-5話
キャラクターについてはこちらのnoteをご覧ください。
『五行椿姫』(ページ下部)
https://note.com/tomitsukasa/n/nc5e13a577b7a
『齋藤美紅』(ページ中程)
https://note.com/tomitsukasa/n/n9bd6ff576bb2
作中に登場する椿姫ちゃんのお姉ちゃんである『五行姫奏』さんと『御津清歌』さんメインのお話はこちらをご覧ください。
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「ただいま〜!」
「あら、おかえりなさい椿姫」
「椿姫ちゃん、おかえりなさい」
「お姉ちゃん清歌さん、ただいま!」
ほぼ一週間ぶりに帰宅しリビングに入ると、そこにはお姉ちゃんと恋人で婚約者の清歌さんがソファで密着しながらテレビを眺めているところだった。
私は五行椿姫。五行財閥を取り仕切るお父様の次女で、お母様、姫奏お姉ちゃんとついこの間まで一緒に住んでいた。
過去形なのには理由があって、私が家を出てお姉ちゃんも通っていた星花女子学園に高等部から入学し、学校の中にある寮に入ったから。
二年くらい前になるのかな。
お姉ちゃんが初めての恋人でもある清歌さんとお付き合いをはじめた時からずっと、放課後毎日のように部屋に連れ込んではいいお屋敷の割に防音性が微妙な壁の向こう側、つまり隣の部屋に可愛い妹がいることも忘れてイチャイチャラブラブするものだから、もう限界に来ていたというのも一つの理由。
あとは純粋にお姉ちゃんに寮暮らしをおすすめされたから。
中学の時は少し離れたところにある女子校に通ってて、高等部が無かったからお姉ちゃんも通ってる星花女子に進学することにしたんだ。お姉ちゃんは入れ替わりで卒業しちゃったんだけどね。
お姉ちゃんはずっと家から通ってたんだけど、生徒会長とかをやってるうちに色々な生徒のことを知って寮暮らしが羨ましくなったらしくて。あなただけでも経験してみなさいって言われた。
半年くらい寮で一人暮らししているわけだけど、実際クラスの友達とか先輩と夜遅くまで食堂とか共用のリビングでお喋りしたり一緒に勉強したりするのは結構楽しい。
私は菊花寮という、成績上位者だけが入れるらしい個室の部屋なんだけれど、隣に桜花寮っていう二人でルームシェアするタイプの寮もあるらしくてもうちょっと入試で手を抜いてればな〜って思ってるのは内緒。
主席入学でお姉ちゃんもすっごく喜んでくれたからどうでもいいんだけどね。
お姉ちゃんは恋人の清歌さんとはこの学校に通いながら出会ったらしい。
なんでも悩んでいた清歌さんの相談に乗ってるうちに……って事らしいんだけど、私は清歌さんと会ってから清歌さんが暗い表情をしてるところを見たこと無いし、昔はシャイだったって聞いたけどすごく明るく笑顔で話しかけてくれる印象しかないからお姉ちゃんたちが話を少し盛ってるのかな、とも思ったりしてる。
確かに初対面の頃とは結構違う気はする。
でもお姉ちゃんの後を継いで生徒会長に当選して仕事をきっちりこなすくらいだから根は真面目なんだろうなって感じがする。
お姉ちゃんと所構わずイチャイチャしてるオフモードの時にしかほとんど会ってないから真面目な一面があんまり想像つかないってことはあるけれどね。
そんな清歌さんが何かと私に頼りがちな気がするのは気のせいじゃないと思う。
例えば生徒会の仕事が終わらないからって言って入学前から書類の確認とか承認を代わりにやらされたり、予算の確認とか、学校運営や生徒会主催の行事に関することまで本当になんでも手伝わされた。
お姉ちゃんが『椿姫なら私も清歌もよく知ってて信頼できるし、こういうこと椿姫は得意でしょう?』って言ってくれたことは嬉しかったんだけど、清歌さんの肩を持った理由が、これ以上仕事の負担が増えるとイチャイチャする時間が減るからって隠しもせず言うものだからどんな顔をすればいいのか分からなかった。
お姉ちゃんは私たちの後ろからアドバイスとか違うところを指摘したりしてくれてた。
まあおかげで事務スキルは上がったし、入学前からこれから通うことになる学校の裏も表も詳しくなれたしお姉ちゃんたちから色々と面白い話を聞けたからよかったとは思う。
でも入学した直後から頻繁に生徒会に勧誘してくるのは嫌だったけど。
私は自分自身でやりたいことをやりたいから、生徒会みたいな縛られて学校のために一日中時間をとって生活するのは違うかなって思ったし今でもそれは変わらないから、秋の生徒会選挙を経て代替わり、つまり清歌さんが会長でなくなった後も清歌さんの紹介で勧誘を続けてくる先輩方には本当に困ってるのよ。
……先輩が清歌さんにSOSを出したときだけ、清歌さんと一緒に私の名前は出さずに少しだけ手伝ったりはしているんだけれどね。
学園の最新の情報を知りたいっていうのもあるから! そう、他の意味はないのよ?
まあ、なんだかんだありつつも、授業や行事も楽しいしクラスのみんなとも仲良くなれたから本当にこの学校に通っていて良かったと思う。
ただ一つだけ不満があるとすれば、星花では本当に先輩後輩同級生の垣根を超えてカップル(もちろん女の子同士の)がめちゃくちゃ多いんだけれど、私自身には全くそういう気配が感じないのは少し悲しい。
周りのみんなは夏のりんりん学校とかで恋人ができたりしてたんだけど、私は清歌さんに呼び出されてりんりん学校に行く前から夜遅くまで生徒会の仕事を手伝わされたりして、向こうに行ってる最中は楽しむより休んでいたい気持ちのほうが大きくて何もしないまま帰ってきてしまった。
……私、自分で言うのもおかしな話だけど容姿はお姉ちゃんに似て整ってるし、身体つきも変じゃないはずなんだけどなぁ。
漫画とか読んでると、毎日のように呼び出されては告白されるような人みたいだな、なんてちょっと憧れたりするんだけど、中学生の時から告白なんてされた事もない。
前まではお姉ちゃんに憧れて、すっごいお嬢様っぽさを突き詰めよう! って思ってたんだけど、そういう雰囲気も近寄り難いのかなと思って(元々あんまりお嬢様になるのは得意じゃなかったし)中学校の途中から今みたいな素の自分を出すようになった。
そのおかげか前までは私の周りで私を観察してるみたいだったクラスメート達とすっごく仲良くなれた。
でもやっぱり恋の方面からの音沙汰は全くない。
好きだな、って思うことはあるけれど、なんかそこまで熱くならないというか……。
お姉ちゃんは清歌さんに惚れたとき、直感的に「あぁ、この人なんだ」って思ったらしい。
私にはそういう瞬間がなかったんだ。
そのままずるずると時は過ぎて、星花に入ってからもう半年以上も過ぎてしまった。
話を私が帰ったところでお姉ちゃんたちと会ったところに戻そうか。
プロローグである“-(マイナス)○話”部分は内容の一部にプロジェクト全体の設定と齟齬が生じている部分があり、修正も検討しましたがプロローグ全体の流れと今後に繋がる土台が崩壊してしまうためやむなくIFとして扱っています。
詳細は-2話及び-1話にて説明しています。