陰謀2
幕間的なお話
少し時間をさかのぼります。時間的には「怒りの暴君」の頃の話となります。
「やはり道化は帝国の手のものか」
うす暗い部屋の中、男の顔が不気味に浮かび上がっていた。
「ええ、そうだったわ。こちらの駒と衝突するかと思ったけど、向こうの方が上手みたいね」
妖艶な女は唇をなめていた。
「そうか……。それで、奴は動きそうか?」
男はそう尋ねていた。何かを期待するようなそういう口調だった。
「ええ、大丈夫よ。私の力でたきつけているから、それに、あの男は王家には逆らえない。そういう力ですもの」
妖艶な女は満足そうな笑みを浮かべていた。
「そうか……たのしみだな。英雄は一度窮地に立たされなければ、真の力は得られまい。まして、あの剣は魂を食らえば食らうほど、その力を増す。それに……」
男はそこで言い淀んでいた。
「まあ、よかろう。少し予定とは違うが、あそこはつぶしあいでいい」
男はため息をつきながら、そうつぶやいていた。
「そう。じゃあいくわ」
妖艶な女は、肩をすくめながら、部屋を後にしていた。
「じゃあ、こっちもいくわね」
可憐な少女は、にこやかに宣言していた。
「ああ、馬鹿は馬鹿なりに考えているな。だが、果たしてうまくいくのか。ではせいぜい見せてもらうとするか、獣の知恵とやらを」
男の声はあざけるようであった。
部屋は男一人になっていた。
男はしばし沈黙し、虚空をにらんでいた。
「まさかな……」
男は何かを思い、そしてそれを否定していた。
しかしそれは男の中で消化しきれないようで、いつまでも男は難しい顔を続けていた。
もう誰と話しているのかバレバレですが、妖艶な女はこれから出る予定です。