精霊たち8
元記念すべき100話目です。
今日も精霊たちはお話しています。活動報告にも書きましたが、場所はヘリオス温泉のジャグジー風呂です。ここには12個、個人用としておいてます。円形においているので、話しながら入りやすいところです。
それぞれ決まった場所があり、時計で考えると、0時の位置にノルンがいて、3時にシルフィード。6時にベリンダ。9時にミヤがいます。フレイは10時、ミミルは11時でホタルは1時です。エウリュディケは2時の位置に入りました。
たまに来るダプネは7時と決まっています。4時と5時と7時は今のところ誰も使っていません。
「本当にここは気持ちがいいですね。私なんかが来てもよかったんでしょうか」
エウリュディケは申し訳なさそうにいってるけど、顔は正直によろこんどるわ。
「かまへんよ。ヘリオスがええてゆうたんやし。それに、あんたはホタルの教育係やしな」
今更何言うてんねんって感じやわ。
あんたヘリオス相手にえらい剣幕やったやん。
「でも、ここはすごいですね。ここに来だしてから、ホタルもずいぶん大きくなった気がします。それに、なんか私まで、なんだか成長した気分です」
エウリュディケはホタルの体をしげしげと眺めとる。
小さかったホタルは、今やミヤよりも少し小さいくらいになっとった。
おそらくヘリオスの腰くらいまで成長しとるんちゃうやろか。
「それって、この場所が関係しているのかな? それともヘリオスの影響なのかな?」
ベリンダが会話に参加してきた。
「うーん。わからんけど、関係はあるんとちゃうかな?」
別に、そんなんどっちでもええやん。
どっちもヘリオスが関係してるんやし。
ベリンダはちょっと色々考えすぎやで。
とりあえず、ヘリオスの影響でええんとちゃうかな。
「そう言えばさ、ユノまで精霊使いになったよ。あれってやっぱりヘリオス君のせいなのかな?」
シルフィードまで、それもヘリオスの影響しか考えられんやろ。
「んー。まったく影響ないわけじゃないかもね」
どっちでもええやんか。
ていうか、ヘリオスの影響以外考えられんのと違うんか?
「ちょっとノルン。ミミル的に気になるんですけど! ちゃんと答えようよ」
ウチはあんたの質問に答えなあかんのか?
ちょっとミミルのいい方に腹が立った。
「あー、あのな。ウチかてわからんこと多いんよ? というか、ミミル。あんたの記憶からそれらしいもの考えるのがアンタの意義ちゃうの?」
そんなんあるわけないけど、そう言うたらミミルは思い出そうと必死になるやろな。
「そっか! うん。ミミルえらいもんね」
案の定、ミミルは考え出してるけど、そんなん見つかるわけないやん……。
やっぱりミミルはおもろいわ。
でも、そんなに唸るくらい考えんでもええやんか……。
どんだけ必死なん、あんた……。
「あーミミル。わるいけど、わからへんと思う。過去にそんなこと女王したことないやろ。いくらミミルがすごくても、女王がしてないことまでは無理だと思うで」
しゃーない。
ええ加減、かわいそなってきたわ……。
「やっぱり? ミミルもなんだか分かんなかったし。ありがと。ノルン」
まあ、あんたがそれでええんやったら、ええけどな……。
でも、ベリンダの顔見てみ。
あんたの事、かわいそうな子を見るみたいに見てるで……。
「まあ、実際ユノが精霊使いになったのは、ヘリオスの影響やろね。あれだけ間近で接してたら、そら、認識も変わるで。あの二人もそうだし。たぶん、遅かれ早かれ、あそこに来ている連中は、みんな精霊使いになるやろね」
たぶん、そうなる。
遅いか早いかの違いや。
精霊王の存在を、あれだけ間近で感じてるんやで。
精霊に対しての認識の仕方まで教えてるんやから、わからん方がおかしいって。
「あと、ホタルが大きくなったのは、ホタルがそう望んだからやね。存在力が大きくなって、それに呼応した結果やと思う。エウリュディケもそう。でも、あんたの場合、小さくもなれるで。ウチみたいに子供の姿に変化することもできる。ヘリオスは、大人の女苦手みたいだから、あんたも考えた方がええよ」
