後日談(卒業)
一応、ヘリオス君たちを卒業させておこうと思います。
そして、一ヵ月後。
俺は学士院の壇上にいた。
「今、卒業を前にして、思うことがいろいろあります。はじめに、この学士院に入学し、得難い友、敬愛する先輩、尊敬する先生方に出会えたことを誇りに思います。次に、王都でのいろいろな人との出会いに、感謝いたします。時に争うこともありました。時に助け合うこともありました。そうしたつながりが、今の僕を作っていると思います。人とのつながりが、自分の居場所を作ることになったのだと、強く認識しています。そのきっかけを作ってくれたこの学士院を誇りに思います」
そこで一度礼をした後、もう一度全ての人を見まわす。
「在学中、この世界に争いの種がまかれました。不幸にして命を落とされた方々がたくさんいらっしゃいました。今もなお、悲しみが世界を覆っています。それでも、僕たちは前を向いてあるいていきます。争いの中で生まれた子供たちのためにも、今、悲しみを背負った人が、次の子供たちにその悲しみを背負わせない世界を作るために。そのために、僕たちはこの学士院を卒業します。これまで、支えてくださったすべての存在に感謝をささげ、卒業の挨拶とさせていただきます」
湧き上がる歓声の中、俺を迎えてくれる笑顔のもとに向かう。
本当にいい出会いだったと、心の底から思えていた。
***
「卒業しても、おぬしは講師じゃからの。それに、世界はまだまだお主の力を必要としておるわ」
卒業の式典が終わり、学長室によばれていた。
ルナとシエルもついてくると言っていたが、デルバー先生に断られた。
今日は二人で話すことがあるらしい。
こうして今、デルバー先生と二人で紅茶を飲んでいる。
そう、まだこの世界の動乱は続いていた。
帝国では王弟カールハインツ・モラウディウス・アウレリウスが即位し、前皇帝の遺志を継ぐ宣言をしていた。
消え去ったメルツ王国では、王国復古を掲げた抵抗組織が展開されていた。
アプリル王国は、貴族連合と、新王派で内乱となっていた。
なんとかジュアン王国との戦争を回避したイエール共和国は、財政難に苦しんでいた。
そして、ジュアン王国は復興の途中だった。
唯一、他国の戦乱に巻き込まれていないアウグスト王国では、フリューリンク家が四大貴族と結託し、よからぬ動きを見せていた。
アウグスト王国でも、再び暗雲が立ち込めようとしていた。
「まあ、おぬしも若いんじゃ。まだまだ楽はできんということじゃな」
それでもデルバー先生の声は、どこまでも明るく前向きだった。
これで本当に完結です。
この後の物語もありますが、いったんきりがいいので完結とさせていただきます。
帝国の魔の手から、ホタルの森を守れるか?精霊王としての制約が、ヘリオス君を悩ませます。
そんな時、新たな勇者が?
いつか、そのお話を書きたいと思います。
その前に、マルスの物語。
デルバーとマルスの出会いの話とアイオロス秘話。シエル外伝。
やっぱりこれを書きたいと思います。
では、皆様。今まで読んでいただきありがとうございます。
現在2017年6月18日23時。無事ヘリオス君の物語完結しました。
ありがとうございました。
改稿物語、2017年12月30日22時。終了です。
そして、161話を現在作成中です。
続きの話は一応独立させるつもりです。
ただ、そのための短い物語です。