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夢の世界の中で僕は  作者: あきのななぐさ
決戦イングラム帝国
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人VS要塞 その2

ヘリオス君、要塞に攻撃です。

「ほら、ミミル。気を落とさずにしっかりつかまっててね。ホタルは温泉に避難しておいて。君の出番はあの要塞を落とした後だから、しっかりと休んでおいてね」

ホタルの頭に、優しくなでるように手を置いた。


ミミルはまだショックから冷めやらないようだった。


「うん」

元気いっぱいなホタルは、素直に俺の言うことを聞いて消えていく。


「ほら、撃ってきたから。ミミルも隠れて」

胸のポケットにミミルを優しくいれ、左から回り込んでくる要塞をじっくりと観察しておく。

獲物を追い込むかのような動きを見せる要塞。

ただ残念ながら、要塞一つだけでは何をしても無意味な戦術。

地上の戦術を、そのまま空中に持ち込んでも意味がない。


それでも、周囲に速射砲からの弾丸の雨が降り注いできた。


「いくら撃っても、無駄なんだけどね……。まあ、でも……。一応回避しますか!」

極低温の空気を解除して、俺はゆっくりと右に飛んで見せた。

何発かが、俺のすぐわきを通り過ぎ、ミミルの顔の前を通過していった。


「ちょっと! ミミルのことも少しは考えてよね!」

ようやくミミルが抗議の声を上げてきた。

ただ、まださっきのことを根に持っているようだった。


しかし、その最中にも弾丸は通過していく。


「ほら、顔を出さないの」

弾丸を見ながら、ゆっくりと回避しつづける。


「やっぱり、シルフィードの守りで十分だね。ありがとう、シルフィード」

俺が冷気を解除したのが分かったのだろう。

シルフィードが守りをかけてくれていた。


「じゃあ、あちらの攻撃性能を見ますか。主砲の充填までまだかかるだろうし、砲撃している人たちの心も折らないといけないしね」

言うが早いか、急上昇してみた。

やや遅れていたが、ちゃんと弾丸が昇ってくる。

撃ちやすいようにだろう、要塞も上昇してきた。


その瞬間をみて、急降下する。

遅れて、弾丸の雨が追いかけてくる。

急制動がきかないのだろう。

要塞はかなり遅れて下降し始めていた


要塞が下降するにつれて、側面の速射砲の死角ではなくなり、弾丸の数が増えていく。


それを待ってから右に急旋回し、しばらく右に飛んだあと、急降下、急上昇、左旋回、急上昇と自由自在に動き回ってみた。


その動きのすべてをとらえきれなかった速射砲の弾丸はいつしか来なくなっていた。

いつの間にか、要塞も動きを止めている。


「砲手の心も折れたかな? さあ、そろそろ来るだろう。シルフィード、合図の花火が上がったら頼んだよ」


シルフィードに向けて思念をおくった瞬間、要塞からミョルニルの雷が解き放たれた。

大気を焦がし、轟音をひきつれた雷が、俺を飲み込もうと迫ってくる。


その輝きの先端が届く刹那、無造作にそれを蹴りあげてみた。


きらめく閃光の軌跡を残し、さらなる上空へとかけ上る雷は、さながらあまかける龍のように天空へと駆け上がって行く。


「おお。さすがシルフィード。ちゃんと後の人のことまで考えているね」

雷を蹴り上げたと同時に、シルフィードの力がさく裂した。



大気の流れを制御して真空の刃を作り出し、要塞中央部と塔を完全に切り離していた。

切り離された塔自体には、幾重にも真空の刃が襲い掛かっている。

そして、空気の流れ操作して、要塞全体をあの地点の方まで押し出していた。

要塞自体は安定するように、要塞下部で空気の流れが渦巻いている。

シルフィードらしい、細やかな心遣いだった。


「よし、次はベリンダ。行こう!」

俺がそう告げた瞬間に、はるか上空から、大量の水が押し寄せてきた。


上空の水を集めたそれは、さながら瀑布のように塔を打ち付け、完全に塔を破壊していた。

そして、その水はその勢いのまま、地表に降り注ぎ、川のような流れを生み出していく。


「さすが、ベリンダ。丁寧な仕事だ」

ベリンダは一度砂漠に流れ出した水を噴出させて、要塞のバランスを整えていた。

しかも、破壊し残していた部分は、はるか上空の水を利用した超水圧のナイフでえぐり取っていた。


五基の塔のうち、左右の塔をそれぞれ失いつつも、シルフィードとベリンダの支えで何とかバランスを保った要塞を、巨大な闇がつつんでいく。


「ミヤ。いい子だから、全部はダメだよ」

俺が優しく注意すると、その闇は本来の目的のみを包み込んだ。


そして、闇が晴れた時、そこには何も残されてはいなかった。


「うん。いい子だね」

満足そうに頷くと、嬉しそうな感覚がもどってきた。


しかしなおも要塞は浮き続けている。

しかし、突如として無くしたものを求めるかのように、だんだん傾きながら、ゆっくりと降下し始めた。


その時、大地から炎の槍が、一つの塔を突き飛ばしていた。

片側を押し上げられる形で、高度を落とした要塞はほぼ目的地にたどり着いている。



「フレイ。ナイスだ!」

あでやかな仕上がりに、思わず拍手をしていた。


槍が突き抜けた後は、何物も存在しない空間となっていた。

槍の突き抜けた周囲はまったく燃えることはなく、ただくすぶりの煙を立ち上らせていた。



「さあ、ノルン。最後の仕上げだ。お姉さんとしてしっかりいいところ見せてね!」

それでもなんとか飛行する要塞の目の前には、あのオアシスが広がっていた。


「まかせとき!」

ノルンがそう宣言した時、天空から巨大な光の槍が現れていた。


「これが、グングニルやで、威力は、極小でいくわな!」

ノルンはそれを最後の塔めがけて投げおろしていた。


光の槍は途中で小さくなっていたが、狙いをたがわず、残った塔に突き刺さていく。

そして、その勢いのまま、要塞を地面に縫い付けていた。


砂煙があたりに充満していた。


ほとんど落下していたとはいえ、十メートルほどの落下の衝撃だ。

打ち付けられた塔は、もちろん跡形もない。

しかも外壁など、あとからつけられた構造物はその姿を維持できずに、すべて剥がれ落ちていた。


そして、天守塔のすぐ横の広場に、巨大な球形の構造物が出現していた。

それはさっきまで、神殿があった場所だった。



「よし、見えた。行くよ、ホタル」

そこに移動したあと、手をかざして合言葉を唱える。

久しぶりの訪問者を迎えることがうれしいのか、球形の構造物が震えだしていた。


しかし、それも一瞬。


瞬く間に光がそこからあふれだし、周囲はまぶしい光に覆われていく。

あたりが静寂を取り戻そうとする中、あふれ出した光が俺たちを中へと誘っていた。


次は8時です

無事、着地成功です。

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