もうウチの考えてることだけは伝えとくわ。
あれこれ言われてもかなわんし……。
「ふーん」
生返事のミミル。
こんな時のミミルは、大抵ろくなことがない。
「そう言えば、王はここには来られないのですか? 少しご相談があるのですが」
エウリュディケはウチに聞いてきた。
そんなん、考えたらわかるやん。
思わずそう言いそうになったわ……。
「あんたな、ヘリオスがここに来ると思う? そら、ウチは大歓迎や。でも絶対こうへんで。温泉やなかったら来るかもしれへんけどな……」
そういう所は堅物なんやで……。
「ミヤは来てほしい……」
そうやって、しおらしく言うたら可愛げあるけど、それが通じるのはヘリオスだけや。
「あんた、夜こっそりヘリオスの隣で寝てるのに、またそういうこと……」
ホンマに困った子やで……。
「ほたるも、お父さんと寝たい……」
ミヤの言葉にホタルが反応してきた。
ホタルは自由に、外の世界では移動できへん
ドライアドは特殊な精霊。
本体である木があの森にいる以上、それはどないもできん。
かろうじて、この温泉を介して、ヘリオスのそばにはおれるけど、それをすると、ホタルにとって著しい消耗になっとる。
この温泉の中やったら、そんなことは無いけど、外の世界は自由にならへん。
そこがウチらと違う点やった。
何やこう、気まずい空気が流れとる……。
「せやな、あんたのためにも、ヘリオスには来てもらわんとあかんか……」
ヘリオスが、温泉に来てくれたら、全て解決やんか。
「それもそうだけど、ヒアキントスはどうするの? 男湯つくるの?」
ベリンダは以前から問題になっている男湯について尋ねてきた。
「そうやね……砂風呂だけではかわいそうか……。でも、男湯認めたら、ヘリオスはヒアキントスとそこに行くと思うで、みんなはそれでええんか?」
何もウチは意地悪してるわけやないで。
みんなの事思って、やってるんやからな。
「それは……」
やっぱり、シルフィードは口ごもっている。
まあ、ヒアキントスがかわいそうとでも思ってんねやろうな。
あんたらしいわ……。
「イヤ」
ミヤははっきり拒絶した。
ホンマ気持ちいいぐらいやで、それ……。
「うーん。ダプネには悪いけど、ちょっと」
ベリンダは申し訳なさそうな顔をしていた。
まあ、ダプネもたぶん嫌がるやろうけどな……。
「ほら、やっぱり。ウチはたぶんそうやと思って知らんふり決めこんだんやけどな。ヒアキントスもまあ砂風呂でよろこんどるから、まあ、ええやろ」
ヒアキントスが砂風呂で喜んだんは意外やったけど、まあ本人がええ言うねんからええやんな。
「ほたる。お父さんと入りたい……」
目を潤ませて、ウチを見上げとる……。
ホタルにそんな顔されたら、ウチも考えなあかんな……。
それにしても、お父さんか……。
ヘリオスもすっかりその呼び名受け入れたみたいやし、精霊女王を母様とベリンダもよんどったから、それはそれでありかもな。
お父さん……。
娘……。
「せや、家族温泉ちゅうのがあるらしいな。これしかないわ。ホタル。その願い。ウチが何とかして見せるわ。その代り、ウチのいうことも聞くんやで」
ふふふ、ウチ、ええこと思いついたわ。
これでヘリオスも文句言えへん。
「ノルン。あんまりバカなことすると、またヘリオス君に怒られるよ」
シルフィードがあきれた声で忠告してきた。
でも、大丈夫や。
「大丈夫、大丈夫。みんな笑顔にしたる。ウチに任しとき」
この作戦やったら、きっと大丈夫や。
***
「却下」
ヘリオスは即答してきよった。
「なんでなん、ホタルがかわいそうやんか」
ホタルにはこの際、うんと活躍してもらわなな。
「ホタルはヘリオスに会いたいんやで。あのこ、あそこでしか会われへんやろ……。ウチかわいそうでな……」
ここや。
泣き落としや。
ヘリオスはこういうのに弱いんや。
「わかったよ。ノルン。でも、本音は?」
あれ?
