-4話
「ねぇお姉ちゃん、誰かを好きになるってどういうことなのかな?」
「急に随分難しい話をしてくるわね?」
「うーん……。なんかさ、そろそろ十二月じゃん? それで私の周りにかもカップルとかが増えてきて……」
「ああ、クリスマスとか近いものね。それはそれでどうして?」
清歌さんの反対側に腰を下ろして横になると、姉ちゃんの膝に頭を乗せて上を向き、お姉ちゃんを見つめる。
こうするとほら、お姉ちゃんは私の頭を優しく撫で始めてくれるんだ。ここが私のお気に入りの場所。
「なんかもっとお姉ちゃんみたいに毎日告白されちゃって大変! みたいになるのかなって思ったんだけど全然そんな事なくて。……私、そんな魅力ないのかな?」
「そんなことないわ。あなたは私の大切なたった一人の妹よ? みんな好きになってくれるに決まってるじゃない」
「ならどうして?」
「勘違いしてるみたいだけど、私も全然告白されたりとかしたことないわよ」
「そうなの!?」
嘘だぁ、こんなに完璧超人で美人なのに告白されないなんて。
そう思ってたら隣から清歌さんがびっくりなことを言う。
「姫奏はね、なんというか他の人から見て自分とは全然違う世界にいるって思えるのよ。高嶺の花というか雲の上の存在というか。だから椿姫ちゃんもそう思われてたりするんじゃないかな」
「えっ、そうなの!?」
「まあ、そうだったみたいね。私のファンクラブとかもあったし」
「ファンクラブ!?」
「そうそう。私も入ってたんだよ? みんなで姫奏お姉様素敵……なんて話もしてたし」
「へええ〜!」
想像もできないや。あれ、でも確かに……。
「確かに友達がファンクラブとかなんとかって話をしてたかも。私はてっきりアイドルかなんかかなってずっと思ってたんだけど」
「私だけじゃなくて、モテる人には大抵ファンクラブがあったり、コミュニティができたりするのよ。そういう人たちは大体さっき椿姫が言ってたけどその対象をアイドルみたいな感じで見てるから、恋愛対象としては見てもらえないかもしれないわね。憧れ、みたいな感じよ」
「なるほどね〜」
「椿姫もそういうファンクラブが出来てたりするんじゃないかしら?」
「ないない! ……多分」
ない……よね?
あってもアイドルみたいにきゃーきゃー言われたりしてたら恥ずかしくてどうしようもない。
「話を戻すけれど、恋愛は焦らないほうがいいわよ。いつかきっと、あぁ……この人なんだなっていうお相手が見つかるわ。一目惚れではなくても、長い間過ごしているうちにそう思える相手が出てくるわ」
「そうだよ、椿姫ちゃん。星花って結構ラブラブしてる人が多いイメージだけれど、意外とあっさり別れたり長続きしないカップルも多いんだよ? だから椿姫ちゃんがこの人! って思える時までもやもやした気持ちを取っておくと楽しくなると思う。……って、姫奏としか付き合ったことがないわたしが言うのも変だけれど」
「あら、それを言うなら私も清歌が初めての人よ?」
途中まで真面目な雰囲気だったのに、突如として二人だけの世界に入ってしまったお姉ちゃんたち。
全く、いっつもこうなんだから。
私の頭上で濃厚なキスを始めた二人の間からそっと抜け出すと、自分の部屋に戻った。
妹の存在を忘れるくらいヒートアップするのは羨ましいけれど、急に巻き込まれる私の身にもなってほしい。
全くもう……。
プロローグである“-(マイナス)○話”部分は内容の一部にプロジェクト全体の設定と齟齬が生じている部分があり、修正も検討しましたがプロローグ全体の流れと今後に繋がる土台が崩壊してしまうためやむなくIFとして扱っています。
詳細は-2話及び-1話にて説明しています。