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4話 「日本じゃない」


 須賀と久我は山の中で迷っていた。

 

 理由は巨大な虫に襲われて逃げるのに必死になり目印となる地形や物等を把握できなかったからだ。

 

 とりあえず二人は斜面の上にまだ虫がいるので山を下り斜面が低くなって登り易い地形を見つけなんとかそこから迂回をして班長達に合流しようと決めた。

 

 しかし移動しているうちに日本では見たことのない植物が生えていたり未知の物体を見つけたりしたので二人は薄々ここは自分達の知っている演習場ではないと感じ始めていた。

 

 ───

 

 「おい、須賀こいつを見ろよひんやりしてて気持ちいいぞ」

 

 そう言って久我は山の中に落ちていた少し透明な緑色の丸い形をしたゼリー状の物体を片手で持ち上げ顔に当てている。

 

 「お前はバカか、そんな何の病気持ってるかわかんねぇ物を顔に当ててんじゃねえよ!」

 

 「そんなことを言ってもよぉ暑いんだよ、けどこいつを見てたら何か涼しそうでさ、てか実際ひんやりしてるし」

 

 「ちっ、どうなっても知らねえからな」

 

 ったくここはどうなってるんだ? さっきの久我のバカが拾った物といい襲って来た虫といい何だか異常だ。

 

 さっきのから歩いていて分かったがここは地図にはない地形だ、しかも行く途中で見たことのない大きさの葉っぱをした植物やカラフルで綺麗な鳥等が生息していて日本ではない環境の山だ。

 

 どちらかというとアマゾン奥地のジャングルみたいな環境だ。

 

 「まずいな、完全に迷った」

 

 最悪の状況だ、せめてこの明るいうちに安全なところをみつけねぇと。

 

 「なあ須賀、ここは日本だと思うか?」

 

 「……わからねぇ、けど日本であってほしいな」

 

 俺達はその会話のあと何も話さずに黙々と周囲を警戒しながら歩いた。

 

 暫く歩くと樹木が少なくなってきてもうすぐジャングルが終わることを示していた。

 

 「当初の目的とは違うがこのまま行くか須賀?」

 

 「ああそうする、早くこのクソジャングルを抜け出したい」

 

 もはやここは俺達の知っている演習場でなおかつ日本ではないことを警戒しながらさらに詳しく観察して歩くことで理解してしまった。

 

 いったいどうして俺達はこんなクソみたいなジャングルに来てしまったんだ……畜生。

 

 俺は帰りたいと考えなかったしあえてその言葉を出さなかった、何故ならその言葉を発すると士気が下がり心がくじけると思ったからだ。

 

 「ん?」

 

 突然地面に僅かに道ができていた。

 

 「おい久我、道っぽいのが出てきた、何とかジャングルを抜けられそうだが油断するな」

 

 久我は俺の言葉に無言で頷くと銃を構える、久我の銃は落ちた衝撃で銃の先が曲がってしまい弾を発射できなくなってはいるが鈍器としては役にたつ。

 

 因みに久我は射撃は下手だが意外なことに銃を使った打撃が得意だ。

 

 そうして僅かな道を進んで行くと段々とハッキリとしてきて最後には石で舗装された道になる。

 

 道が舗装されているということは少なくとも人がいるってことか……ここが日本じゃないにしても少しはましになるか。

 

 道を更に進むと木がなくなりやがて高さ10メートルほどの大きな口を開けた洞窟が目の前に現れる。

 

 「何だこれでっかい洞窟だな、おい中に入って見ようぜ」

 

 「お前は何を言ってるんだ? 俺達は探検に来たんじゃねぇんだぞ?」

 

 「そんな固いこと言うなよ須賀、ここなら雨風を凌げて休むことができるだろう?」

 

 「まぁ、そうだな……仕方ねぇここで休むか」

 

 俺達は洞窟の中に入ることにした。

 

 「うわっ」

 

 洞窟の入り口に俺の背と同じ大きさで蛇がとぐろを巻いている形をあしらった石の彫刻が置かれていた。

 

 彫刻は苔が生えていることから長い間そこに存在しているようだ。

 

 気味が悪かったが勇気を出して少し行くとすぐに洞窟の広い空間に出る、この場所は入り口に近いこともあり太陽の光が差し込んで明るかったが空間のまん中に長方形の石の台が置かれていた。

 

 「あー何だその……ここはもしかしてヤバいところかもしれない、さっきからこいつもブルブル震えているし」


 そう言って久我は手の上でブルブル震えているジャングルで拾った透明な緑のゼリー状の物体を優しく擦る。


 震えてるってなんだよ、てかそのゼリー生きてるのか?


 「確かにヤバそうな所だが屋根があるだけましだ、それにここなら涼しくて休める」

 

 俺は地面に銃と背嚢をおろす。

 

 この場所は形的に生け贄の祭壇だ、だとしたら石の台の奥にある穴が化物の住みかかもしれない。


 俺はテレビ番組の歴史ドキュメンタリーで遺跡に生け贄を捧げた場所を放送していたのを見たことがありその光景と今いる場所がとても似ていることからそう予測した。


 けど入り口の近くにいて穴さえ見張って置けば何かあってもすぐ行動できて逃げれるだろう。

 

 「おい須賀、飯でも食おうぜ」

 

 「ああ、そうするか」


 背嚢から一つ缶詰めを取り出す。


 俺たちは余り飯を支給されていないのでこの一食が今日一日の食事だ。


 ……やっぱりな一日一食だけじゃきついな。


 「おい須賀、クガタケを焼いて食ってみないか?」


 「は? あのキノコを食うのか?」


 「ああ、俺は腹が減って仕方ないんだ、だから試しに食ってみようぜ」

 

 久我は服のポケットからライターと背嚢からクガタケを取り出す。


 俺は呆れて久我の行動を眺めた。


 「畜生、この珍しいキノコを失くすのは惜しいが生きる為にはしょうがねぇ!」


 だったら最初の虫に遭遇したときに捨てろよ。


 心の中で久我にツッコム。


 久我はライターでクガタケに火をつける、どうやら炙って食べる積もりのようだ。


 バァン。


 「うわっつ、痛っ、熱い!」


 クガタケは大きな音を立てて爆発した。


 クガタケは衝撃を与えると破裂するのは判っていたが火をつけると爆発するとは思わなかった、全くこのジャングルの物は分からないものが多い。

 

 「お、そういえばあいつがいたな」


 俺は防護マスクをあさる。


 「須賀はとうとうバディに手を出すのか?」


 須賀は手を火傷したようでゼリーを押し当てて冷やしている。


 防護マスクからバディ兼非常食のアオダイショウの蛇を取り出す、すると蛇は最後の抵抗なのか俺の腕に噛みついた。


 「痛ってえ、この野郎放せ!」


 無理やり引っ張ると蛇の牙が俺の腕に刺さったまま剥がれた。

 

 この野郎、○す。


 蛇は顔に俺の血と自分の血を着けて暴れていた。


 銃剣を抜き地面に蛇を押さえつけて捌こうとしたときだった。


 シュー、シュー。


 洞窟の奥から薄い霧が流れて同時に何かの音が聞こえてきた。


 「あー、須賀その非常食を逃がした方が良いかも」

 

 俺は現実離れした光景を見て固まる。


 「シャー……」

 

 俺たちの目の前に洞窟の天井まで届く大きさの大きな蛇が表れ威嚇した。

 

 

 

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