1000.地上目指して突き進め!
地上への転移装置を目指すメイたち。
その道は古く、崩壊の中を進む状況となった。
「すげえな、さらにトップパーティが合流か」
「ウェーデンでの戦いを思い出すぽよっ」
追従組におとずれた危機を救ったのは、シオール達三人だった。
「ここからの進行、手伝わせもらってもいいかな?」
「助かるわ。こういうタイプの仕掛けにはちょっと不安もあるから」
敵と戦うだけでなく、即死罠もある移動はどうしても事故が起きやすい。
強力なプレイヤーの助けは、正直心強い。
「消耗もあるでしょ? こっちは来たばかりでMPも減ってないからねっ。ここはローチェたちに任せちゃっていいんだよっ」
そう言って、バチンとウィンクを決めるローチェ。
「フォローはお任せくださいな」
ツバメそっくりドールの『スワロー』を連れた、なーにゃも続く。
「かのウェーデンクエストで、優勝を賭けて戦ったトップパーティか」
「間近で動きがみられるのは、楽しみかもっ」
ここでの先行を買って出たシオールたちに、期待の目を向ける夜琉たち。
バニーは、可愛いけど一癖のあるローチェに注目しているようだ。
「それでは皆殿、準備はよろしいですかな?」
「もちろんっ!」
「いつでもどうぞっ」
「それなら行こうか。よーい……スタート!」
メイとアーリィの返事を聞いて、駆け出したのはシオール。
すると予想通り、再び始まる崩落。
道が崩れて穴が開き、天井が落ちて岩が降る。
「【攻撃速度上昇】」
自身へ補助スキルを使うと、シオールは落下してきた岩石をメイスで次々に弾き飛ばす。
「おっきい岩がくるよっ!」
「【聖刃】!」
メイの声に、すぐさま右手を掲げる。
メイスから広がる3本の光輪。
惑星にかかる輪のような形状の光刃が一斉に広がり、大型の落石を刻んで弾く。
ここで一歩前に出たのはローチェ。
崩れゆく道を駆けてくる、猛犬型機械の動きをいち早く察知。
「【サンダーウィップ・スプレッド】!」
放たれた鞭は先頭の猛犬型に直撃し、雷光を炸裂させる。
かける強烈な輝きは、猛犬型5体をまとめて消し飛ばしてみせた。
「さっすが」
これにはレン、思わず笑みがこぼれる。
するとその直後。
「やば……っ!」
一人の追従組が、急な足場の隆起に体勢を崩して転倒。
そのまま、崩れ落ちていく足場に巻き込まれて落下する。
「おまかせくださいっ! 【バンビステップ】からの【ラビットジャンプ】!」
メイの手が空いているというのは大きい。
落ち行く足場を蹴って、落下中の追従組をつかまえ再ジャンプ。
華麗な救助に成功した。
「あっ」
しかし着地しようとした足場が、先んじて崩れ落ちる。
「うわわわわーっ!?」
「メイちゃんっ!」
思わず驚きの声をあげたメイに、声をかけたのはシオール。
「お願いしますっ! 【ターザンロープ】!」
メイはすぐさまロープを投じ、シオールの腕に巻きつける。
普通であれば、シオールも巻き込まれて落下となるだろう。
だが『ウェーデンのイベント』を知っている面々は、誰一人慌てない。
なぜならこの腕力系プリーストが、これくらいではビクともしないことを知っているからだ。
この隙を突いて駆け込んできた、豹型機械に対し――。
「えいっ」
左手をロープに引かれたまま、空いた右手で【振り降ろし】を叩き込む。
可愛く言っても、高火力。
機械獣はその身体をひしゃげさせ、そのまま壁に激突して転がった。
シオールはそのまま、苦もなくメイと追従組を引き上げる。
「ありがとうございますっ!」
「いえいえ」
見事に脱落を防止。
メイとシオールは、笑顔で抱き合う。
抱き合う腕力コンビの間に挟まれた少女は顔を赤くし、ツバメとまもりが羨ましそうに眺める。
「……第二陣、くるわ!」
しかし、すぐさま始まる天井の崩落。
大きくあがった砂煙が、視界を塞いでいく。
「見通しを悪くすることで、落下物や迫る敵の位置を把握しづらくするつもりね……それなら!」
