。


「キャアアアア――ッ!」


 その勢いに、渾身の悲鳴を上げたローチェ。

 突然おとずれた危機に、一転して走る緊張感。


「なーんてねっ」


 飛び込んできたゴリラ型に、いたずらっぽく舌を出す。


「おいで【獅子霊】ちゃんっ」


 突然肩口に現れた巨大なライオンの霊体が、猛然と喰らい付きにいく。


「【獅子霊の盾】っ!」


 しかしこの時、ローチェを助けに来ていたまもりも同時に【獅子霊の盾】を使用。

 結果はまさかの、ダブル獅子霊の喰らいつき。


「わっ、すごーい!」


 予想外の展開に、思わず跳び上がって喜ぶローチェ。

 過去に例がない、二体の獅子霊の同時喰らいつき。

 予想もつかない展開に目を見開くと、獅子霊たちは豪快な振り回しで、ゴリラ型を地面に叩きつけた。


「ありがと、盾子ちゃんっ」

「は、はひっ!」


 助けに来てくれたまもりに、可愛いウィンクでお礼を一つ。

 二人で作った隙に、ローチェは必殺の新スキルで応える。


「それじゃ、いっちゃおっか――――【死霊魔王】」


 それはかつて世界を脅かした魔王が、勇者に討たれた際に生まれた死霊。

 ローチェの背後に現れる、長い角を持った二足の大型骸骨。

 ボロボロのマントに、切れた黄金のチェーンと欠けた王冠。

 手にした杖を掲げれば、ゴリラ型機械の足元に生まれる魔法陣。

 直後、天を突くように噴き出した大量の鮮血の刃が、ゴリラ型を容赦なく切り刻んでいく。


「す、すごいスキルだな……」


 思わず震えながらつぶやく追従組に、血の雨に打たれながら「てへっ」と笑いかけるローチェ。

 やがて、降りしきる血の雨が止む。


「……フーッ、フーッ! ウォオオオオオオ――――ッ!!」


 大きくHPを減らしたゴリラ型は、反撃の狼煙を上げた。

 豪快なドラミングから、怒りに任せた全力疾走。

 狙いはもちろんローチェだ。


「やっばー!」


 飛び掛かりから放たれる右拳の叩きつけを、大慌てで下がって回避。

 すると大きな踏み込みから、左拳の叩きつけ。

 これもバックステップでギリギリ避けるが、再び放たれる飛びつきからの叩きつけには回避が間に合わない。


「きゃあっ!」


 防御は間に合ったが、大きく弾かれて尻餅をついた。

 するとゴリラ型は高く跳躍。

 召喚陣から呼び出した大型の岩石を両手で抱え、そのまま【岩石落とし】を叩き込む。


「【バンビステップ】!」


 メイがローチェを回収。

 石床に叩きつけられた岩石は砕け散り、ゴリラ型はすぐさま振り返って召喚陣を再起動。

 取りだしたのは、数十メートルに及ぶ枯れ巨木。

 ゴリラ型は幹を折って抱えると、そのまま力強く踏み出し大回転。


「「「「ッ!?」」」」


 その攻撃範囲は当然広く、メイたちとシオールたちの両方をまとめて弾くほど。


「【ラビットジャンプ】!」


 メイはローチェを抱えたまま跳躍。


「【不動】【地壁の盾】!」


 なーにゃとシオールは、慌ててまもりの背後へ。

 レンは【浮遊】で退避する。

 大きな風切り音を鳴らして迫る巨木が、まもりの盾を弾いて通過。

 皆が安堵の息をついたところで――。


「逆回転!?」


 今度は左から右への回転。

 息をつきかけた7人は、再び大慌てで回避。

 これにも成功して、今度こそ息をつくが――。


「まだよ!」


 最後は右回転の二連発。


「【ラビットジャンプ】【ラビットジャンプ】!」


 メイは縄跳び感覚で回避。

 まもりも右の盾から、左の盾に使用を変えつつスキルを発動。

 脅威の高火力連撃を、見事に対応した。


「気を付けてっ!」


 メイが叫ぶ。

 豪快な大回転の最後は、なんとスイングの流れのまま【放り出し】

 雑に投げられた巨木を、皆必死に回避する。


「【加速】【リブースト】」


 壁に突き刺さり、砕け散る巨木。

 生まれる、破城槌に城壁を破られたかのような光景。

 二段階加速でかわしたツバメは、そのまま接近。


「スワローちゃん! ツバメちゃんと共闘のチャンスですなっ!」


 気付いたなーにゃが、そう言って指を差す。

 駆け出したスワローが、ツバメと並ぶ。


「【加速】」

「【加速】ですな!」

「【電光石火】!」


