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2話 みんな期待しすぎじゃない?

 生徒会室を出て図書館に続く渡り廊下を歩いていると、先に行っていたクラスメートたちが戻ってきた。


「どうだった?」

「もちろんOKだったよ! 会長が許可したなら大丈夫ってことみたい」

「本当!? やったね!!」

「ありがとう、椿姫ちゃん! 椿姫ちゃんのおかげだよ」


 パチンッとハイタッチを交わして喜ぶ。


「じゃあ早速明日からよろしくね、椿姫先生!」

「はいはい。……でも流石に一人で全員を教えるのは難しいから、先生役を何人か読んでおいてね?」

「もちろん。全部椿姫ちゃんに押し付けるのは良くないからね。ちゃんといろいろ考えてあるよ」


 心からのにっこり笑顔を向けられたので、私も安心してほほえみ返した。

 やっぱりこうやってみんなと楽しく過ごせるのは楽しいな……。

 この学校に入って良かった。中学校では途中まであんまり友達も出来なかったし、いたとしても友達というよりかは取り巻きみたいな私の名前だけがほしいって感じの人が多かったから。


 でも今の星花は全然そんなことなくて、みんな対等に仲良く私に接してくれる。

 なんていうか、みんなのことが大好きだなぁ。


 そんなことを考えながら私は友達と連れ立って教室に向けて歩いていた。


 *


 翌日の放課後。


 私たちは早速図書館にある会議室に向かった。


 星花の図書館は、校舎に劣らないほどの階数の開架を誇り、一階にはカフェテリアなんてお洒落な名前がついた食堂、屋上には綺麗に整備されたウッドデッキと花壇が広がるテラスがある。

 ガラスと吹き抜けをふんだんに使用した開放的で明るい空間は、図書館目当てに入学を希望する生徒が毎年一定数はいるほど人気の場所だ。

 更にいうと地下には閉架が数階に渡って広がっているらしい。


 これだけでもすごいのに、この地方にある図書館のうち二番目に蔵書数が多く、トップは星花女子大の図書館であるというから驚きだ。

 私は見たことないけれど、うちの図書館の数倍は広いっていう話を聞く。


 うちの蔵書数はおよそ百万冊で、なんでも大学図書館のキャパが足りなくなってきたから新校舎を建てるついでに建てたとかなんとか……。


 ともかく、そんな図書館の一角にある会議室に私達は入っていった。


「いやー広いね〜! 七十人くらい入れるらしいよ」

「本当にそんなたくさん人来るの?」

「大丈夫だって椿姫ちゃん! たくさん宣伝しておいたから!」

「せ、宣伝……?」

「そそ。学年イチの美少女優等生、五行椿姫による期末試験対策セミナーってね。立ち客出るかも」

「ええっ!?」


 き、聞いてないよ!?


「冗談冗談。ただ勉強会するからよかったらどう? って言って回っただけだよ」

「……もし本当にセミナーなんて言ってたらお金取るところだったわ」

「やらないとは言わないあたり椿姫ちゃんらしいよね」

「もう、からかわないの!」

「ごめんごめん」


 三人がけの机が四つずつ正面を向いて六列並んでいる普通の会議室っぽいレイアウトを、半数を反転させて六人ひと島に作り変えていく。


 噂を聞いて徐々に集まりだした生徒たちに協力してもらってものの数分で終わらせると、早速勉強会をはじめることにした。

 まず先生役を引き受けてくれた生徒たちにそれぞれの島に座ってもらい、そこに残りの生徒たちが適度に分かれて座ってもらう。

 私は正面のホワイトボードの前に立ちマイクを握って全体を見渡す。


「みんな揃ったかしら?」

「五十人くらい来てるみたいだよ!」

「そんなに!? ……みんな来てくれてありがとう。それじゃあ早速この勉強会のルールを説明するね。まずひとつ目。もしかしたら私目当てできてくれた人もいるかもしれないけれど、こんなに大勢に質問されると時間もないし大変だからなるべく質問とかは島ごとに解決してほしいな」


 ちょっと残念そうな表情を浮かべた子もいたけれど、大半がクスッと笑って納得するように頷いてくれた。


「全員が苦手な教科があったり解ききれない難しい問題があったときは他の島に聞きに行ったりしてもいいよ。それでも分からなかったりした時だけ、私のところに来てください」

「「「はーい」」」

「よし。じゃあ早速スタート! 今日は七時までで、いつ抜けたり入ったりしてもいいからね」


 私の掛け声と同時にみんな黙々と勉強を始めた。

 時折教え合う声もあまり気になるものではないし、思ったより私に聞きに来る人もいなくて、たまに順番待ちができるくらい。私も集中して勉強することができた。


 私目当てというよりかは、みんな集中して勉強できる環境がほしかったみたい。

 寮の部屋とか共有スペースだとどうしても気が散っちゃうからね。


 そんなこんなで特に大きな問題もなくお開きの時間を迎え、残ったみんなで部屋を元通りに直す。

 途中で帰ったり、部活が終わってからきた人もいたけれど、最後まで四十人くらいが残っていた。


「みんな今日どうだった? 私も初めてやったから不安だったんだけど……」

「ありえないくらいめっちゃ進んだ!」

「うんうん。やっぱり周りのみんなが勉強してるから、負けないぞーって気持ちで集中できたよ!」

「教え合いって楽しいね」


 口々に感想を言ってくれるみんな。

 こう上手くいくと嬉しいね。


「ありがとう……! 結構役に立ったみたいだから明日からも続けようかな。多分今日と同じこの部屋でやると思うから……」

「椿姫ちゃん、多分今日の勉強会の話を聞いてもっとたくさん来ると思うから、もっと広い部屋を借りたほうがいいと思う」

「たしかに。来週から部活もなくなるし、抜ける人も少なくなりそう」

「うーん、わかった。司書の先生に聞いてみる」


 ひとまず、これくらいかな?


「じゃあ今日はここまで。お疲れ様でした!」

「「「お疲れ様でした!」」」


 全員が出たことを確認して施錠し、司書の先生に鍵を返却しにいく。


「先生〜。鍵を返却しにきました」

「ああ、五行さん。勉強会はどうだった?」

「大盛況でしたよ。みんな集中できる環境が欲しかったみたいです」

「そうなの。良かったわね!」


 この司書の先生とは清歌さんのお仕事を手伝ったときからの顔見知りで、昨日クラスのみんなが許可を貰いに来たときも快諾してくれたって聞いた。


「明日からも引き続き借りたいんですけど、もしかしたら今の部屋だと一杯になりそうなんです……」

「まあ、そんなに? そうね、じゃあ大会議室を開けとくからそこを使いなさい」

「ありがとうございます! ではまた明日、おやすみなさい」

「おやすみなさい」


 やっぱり、この学校は楽しい。

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