塔の少女
ヘリオスは、無事ユノを見つけています。
部屋の中央でユノは窓を眺めていた。
その窓の外の景色だけが、今の彼女にとって唯一の変化だった。
太陽が昇りくる時間。
その窓は、最初にその来訪を告げるものだった。
「これさえなければ……」
自ずと首に手を当てる。
そこには金の鎖で編んだ首輪があった。
悲嘆の表情を隠そうとせず、ただ窓の外を眺める。
「いっそこのままこの窓から落ちることができたなら……」
彼女はそっと窓に近づき、それを開けて体を突き出す。
その瞬間、外からの風で中に押し戻されていた。
そして窓は何事もなく、自らを閉めている。
「落ちることもできないのね……」
落下防止魔法がかけられた窓は、体を乗り出さなければ、普通の窓だ。
しまった窓から下を見ると、ところどころにあるかがり火がみてとれた。
「たかいわね……」
力なく、そうつぶやく彼女の瞳には、まだあきらめの色はなかった。
「大丈夫」
彼女はその胸のブローチに向けてそうつぶやいていた。
「大丈夫」
再び言い聞かせるようにその言葉を繰り返す。
その時、いつもよりも早い時間、その窓は明るい光の存在を告げていた。
「ながれぼし……」
思わず祈るようにその手を合わせ、目を瞑る。
彼女の祈りにこたえるかのように、スズランのブローチはその光をうけて輝いていた。
次回、ド派手な入国をしたアポロンは?




