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5話 「贄」


 

 「シュー、シュー」

 

 巨大な蛇が空気を吹き出すエアーのような音をさせながら須賀を睨みつけて威嚇する。

 

 蛇の体長はおよそ10メートル。顔を見上げないと全体を見れない程。そして胴の太さは人を二人くらいなら余裕で飲み込めるくらいある。


 そんな相手に対し須賀は負けじと睨み返した。

 

 「……久我、どうやら俺達はこの蛇の住みかにお邪魔しちまったみたいだな」

 

 「みたいだ、すぐに荷物を持って逃げるぞ――っグハっ!」

 

 突然須賀の横腹目掛けて蛇が尻尾を器用に操ってぶつけた。それに須賀は反応できずに横に飛ばされた。

 

 「須賀ぁ!?」

 

 久我は驚き声を上げる。その久我の手の上ではゼリーはブルブルと高速で震え怯えた。

 

 「げほっ、げほっ、痛えだろうが……クソ蛇野郎がぁ!」


 須賀は吹き飛ばされさが何事もないかのように起き上がった。


 「こっちは喧嘩になれてるんだ、吹き飛ばされたぐらいでへばんねぇよ……痛っ」


 畜生、強がって見たけどけっこうダメージがやばい。


 須賀は強がっているだけだった。

 

 贄ガ来タノ久シイ……シカモ異界ノ言葉話ス……昔ニ異界ノ言葉話ス人間ト戦ッタコトアル。


 突然、須賀の頭の中で片言の日本語を話す老人の声が聞こえた。

 

 「おい、もしかしてお前が話しているのか? 蛇野郎!」


 「須賀無事なのか? ってかお前蛇を挑発すんなよ! ははっ、どうもすみません内の相方が」


 「――ムガッ、んーんー!」

 

 久我は慌てて須賀の口を抑えて宥める。


 大キナ音ガ儂ヲ起コシタ、見ニ来タラ生贄イル。


 生贄だと!? しかも大きな音って……アレか!


 久我がキノコを爆発させた時に出た音が原因で蛇をおびき寄せてしまったらしい。

 

 「てめぇが原因かこの野郎! 最初のテントウムシの時みたいに余計な事ばかりしやがって!」


 「うわっ、ごめん!」

 

 須賀は久我の胸ぐらを掴んで怒鳴った。


 ……ナッ!? 生贄ドモガァ、許サン! 儂ノ同胞ヲイジメタナァ!?


 突然、蛇が怒りを顕にした。


 須賀と久我の二人は視線を足元にやると、非常食のアオダイショウがぐったりとしていた。


 「須賀、お前も原因じゃないかよ!」


 「うるせぇ!」


 今度は久我が須賀の胸ぐらを掴んで怒鳴った。その間にゼリーがアオダイショウを触手を使って癒やした。

 

 ……生贄ドモ、儂を無視スルナ。


 蛇の一言で二人は取っ組み合いを辞めた。


 「ちっ……わかった、俺が非常食アオダイショウを食べようとしてたのが気に食わないなら止める……だからこのまま帰らせてくれ」

 

 駄目ダ、オ前達ハ生贄ノ分際デ儂ノ同胞ヲイジメタ……万死ニ値スル、ダカラ絶対ニ食イ殺ス!

 

 「シャアアアア!」

 

 口を大きく開き蛇が素早い動きで須賀と久我の二人に向かう。

 

 「ヤバッ! 逃げよう!」


 久我はゼリーを抱き上げて逃げ出した。


 「ククク、蛇野郎が、そう来ると思ってたぜ」

 

 須賀は長年の喧嘩の経験から相手が次にどういった行動を取るか予想していた。


 なので久我との取っ組みあいの最中に腰にある銃剣を片手でいつでも抜ける様に準備していた。


 「フンッ!」


 後は蛇がこちらに向って来るタイミングを見て片手で素早く銃剣を抜くと、刃先を前にしてまっすぐ両方で固定し構え、蛇が自分から銃剣に刺さりに来るのを待った。

 

 「――ッ、シャアアアア!」


 痛イ痛イ痛イ痛イィッ!


 蛇は口の中に銃剣が深々と突き刺さり痛みに叫んだ。その隙に須賀は自分の銃を拾いに行った。一方の久我も自分の銃を拾って戦う準備をしていた。


 「――あっ、しまった、俺の銃は壊れてたんだ」


 久我は崖から落ちた時に銃を地面に叩きつけてしまい壊した。久我がその事に頭を悩ませているとゼリーがどこからか拾った銃剣を触手で掴み久我の側へやってきた。


 「これは、俺が須賀に貸したやつか、吹き飛ばされた時に落としたのを拾ったんだな」


 「ぷるぷる!」


 ゼリーは触手で洞窟の外に向かうようにジェスチャーをした。

 

 「分かった、でもまだ須賀がいるから行けないよ」


 「おい、何やってんだ早く逃げろ!」


 「えっ?」

 

 久我は逃げるのを躊躇した時、後ろから須賀が叫んで危険を知らせた。


 「シャアアアア!」


 次ハ、オ前ダ!


 須賀が危険と判断した蛇は今度は危険が少ない久我を標的に選んだ。


 「うわあああっ!」


 蛇が血まみれの口を開けながら自分に向って来る光景に須賀は恐れをなして動けなかった。


 やばい、食べられる!


 久我は死を覚悟した。


 「ぷるぷるぷるぷる!」


 ゼリーが須賀の前に現れて先程手にした銃剣を触手を使って振り回した。

 

 一瞬蛇は動きを止めてゼリーを観察した。しかしすぐにゼリーを銃剣ごと丸呑みした。

 

 「ああああッ! 俺のゼリーちゃんが」

 

 久我は悲痛な声を上げた。ゼリーは怯える久我を守ろうとして戦い食べられた。その光景を目にした久我は絶望と悲しみで胸がいっぱいになった。


 俺に勇気があればゼリーちゃんは……。


 「久我、ボーッとするな!」


 須賀が空砲を発射する。


 「シュー、シュー」


 ウオオッ! 異界ノ武器、恐イ!