 ゴリラ型の前まで来たツバメは、そのまま左へ斬り抜ける。


「【紫電一閃】!」


 するとスワローも、紫の閃光を描く斬り抜けで、右へ抜けていく。


「【反転】【三日月】!」


 そしてツバメが【村雨】に持ち替え、反転と同時に縦の斬り下ろしでダメージを与える通称『ツバメ返し』を放てば――。


「【回転斬り】!」


 スワローも回転斬りを使うことで、強制停止して攻撃。

『疑似ツバメ返し』を体現してみせた。


「決まりました」

「斬り抜けスキルを見つけるのが、意外と大変でしたな」


 親指を立ててみせるツバメに、うれしそうにするなーにゃ。


「スワローちゃんも!」


 思わず飛び跳ねながら指示を出すと、なんとスワローも親指をアップ。


「ツバメ!」


 レンが注意の声をあげる。

 崩れ落ちた状態から体勢を立て直したゴリラ型は、すぐさま目前のツバメを狙って剛腕を振るう。

 だがそのツバメとスワローは、ゴリラ型を前後で挟む形を取っていた。


「【スライディング】【反転】」

「【加速】【回転跳躍】」


 ツバメは足元を滑って、ゴリラ型の後方へ。

 背後を取っていたスワローは、頭上を越えて前方へ。


「【投擲】」


 そして背中に刺さったツバメの【雷ブレード】が、動きを止める。


「このままいきましょう!」


 うなずき合う、ツバメとスワロー。


「【雷光双閃火】!」


 体勢を崩しているゴリラ型に、とどめを刺しにいく。

 ツバメが短剣を二本刺したところで、後に続くスワロー。


「【弐雷金威】ですな!」


 さらに二本の短剣を、深々と突き刺した。


「これで、終わりです!」


 そしてツバメが新たに取り出した三本目の短剣を刺し、準備は完了。

 ゴリラ型に突き刺さった、計五本の短剣。

 まずは【弐雷金威】

 目を焼くほどにまばゆい閃光が、地から天に上りゆく。

 続けて【雷光双閃火】

 派手に飛び散る大量の火花からドンドンドン! と、三連続の爆発が巻き起こる。

 生まれた爆炎は一つの大火となり炸裂、ゴリラ型のHPゲージを消し飛ばした。

 舞い散る、大量の火の粉の中。

 クルクルと舞い飛び戻ってくる三本の短剣を、順にキャッチしたツバメ。

 背を合わせるようにして、自らの短剣を受け取るスワロー。


「お見事でしたなーっ!」


 ツバメとの連携がうまくいって、なーにゃは歓喜の表情で駆けつける。


「とても戦いやすかったです」

「スワローちゃん、良かったでございますなぁ!」


 そんな言葉に、思わずツバメとスワローの手を取り大喜び。


「プレイヤーとドールで、こんなに息の合った連携が可能なのか……?」

「しかも相手はアサシンちゃんだぞ? もう、どうかしてるとしか……」


 超速プレイヤーとドールの高火力連携のド派手さに、思わず見とれる追従組。


「共に戦ってみたくなるな。さすがはトップの一角だ」

「味方でも敵でも、楽しくなりそうだにゃん」


 シオールたちとメイたちのコンビネーションに、夜琉と灰猫も意気が上がる。


「すごいぽよっ!」

「あはははっ! さっすがだね!」


 スライムはバニーを打ち上げながら歓喜し、樹氷の魔女は金仮面と共に迷子ちゃんに締め技をかけつつ感嘆。

 盛り上がる一団。

 シオールたちとの連携で、メイたちは『門番』の機械獣を打ち倒したのだった。

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[一言] 論理クイズですが残っているのは、簡単5、やさしめ1、普通4、やや難しい4、それ以降は全て解いてもらっています、今後どういう風に出すのか迷い中。
[良い点] なーにゃ、スワローちゃんの出番を見逃さない…! ちゃんと刀剣と刀剣スキルまで探してるとは。 [気になる点] 弐雷金威=ニライカナイか! 当て字がいいね!を押したくなる。 [一言] 麻痺の解…
[良い点] 「おいで【獅子霊】ちゃんっ」 「【獅子霊の盾】!」 『ーー貴方はまさか…兄さん!?』 「え? 獅子霊ちゃんどしたの?」 『弟よ! お前なのか!?』 「はひぃ、ライオンさんが喋ってます……
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