草木皆兵(アプリル王国)
場面はアプリル王国、王城です。
「王よ、やはりローランは裏切ったとしか思えませんぞ。これなるガローナが、すべてを見てきました」
大臣は一人の女を連れてきていた。
妖艶な女は、謁見の間において、場違いな感じだった。
しかし、大臣が連れてきた以上、誰も文句は言えなかった。
普段なら真っ先に何か言うであろうマルシルも、ここ数日姿を見せていないようだった。
「そちは、何を見た。ブランカンの話では、そちの見聞きしたものが重要な意味を持つようじゃが、その方から申してみよ」
王は直答を許していた。
「はい、私は隊商を組んで国々を渡る商人です。この国では特にお世話になっております。そのためある程度、色々な国の情報を集めてはお知らせしておりました。最近、私の部下がアウグスト王国での重要な噂を知らせてきたので、ブランカン大臣様にお届けしました」
ガローナは下を向いたまま答えていた。
「ガローナ。その先も申してみよ」
ブランカン大臣は期待を込めた眼差しで見つめている。
「はい。その噂というのは、英雄ローランが民衆を扇動して国外に出しているのには、かなり以前から計画されていたということです。国力をおとして、国を奪い、安定したら呼び戻す。そんな計画のようです。実際にノイモーント伯爵の領地では街が誕生しており、大した混乱もありませんでした」
ガローナはその様子を記録した魔道具をブランカンに渡していた。
「王よ、一万人以上も移住して、その移住が速やかに完了するなど考えられないことです」
ブランカンは、王にその映像を見せていた。
映像はどこかわからない街全体と、移動する人だけだった。
しかし、その街並みはすぐに作れるものではなく、周到に準備されたものだとわかった。
「デュランダルよ、よもや文句はあるまいな」
王はデュランダル将軍を厳しい目で見つめている。
その視線を受け、将軍は柄に手を置き、恭しく頭を下げていた。
「バリガンエ、デュランダル両名に言い渡す。国内外の敵を屠れ」
ガヌロン王は高らかに宣言していた。
ガヌロン王はついに英雄ローランを敵と認識してしまいました。