なんやの、その笑顔……。
なんやの?
いきなり両肩もたれたら、ちょっと照れるわ……。
でも、そんな雰囲気ちゃうわな……。
「ヘリオス? 痛いよ? ほら、ウチはホタルのこと……痛いって」
なんか、ちょっと力入れすぎちゃうかな……。
だいたい、その笑顔、ちょっと怖いんやけど……。
「ノ・ル・ン?」
ますます、怖いで、ヘリオス……。
「わかった。わかったって。ホンマはな。ウチも一緒に入りたかったんや……。もう、なんか最近ウチの扱いひどくない?」
痛いって、ほんまにもう……。
怖いって、ほんまにもう……。
「そうかな? ノルンが無茶言わなければ、僕はノルンの味方だよ?」
ヘリオスは笑顔や。
でも、その笑顔は、見た無い笑顔や……。
「その笑顔、怒ってるん?」
手を離してくれても、まだ、肩痛いで……。
あんた結構な力こめてたやんな……。
そんなに怒ることないやんか……。
「いいやノルン。僕はホタルをだしに使ったことなんか怒ってないよ。これっぽちも。全然」
ヘリオスは笑顔が、さっきに戻っている。
ていうか、あんた笑顔の使い方まちごうてるで……。
「やっぱり、怒ってるやんか」
その視線が痛いわ。
両腕で防げるもんなら、防ぎたい。
とりあえず、やってみたけど……。
防げるもんちゃうわ!って、あれ?
なんか、防げた気がする……。
「まあ、ノルンの提案は却下だけど、実際そのことは僕もどうにかしようと思ってたんだ。ヒアキントスのこともあるしね」
ヘリオスはさっきまでとうって変わり、いつもの優しい雰囲気に変わっとった。
「具体的には?」
おっ、これいい流れやん。
「こういうのを用意したんだ。これは水着といって、まあこれを着たまま温泉に入るんだけど、例のジャグジー以外はこれを着用するということでどうかな? これ、見本ね。正直、僕もそんな知ってるわけじゃないけど、こんな感じのものが多かったかな? これだとミミルもタオル巻き忘れることもないだろうしね……」
ヘリオスは少しうんざりしたようやった。
「まあ、三回に一回は忘れるからね……。見なれた?」
ホンマあの子は、あきれるで……。
「いや、最近は頭の上に出現するから、見てないよ。ただ、重みでわかるからね……。そのたびにタオル渡しているから、いっそのこと頭の上にタオル置き場を作ろうかと思ったよ」
ヘリオスの疲れた顔。
あんた、本気やな、それ……。
「この水着は、あの場所では君たちの意志で色、形を変えれるよ。まあ、ミミルのは無理だけどね。こっちの素材もつかってるから。だから、ミミルだけは、こっちで手直しがいるんだ。それと、今後、このジャグジー以外はそれ着用しておいてね。そしたら、僕もヒアキントスとアポロンをつれていけるからさ」
さっきとは全然違う笑顔。
それやで、笑顔はそれ。
でも、そんなもん着るのは、なんやじゃまくさいな……。
でも、何とかしたる言うて、何ともできんかったって言うのはかっこ悪いし……。
この際、ヘリオスが来るって言うだけでもまあ進歩やんな……。
なんだかんだ言うても、あんたはウチらのこと大事にしてくれてる。
ウチの扱いはちょっと改善してもらわなあかんけど、まあ今回はウチも悪い。
それはわかっとるよ。
でも、やっぱりウチもやられっぱなしではおさまらへん。
感謝をこめてあんたが困ることしたるわ。
「わかった。ヘリオスが来ることがまず一番やな。みんなにも言っとくわ。それと水着、ありがと」
素早くヘリオスの頬に口づけをする。
想像した通り、ちょっと困った顔するヘリオス。
うん。なんか、すっきりした。
「じゃあ、いってくるわ」
ウチの言葉に、ヘリオスは笑顔で返してくれてた。
色々大変な時に、ありがと。
でも、そんな時でもウチらの事考えて、こうやって準備してくれてる。
ホンマ、あんたにあえてよかったわ。
