アラーム
掲載日:2018/05/22
見間違いようのない青空。
ぼくは汗臭いタオルを握り締めるだけ。
学校に向かう子供たちが見える。
まだ眠そうな顔。
友達と楽しそうに喋りながら歩く子供たち。
うつむき加減の子供もいる。
だけど、ぼくにはその声は聞こえない。
仕事に向かう大人たちが見える。
まだ眠そうな顔。
信号待ち、車の中、なにか探し物をしている人。
信号待ち、車の中、必死に髪を整える人。
信号が変わり走り出す車の列。
だけど、ぼくにはその音は聞こえない。
まただ。なにかを伝えるアラーム音が響いている。
きれいに手入れされた垣根を隔てて、世界は変わる。
まただ。なにかを伝えようとする呻き声が響いている。
無音の世界を見つめるぼくは、得体の知れない警告音に囚われる。
そっちに行きたくて、手を伸ばすと、滑稽な音をたてて突き指する。
そっちに行きたくて、歩こうとすると、突拍子のない音をたてて足の骨が折れていく。
アラーム音が響いている。
嘔吐の音を纏い、アラーム音が反響する。
放屁と放便の音が、警告音と混声合唱を開始する。
憧れとなった世界。
あの無音の世界。
誰かが、シャッとカーテンを閉め始めている。
日常が秘密と都合で分断される。
学校が始まる。
仕事が始まる。
1日が始まる。
無音の世界には、得体の知れない警告音は届かない。




