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町の生活スタート

 必死の思いでたどり着いた町は、遠目からもそうだったけど近くで見ても普通の田舎町のようだ。


 歴史には対して詳しくはないけれど、中世のイタリアとか多分そんな感じの町並みで、オレンジ色の街灯がレンガで出来た道を照らしている。もう辺りは暗くなりはじめているせいか人は殆ど歩いてはいない。


 血で汚れたスエットも顔もこの時間帯では目立たない事は助かった。


 とりあえず町の人に宿屋の場所を聞かなくてはならないな。宿屋が見つからずでは、このままだと野宿が確定する。

 これで言葉が通じなかったらどうしようと思ったけど、言葉は普通に通じて助かった。


「すみません。今日初めてこの町に到着しまして。宿屋の場所を教えて貰えませんか?」


「こんにちは⋯⋯って、大丈夫? 血で顔が汚れてるわよ。宿を探しているなら、一番近いのは、あそこに見える赤い屋根の所よ」


 そう言いながら村人は宿屋の方を向きながら指指しして教えてくれる。


「ちょっとへまをしてしまって⋯⋯けど大丈夫です。ありがとうございます」


 何とか作り笑顔でその場を誤魔化し、お礼を言って宿屋に向かった。


 無一文の俺をどうしたら泊めて貰えるか考えて見たが、方法は1つしか思い浮かばなかった⋯⋯

 コミュニケーション能力には自信はあるんだ。ゲームでどれだけの初見さんとパーティーを組んだことか。

 宿屋に向かいながら気持ちを落ち着かせ、深呼吸をし宿屋の扉を開けた。



「いらっしゃい!」


  髭の生えた40才位であろう大柄な男性が笑顔で出迎えてくれた。

  俺も勿論笑顔で返す!そして、出来るだけ丁寧に。



  ⋯⋯土下座をした。



「お金ありません!泊めてください!」


 ⋯

 ⋯⋯


  1分ほどだろうか、男性から声も聞こえない。確認をするためにも顔を上げて男性を見る。

  顔全体から戸惑いを醸し出していた。


  そりゃそうだ。誰だってそうなる、俺だってそうなる。


「お、おう。どうした? それに顔が汚れてるじゃねーか」


「えーと、わからないんです⋯⋯あ、あの、気づいたら木の下で目覚めて。で、で⋯⋯なぜそこにいたのかもわからないんです。何も持ってないんです」


  俺は生まれて初めて、土下座をしながら喋ってる。

  もう泣きたい⋯⋯


「うーん⋯⋯聞いたことが無い事だな」


「⋯⋯ですよね」


 何とも言えない気まずい空気。

 そりゃそうだ、初対面相手に血で汚れた顔の男が土下座してるんだから⋯⋯

 すぐにでも逃げだしたい!


 でも、ここで逃げたら俺は死ぬ。逃げるわけにはいかない⋯⋯


「まー。よくわからんが、お前さんは困ってる事には間違い無いし、部屋も空いてるから泊まってけ。外で野宿なんかしたら、モンスターに襲われて死んじまうかもしれん」


「ありがとうございます!」


  この人はとてつもなく良い人だった。


「とりあえず立ちな。そんなところで頭下げてても仕方ないだろう。こっちだ」


 俺は静かに立ち案内されるままに宿屋の一室に向かった。


 本当に助かった――

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