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夢の世界の中で僕は  作者: あきのななぐさ
決戦イングラム帝国
153/161

崩れ落ちる城塞で

いよいよ、皇帝との戦いが始まります。

「忌々しいやつだ。そうやって自分は何でも知っているような顔で現れる」

階下に現れたヘリオスを見おろす。

相変わらずのすまし顔。

しかし、その顔が気に食わない。


俺の威圧を受けながらも、平然としている。

普通の人間なら、心臓が止まっているほどの威圧だ。

しかし、奴はこれほどの圧力をうけても動じていない。


相変わらず、人を小ばかにしたような態度で話しかけてきた。


「あなたがこの世界を知りもせずに、自分の物差しで測り続けた報いでしょう。この世界には、この世界のやり方があるんです。あなたはそれを理解しなかった。いや、その前に理解しようとしなかった。そして、自分も理解されようと思わなかった。ただそれだけのことでしょう」

軽く頭を横に振り、ため息をつくヘリオス。


訳知り顔で、ため息だと?

お前に俺の何が分かる。

不遜極まりない態度だ。


「知ったような口を利くな、若造が! もはや、お前に対して一片の情もない。死ね」

この姿で放てる最大の力で剣を振るう。

龍の力で放たれた剣圧は、天守塔を切り裂き、奴の体を分断した。


はずだった……。


しかし、奴はその剣圧を避けたわけでもなく、受け流したわけでもなく、そこにただ立っていた。

天守塔も、奴の体から後ろの部分は全く切り裂かれてはいなかった。


「その程度の剣圧ですか……、英雄にはほど遠いですよ?」

信じがたいことに、奴は剣圧すべてを抑え込んでいた。


しかも、微動だにしていない。


「バカな……」

思わず漏れ出た心の言葉。

危うくその次を言うところだった。


「いえ、化け物はあなたです。シグルズを喰らった異世界人」

相変わらずのすまし顔。

しかし、その目はまっすぐに俺をとらえて離さない。


「さあ、こんなものではないでしょう? 早く攻撃しないと、僕から行きますよ?」

いちいち言う事が癪に障る。

挑発だとわかっているが、さっきの攻撃が効かなかった以上、仕方がない。


「それほどまでに、人をコケにするのであれば、その身で後悔するがいい」

封印しているシグルズの力を少し解放した。

突如として体中に力が沸き起こる。


それと共に、俺の体も変化していく。

背中には龍の翼が生えていた。

両手には鱗と爪が出来ている。


龍人形態の第一段階。

俺がそう呼んでいる姿へと変化した。


「この姿を見せた以上、お前は終わりだよ」

もはや人外の力。

そもそも奴も、あんななりだが人間ではない。

これでようやく対等というわけだ。


しかし、素晴らしい。


内側から、圧倒的な力が沸き起こっている。

今なおわき続けるこの力。

全く負ける気がしないというのはこの事だった。


自然と奴の力も読み取れた。

膨大な魔力マナはずいぶん低下しているように感じた。

それでも余りある魔力マナは脅威だったが、今の俺なら問題ないだろう。


奴の魔力マナは限りがあるが、俺の魔力マナはわき続ける。


「さあ、死んで、自分の愚かさを呪うがいい」

渾身のパンチが奴の顔面にさく裂した。

その瞬間、爽快感が全身を駆け抜けていく。


気持ちいいとは、まさにこの事。

何の躊躇もなく力を揮える。

恐らく、この世界に来て初めてのそう快感を得ていたに違いない。


しかし、徐々に異様な感触も伝わってきた。

まるで硬い岩に打ち付けたような感覚……。


「それではまだまだ、足りません。僕の障壁はたぶん悪魔王に匹敵しますからね」

余裕の表情で奴はそこに立っていた。


さっきのもそうだが、あれほどの一撃をよけもせず受けていただと?

それも、障壁によって防いだというのか。


だが、龍人形態だぞ?


信じられなかった。

もしかして、力の制御がうまくいってないのか?

ためしに天守塔の壁を軽く触ってみる。


軽く触っただけで、もろく崩れ去る天守塔の壁。

決して、俺自身の力が弱いわけではない。


「まあ、いずれパージ予定ですからいいですが、これ以上好きに壊されるのもたまりませんね」

何を言っている?

好き勝手に壊しているのはそっちだろう。

それに、これは帝国のもの。

皇帝たる俺がどうしようが、お前にとやかく言われる筋合いはない。


俺がそう言う前に、奴は片手を俺に向けていた。


その瞬間、言い知れない大きな力が俺を襲う。

とっさに両手を目の前で交差した。


気が付くと、天守塔の壁を通り越し、かなりの距離を吹き飛ばされていた。

倒壊していく天守塔が小さく見える。

仮の玉座ごと破壊して突き抜けたという事か?


しかし、奴はどこへ行った?