 蛇は銃を恐れて少し後ろに下がった。須賀がその隙をついて久我に近づき胸ぐらを掴んだ。


 「てめぇ、死にてえのか!? 戦えよ!」


 「そんな事言っても、ゼリーちゃんが……俺の武器が――」


 「バカ野郎! それがどうした、何かできる事が有るだろうが、さっさと動きやがれ!」


 ――何か、できる事。


 久我は思考した。そして自分が持っているもので使えそうな物を思い出した。


 「そうだ、グガタケがまだある!」


 久我は急いで背嚢を漁るとサッカーボール程の大きさのグガタケを取り出した。


 「はぁ!? お前まだそんなキノコを持ってたのかよ」


 「あぁ、あそこに合った中で一番でかいの取ってきた」


 「……」


 須賀はテントウムシに追われた原因は久我が今持っている一番大きなグガタケだと確信した。


 「須賀、こいつを撃って爆発させるんだ」


 「あ、なりほど――いいねぇ、あのクソ蛇を吹き飛ばすのか、最高だな」


 久我の発案に須賀は凶悪な笑みを浮かべて同意した。その表情を見た久我は自分の相棒は恐れを知らない勇敢な奴だと思った。


 ククク、儂トシタコトガ、異界ノ武器ハ音ガスルダケ、恐レル事ナイ。


 蛇が銃に殺傷能力が無いことに気がついた。そうして二人の周りを一周して囲う様に胴体で輪を作った。


 「ちっ、マズイことになった蛇野郎は俺達を絞め殺す気だ」


 須賀は直ぐに蛇のしようとしている事に気がついた。そして直ぐに輪の中を脱出しようと試みるが、蛇の胴体は高く、そして幅があるのでよじ登って脱出することは無理だった。


 「シュー」


 無駄、儂ノ体ハ大キイ、小サイ獲物ハ乗リ超エレナイ、無様、ククク。

 

 蛇が二人を煽る。そうして益々胴体の輪を狭くした。

 

 畜生、舐めやがって、絶対に吹き飛ばしてやる――だがどうやろうか? 蛇野郎を触って感触を確かめたが皮膚は硬かった、あの硬さの物をクガタケの爆発で穴を開けれるのか?

 

 須賀は蛇の口に注目した。


 奴の口の中なら銃剣で突き刺す事ができるくらいに柔らかかった、どうにかしてそこにクガタケを入れれないか、そうすれば奴の頭を吹っ飛ばせるのに。


 そうして考えている内に胴体の輪は狭くなり、最終的に二人分のスペースしかなくなった。

 

 「シャアアア」


 良イゾ、生贄ドモノ儂ニ怯エル表情ハ良イ、ホレ、モット怯エロ。


 蛇は完全に二人に対し勝利を確信して遊びにかかった。しかしそうした中で蛇は自身の体に変化が起きている事を知る由もなかった。


 「っ!? シャアアアア!」


 イ、痛イ……体ノ中ガ痛ム、ヤメロ! 誰ダ、儂ノ中ヲ傷ツケルナ!

 

 蛇が痛みに耐えきれずに地面に倒れた。そうして須賀達は輪から開放された。

  

 「ウエエエ!」


 「ぷるぷる!」


 蛇が口を開けて血を吐き出すと同時に銃剣を持ったゼリーが飛び出した。


 「俺のゼリーちゃんだ! あいつ食べられたけど銃剣で蛇の体内を切り刻んで脱出したんだ!」


 「そうなのか、良いねぇ、それより久我、今がチャンスだ、あの蛇野郎の口にキノコをぶち込んでこい!」


 「わ、わかった」


 久我は蛇が血を吐いて口を開けているところへクガタケを無理矢理押し込んだ。


 ング!? 何ヲスル!


 「……じゃあな蛇野郎」


 続いて須賀が近づき蛇の口に挟んであるクガタケに向けて空砲を発射した。


 するとクガタケは空砲の熱と衝撃により科学反応を起こして大爆発を発生させた。

 

 その瞬間、須賀と久我の二人は爆発の衝撃で飛ばされた――。


 「……あー、畜生、耳が痛え、おい大丈夫か久我?」


 「ああ、何とか生きてる」

 

 須賀は起き上がり蛇の様子を見た。


 「シュー……シュー」

 

 「こいつはひでえな、下顎が吹っ飛んでやがる」


 蛇は爆発で下顎が無くなり、大量の血を流して虫の息だった。これでは長くは持たない。


 ハァハァ……人間ドモメ……コレデ終ワリデハナイゾ……今度ハ儂ノ同胞ガ儂ノ仇ヲトル。

 

 蛇は最後の力を振り絞り、大量の血反吐とともに何やら赤く輝く小石を吐き出した。


 そして気がつけば須賀が非常食にしようとしていたアオダイショウがいて吐き出した小石を飲み込んだ。


 一瞬の出来事で須賀は動く事ができずに気がついた時にはもう遅かった。


 「おい、何を食った!? 吐けこの野郎!」

  

 須賀は慌ててアオダイショウを捕まえて逆さにした。食べた小石を吐き出させようと考えたからだ。


 嫌な予感がする。


 須賀がそう思った時にはアオダイショウに変化が始まっていた。そうして徐々に体が大きくなり遂には須賀が両手で持たないといけない大きさに変化した。


 「――畜生、遅かったか」


 どうやらまだ戦闘は続く様だ。

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