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夢の世界の中で僕は  作者: あきのななぐさ
決戦イングラム帝国
143/161

要塞VS人 その1

いよいよ最終局面になります。

短い話が続きますので、よろしくお願いします。

「皇帝陛下、あえてもう一度お尋ねするのですねぇ。本当によろしいのですねぇ……」

珍しく遠慮がちな物言いだった。


「くどい」

即座に意見を切り捨てる。


「……。では、キャンディ。勅命ですねぇ。やるのですねぇ」

「はっ。やるであります!」

気乗りのしない命令と気合の入った返事。

それでも息はぴったりだった。


「要塞砲一番から十番充填」

「要塞砲十一番から二十番充填完了。行けます」

「主砲、臨界まであと少しかかります」

「目標、射程まであと少し」

「誤差修正プラスマイナス十、精度上昇のため、速度修正を求む」

「速度調整、確認」

「主砲、臨界に達しました。誤差修正に入ります」

「目標、最大射程圏内に入りました」


次々と気合の入った報告がえってきた。

明確な目標を与えられた、優秀な軍人の行動だった。


「移動停止、誤差修正いそぐですねぇ」

「目標を映像で確認。出ます」


砂漠の中で、優雅に紅茶を飲む可憐な姿の少女がいた。

そこにいるのが不釣り合いで、場違いもいいところだ。



「おお……」

誰かがあげた感嘆の声に、サルマカクが少し顔をこちらに向けようとしていた。

しかし、そこは奴も司令官。

それ以上の動きはしなかった。



天幕の上部分だけをほんの少しだけのこして、日よけとしている。

そして、自分を中心とした同心円を、いくつも砂の上に書いていた。


それはまさに、ここが的であるかのように描かれたものだった。


「ヘリオス……。どこまでも……」

忌々しいやつだ……。

しかも、思わず場所を忘れるところだった。


俺は皇帝なのだ。

このような安い挑発に乗るわけにはいかない。


「なかなかどうして、これは、お前たちの腕が試されているぞ。あの的にどの程度正確に当てられるかだ。この俺を満足させてみろ」

士気を高めるために利用させてもらうとしよう。


「うーん。なにやらにおうのですねぇ。陛下。一番から十番までのあとに主砲と十一番から二十番の斉射ですが、一から二十番の斉射のすぐ後に主砲に変更してもいいですかねぇ」

サルマカクは何か感じているのか?

その鼻がひくひくと動いていた


「目的はなんだ?」

臭うというのは、感覚でしかない。

俺にその臭いはわからなかった。


この世界には、ある程度、特殊な人間は存在している。

そいつが言うことは、大体そいつにしかわからない。


「あー。臭いんです。プンプンするのですねぇ。あの、的のように見えるのが、的でないと思うのですねぇ」

やはりわからん。

しかし、言いたいことはわかった。


「結界だと言いたいのか?」

要塞砲は対魔結界を貫通する呪印を施している。

先にそれを当ててから、主砲を直撃させる気だな。


「そうかもしれないのですねぇ、でもそうでないかもしれないのですねぇ。それにしても、さすがは、陛下ですねぇ。それで、試すしかないのですねぇ。よろしいのですかねぇ?」

しかし、その口調、何とかならないものか。

感心されてもいい気分になれない。

しかし、一理ある。


「よし、それでいこう」

鷹揚に頷くと、サルマカクは待ってたかのように、命令し始めた。


「では、キャンディ。いくのですねぇ。一番から二十番まで一斉斉射のあと、すぐに主砲いくのですねぇ」

手を振りおろし、サルマカクは号令している。

それだけ見れば、有能な士官に感じるから不思議な気分だ。


「では、そのようにするであります!」

キャンディが素直に反応して、復唱していった。

そしてひときわ気合を込めて、宣言した。


「一番から二十番、要塞砲。斉射。てー!」

キャンディの号令で要塞砲が火を噴いた。

キャンディはタイミングをサルマカクにゆだねているようだった。


サルマカクが無言で頷く。


「要塞主砲、ミョルニル、発射!」

キャンディの声をかき消すような轟音が轟いている。


それは、光の束をまとめたような雷だった。

巨大な雷の柱が、光の軌跡を描きつつ、ヘリオスめがけて襲い掛かっていた。


先手、帝国城塞砲撃

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