「了解ぽよっ!」
「はいっ!」
レンの言葉に、即座に応えるスライムたち。
迷うことなく、迷子ちゃんに【麻痺針】を突き刺した。
「「「なんで!?」」」
まさかの事態に、驚くアーリィ組とシオール組。
「理由は後で説明するわ! とにかくあいつを片付けましょう!」
迷子ちゃんをスライムたちに任せて、迫る敵に向かい合う。
「スワローちゃん! 【加速】【宙返り】ですな!」
この時、後方から迫っていたグリフォン型機械。
その接近に気づいたなーにゃは、やや足が遅い追従組をまもるためにドールをけしかける。
「【二連空閃】!」
空中で放つ二連撃が剣閃を生み、グリフォン型を撃墜。
「助かる! 【ヒートランス】!」
「【閃光砲】!」
それを見た追従組がすぐに追撃に入れば、トドメはツバメだ。
「【アサシンピアス】!」
最後の一撃が決まり、動きを止めるグリフォン型。
四人、示し合わせたかのように右手の親指を上げてうなずき合う。
「まだだ! 【爆歩】【月穿ち】!」
そんなツバメたちの頭上を、跳んできたのは夜琉。
空中で放つ回転斬りで、二人の上部から落ちてきていた岩石を斬り飛ばした。
「助かりました」
「まだいるにゃんっ!」
注意の声を上げたのは灰猫。
地面を喰らい、凄まじい勢いで接近してくるのは、巨大な蛇型機械。
砂煙を割って、猛然と【喰らいつき】にくる。
「「「うおおおおおっ!!」」」
その特攻は、防御でも穴に弾き落とされること確実。
追従組は必死のダッシュで、ギリギリ回避に成功。
「ダメダメっ! そんなんじゃローチェは止められないぞっ!」
各トップが大技による打倒と、大技ゆえに崩落を助長する可能性があることに迷う中。
踏み出してきたローチェのあざといポーズに、思わず皆目を奪われる。
「それ、それそれそれっ!」
ローチェは延伸するムチを連発して、大蛇型に攻撃を叩き込む。
すると怒りで、さらに激しい突進を繰り出して来た。
「【双死竜】ちゃん、やっちゃって!」
口ぶりは可愛く。
しかし現れる二頭の死霊竜は、おぞましく。
背後から現れた四足歩行型の骨竜は、雄たけびと共に猛然と飛び掛かる。
そしてそのまま大蛇に喰らい付くと、容赦なく機械獣を壁に叩きつけ、そのまま崩落に消えていった。
「やっるー!」
その見事な『演出ぶり』に、思わずため息をつくバニー。
抜け目のないローチェは、自分を褒める言葉が発せられた時だけ聴力100倍。
即座に「どう?」と、バニーにウィンクを決めた。
「さすがだね」
「まったくだにゃん。こんな状況でも見事に各自の役目をはたしてるにゃん」
アーリィの言葉に、うなずく灰猫。
「バニーは、ブチ切れシオールも好きだけどね」
「それは言わないでっ!」
メイ動画でかつての痴態を知ったバニーの言葉に即座に反応、顔を赤くしながら叫ぶシオール。
「「「あははははははっ」」」
両者を知る掲示板組やメイたちも、思わず笑う。
「うむむ、ツバメさんと夜琉さんの並びは可愛いですな……!」
一方、白髪黒髪の小柄な二人に目を輝かせるなーにゃ。
「さらにスワローちゃんまで一緒になると、そこはもう天国……!!」
生まれた並びに、「むふー」と得意げにする。
直後、得意げにするなーにゃの頭に石がゴスッと当り、ツバメと夜琉が噴き出した。
これには追従組も、笑いが止まらない。
崩れ落ちる道と、迫る機械獣たち。
そんな厳しい状況下でも、楽しげな声が途切れることはない。
「終わりが見えたよっ」
見えたのは、崩落区画の終点。
そのままの勢いで駆け抜けたメイたち一団は無事、転移装置のある区画へとたどり着く。
「やったー!」
「早かったわね」
手を取り合い、歓喜する一団。
世界を賭けた緊張のダンジョンに、メイたちの元気な声が響き渡った。
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