まだ、大変なことがあるのはわかってるけど、いつかゆっくり温泉でおしゃべりしたいわ。
三食昼寝付。
あんたが言うてくれてんで。
だから、そうできるようにがんばろな、ヘリオス。
***
「じゃーん。というわけで、これをもらいました」
水着をそれぞれに配る。
みんな、何これ? って顔やな。
その気持ちは、十分わかるで。
ミミルの以外は、ただの布切れや。
でも、これがびっくりやったわ。
「私のもあるんですね。王は私のことなど気にかけていないと思ってました」
エウリュディケはそれをじっと見ながら感激していた。
この温泉に招待されるばかりでなく、一員としてみなされていることに感激しているようやった。
「まあ、あんたの場合、ホタルのこと頼んでるから、ヘリオスとしてはかなり大切におもっていると思うで」
それがヘリオスってもんやで。
シルフィードも笑顔で頷いてる。
でも、ほかの子は自分の布に興味津々の様やった。
ちょっとはエウリュディケの話、聞いたりな……。
まあ、ええわ。
説明したる。
「この布。水着という服だけど、これからは、温泉には、これを着たまま入ること。ここはどっちでもいいけど、ここ以外は着る。これがルール。そうしたら、他の温泉にはヒアキントスも入れるし、ヘリオスもアポロンもこれる。そして、ミミルは裸で飛ばされんで済む。という感じで、全部解決するわけや。しかも、これはウチらの好きな形、色に変化させることができる、優れもんやで」
どよめきが駆け抜けとる。
でも、具体的にどうすればええんかわからんようやな。
まあ、説明するより、やって見せるのが早いわな。
さっきこっそり試した感じやと、ウチにはこれがええ感じやった。
「装備する感じで、思い浮かべる」
一瞬にして、ビキニタイプの水着を着ることができた。
ホンマこれすごいわ。
「おおー」
どよめきが沸き起こっていた。
ヘリオスからもらった見本を渡すと、それを見ながら、それぞれ思い思いにその形と色を変化させて着とる。
みんなで色々と形や色を変えて、比べあってる。
エウリュディケもしっかり混じって笑いあってる。
フレイだけは鳥の姿のままで、なんかえらいご満悦な様子。
っていうか、あんたも鳥の姿以外もとれるやろ?
「ほんま、楽しそうやわ……」
フレイが首に巻いただけの姿を気に入ってるんは置いといたとしても、みんな楽しそうやった。
「何かをあきらめるのではなく、みんなが笑顔になれる方法か……。優しい理想やけど、そのなかに、あんたの笑顔ってはいってるんかいな……」
ホンマやったら、この光景をあんたは見ててもええはずや。
外の世界の事だって、そうや。
あんたは全部背負い込みすぎちゃうの?
「まあ、ウチがついとるから。あんたの笑顔、ウチが守るわ」
そうや、ウチが三食昼寝ヘリオス付きになるその日まで。
その時、疲れた感じのミミルが、ふらふらと飛んできた。
「ミミルだけ……。かわらない……」
顔をあげた途端、涙目で訴えてきた。
「あーごめん。ミミルのはあっちで作り直してもらいや。あんたのは向こうの素材が入ってるから無理なんやって。言うの忘れてたわ。ごめん、ごめん」
何度も何度も試したんやろな……。
「ノルンのばかー」
泣きながら消えていくミミル。
「いや、だから、ごめんて……」
アンタの笑顔守れなくてごめん。
でも、アンタまたウチが説明せんかったって言うつもりやろ……。
またヘリオスに怒られるやんか……。
ホンマ、勘弁してや……。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
水着に関しては、あえて描写は避けました。
そこはお好きな姿を描いてください。
一応草案はありますが、皆さんはどんな水着を着せてくれるのでしょう?
そういうのを教えてもらえるとうれしいですね。