それもつかの間の思考だった。

すでに目の前には奴がいた。


「さあ、ここでやりましょう」

そう言いながらも、俺の背後を取ろうと移動していく。


「姑息な手だな」

まあ、それも仕方がない。

戦いにおいて有利な場所を取るというのも戦術だ。

好きにするがいいだろう。


しかし、その行動ではっきりとした。

奴は平然を装っている。


さっきのことにしても、恐らく何か秘密があるに違いない。

そうして今、少しでも有利な場所を取ろうとしているのが証拠だ。


余裕の笑みで見送った後、太陽を背にして立つ奴を眺める。


「しかし、そんなものは目くらましにならんぞ?」

その気になれば、今の俺の眼は魔力マナを見ることができる。

それだけ強大な魔力マナを持っているのだ、目を瞑っていても分かるというものだ。


「いえ、僕は力の制御も守ることもできますからね。でも、あなたは全力ださなければならないでしょうし」

この期に及んでも、その澄まし顔。

しかもその言葉の持つ意味に、余計に腹が立ってくる。


まったく忌々しい。

あの要塞を傷つけたくないだけだというのか?

自分ならそうできるけど、俺にはそれが無理だと?


しかも、奴が背にしているはるか先には、帝都がある。


「小賢しい」

今の姿では、たとえ全力を出したとしても、さすがに帝都までは届かない。

それでも守ってやるから全力でこいだと?


「これでは、どうだ? 龍王の息吹マキシマムドラゴンブレス

両手を龍の口に見立て、そこから、巨大なエネルギーを吐き出していた。


その力はただ一直線に、奴に襲い掛かっていくだけだ。

忌々しいことに、またも奴は、回避も防御もしていない。


龍王の息吹マキシマムドラゴンブレスは奴とぶつかり、大爆発を引き起こしていた。

巨大な熱気が上昇気流を生み、周囲に嵐を巻き起こしていた。


「だから、その程度ではだめなんですよ。おとなしく負けを認めて、早くシグルズを解放したらどうですか」

奴はため息をついていた。


まったく無傷。

あの爆発の中、奴は何事もなかったかのように浮かんでいた。


龍人形態の龍王の息吹マキシマムドラゴンブレスだぞ?


ジ・ブラルタルのミョルニルよりもはるかに威力は上のはずだ。

それでも、奴の障壁は超えられなかったというのか?


「化け物め……」

今度は素直に言えていた。

もはや人間ではないと確信する。

その外見にすっかりと騙されていた。


「ふふふ。その外見は油断を誘うためか、全く姑息な奴だ。いいだろう。それでは見せてやる。龍人形態の究極形。龍神形態だ」

さらに力を解放していく。

形態変化していく姿は、もはや人の形をほとんど残していない。


俺の顔は龍となり、手足はもちろん尻尾まで生えていた。

唯一人間の胴体は固いうろこでおおわれていた。


それは人間サイズの龍と言っても過言ではない。


「ふっ。ふはははは! みなぎる! みなぎるぞ! もう後悔しても遅い。この俺に、ここまでさせた報いを受けるがいい!」

俺自身、この形態になったのは初めてだ。

だから想像でしかなかったが、ここまでとは考えていなかった。


湧き出る力どころではない。

大海のごとく、力が満ち溢れている。


「はいはい。後悔しています。最初にあなたを瀕死にしておけばよかったと」

それでも奴は平然としていた。


バカなのか?

この力が読み取れない、バカなのか?


「ではくらえ。後悔する暇もなく、その存在を消してやろう」

俺は息を吸い、全力で吐き出した。


「あの世で悔め、自らの愚かさを! 殲滅の龍王(ホロコースト)


灼熱の火炎が奴の体を直撃した。

あまりの熱量に、周囲の空気が変質しながらも、上昇気流を生み出している。

はるか上空には黒雲が沸き起こり、その漆黒の口はなおも空気を取り込んでいる。

その爆発は、この世界そのものを震わせていた。

そして、まるでそれをふさぐかのように、黒雲が空を覆っていく。


すでに、衝突の衝撃と爆炎により生み出された煙のようなもので奴の姿は見えない。


しかし、これだけの力。

跡形もなく消え去っているはずだ。

黒煙にも似たそれは、やがてかけ上り、はるか上空で黒雲と交じり合っていく。

いまだ世界はその傷を隠しきれないようで、ますます黒雲が広がっていった。


そして世界は、この力を俺に出させたことを後悔しているかのように、懺悔の雨を降らせていた。


満足できる結果。

それは、何物にも代えがたい瞬間。


俺が一息ついたその刹那、黒煙を突き破る奴の姿が飛び込んできた。

目に見えることだけを見ていたため、魔力マナを見ることを忘れていた。


「後悔したので、軽く殴ります」

まるで散歩にでも行くかのような気軽さで、奴の声が聞こえてきた。

その瞬間、体の中から熱いものが喉に押し寄せてきた。


おもむろに下を見ると、奴の拳が俺の体に刺さっている。

龍の障壁を、龍の鱗をぶち破り、俺の体を貫いただと?



「かはっ」

もはやそれを押しとどめることはできず、俺は口から大量の血を吐き出す。

衝撃と痛みの中、意識ははっきりと自分の状態を告げてくる。


このままでは死ぬ。


そう悟った俺は、龍の治癒力を最大限に高めながら、奴を蹴り飛ばす。

難なくそれを避けた奴は、再び俺の前であの顔を見せていた。


なんとか傷は癒えたものの、衝撃はまだ、俺の心に深く突き刺さっていた。


「さあ、早く真なる姿になったらどうです。そしてあきらめて、シグルズを解放してください」

自分の手についた血を無造作に払いながら、奴がそう告げてきた。


もはや圧倒的過ぎるヘリオス君です。

皇帝はどうするのでしょう?


次は22時です。

改稿前の記載ですが、できればこの時間くらいに改稿できたらいいなと思います。

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