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EX STAGE9:舞い降りた太陽


 悪の因子と呼ばれる彼らが俺を殺そうとする理由は分かった。

 俺が死ねば、やつらを滅ぼせるものは居なくなる。

 つまりは、善は負け、悪の勝ち……ということだ。

 悪の勝ち……それは、向こう側にエンドと呼ばれる終わりを司る者がいる限り、世界を終わらせられてしまう可能性がデカイ。

 そして、終わらせてしまった場合、始まりを司る者の居ない世界は、永劫終わったままになるだろう。

 新たなことは起こらず、生物もなにもかも発生しない終わりの世界……。

 そんなこと、させるものか。

 「よし、ノクヤ……あいつらを倒しにいくか」

 「いや、その前に翔琉は体内にあるウイルスを除去しなくてはならない……でなければ、いつ病が起こるか分からないからな」

 ぎゅっと、俺の腕を力強く握るヨルヤに俺は逆らえなかった。

 まあ、致し方ないさ。

 自分の命がかかってるんだから、行動しなくてはいけないだろう。

 かつて始まりの神を殺したこのウイルスを殺す方法を考えることを。

 「翔琉、ウイルスを調べると言うことは、なにか施設的なものがあった方がいいよな?」

 「うーん、まあそうなるけど……今欲しいのは、医者かな」

 「医者?」

 「うんそう。少なくとも、俺一人でやるよりかは、医学知識を持ち合わせた人物……または、ウイルスに詳しい博学な人物がいてくれた方が捗る」

 「となると……癒しの泉にまずは行くべきだろうな」

 ヨルヤは策略しているかのように不気味にニヤリと笑った。癒しの泉にいるもの……それは、水の大魔導士リュウだ。

 世界魔法連合における、治療魔導士(ちりょうまどうし)たちを束ねる存在。

 そして、世界最高峰(せかいさいこうほう)治療魔法(ちりょうまほう)の使い手である彼女ならば……。

 だが、問題は彼女が「成り代わってない」ことを証明しなければならないことだ。

 もしも、彼女が「成り代わっていた」場合……下手をすると、治療と称して、俺のウイルスを強化する魔法を行使してくるかもしれない。

 その懸念だけが心配だ。

 

 

 【翔琉たちが癒しの泉へと向かうその頃……癒しの泉では……】

 

 癒しの泉。

 それは、世界最高峰の治療魔導士が集まる病院のある泉のことだ。

 代々、水の大魔導士はこの地を守護することを使命としていた。

 といっても、水の大魔導士はあたしを含めて、師匠である元大犯罪者【水の支配者】のミコトの二人だけしか経験していないから、なんとも言いがたいけど。

 そんな泉は現在、壊滅状態であるといえる。

 先の事件より、謎の黒い液体が他者へと成り代わることを突き止めたあたしは、この泉全域に直ぐ様、防御魔法(ぼうぎょまほう)識別魔法(しきべつまほう)を展開させ、訪れる者に対しての対策を万全に行っていた。

 だが、現在……ここは、黒い液体たちに占領されてしまっているのだ。

 「貴様らぁぁぁぁ‼」

 あたしは、水の魔法を使って必死に戦っている。

 だが、水の魔法というのは、不純物を身体に溜め込む性質がある。

 使いすぎてしまうと、自分の命に関わる場合もある。

 だけど、あたしは戦わなくてはいけない。

 この地を守るものとして。

 「うふふ……やりますね、小娘」

 そう言ってマントをなびかせている金髪の女。

 確か名前は【傲慢(プライド)】、とか名乗ってたな。

 「卑怯者め‼こんな雑兵ではなく、貴様が直接戦え‼」

 「あらあら……私様(わたくしさま)があなたごときに直接手を下すなど、勿体無さすぎるわ」

 「ふぅ……雑魚は決まってそういうのよね」

 「あらあら、ゴミ虫がなにかほざいてるわ……ほら、あんたたちさっさと殺ってしまいな……」

 黒い液体たちは、まるでトゲのような形の球体に変化して、あたしに向かって四方八方から襲いかかる。

 しかしながら、あたしの目はこの状況になれていた。

 というか、これよりももっと早いもので修行していた記憶があるせいか、止まって見えた。

 あの人との修行に比べれば……。

 「へぇ、かわすね。水の大魔導士。んじゃあ、お次は人質でいくかね」

 そう言って、傲慢は黒い液体に閉じ込めた病人を数人あたしの目の前へと運んできた。

 彼女が指をならすと、黒い液体の内部にトゲが発生し、病人の身体を貫くのだった。

 「やめろ‼」

 「ほらほら、水の大魔導士……隙できてるよ……」

 「しまっ……っ‼」

 グサリ、とトゲの球体が四方八方からあたしに刺さる。

 そのトゲには毒素があるのだろうか?

 身体に痺れがみられる。

 「水の大魔導士。案外あっけないね……」

 トゲが抜け、血が滴るあたしに傲慢はそう言った。

 でも、あたしは直ぐ様自身を治療させた。

 というか、その状態になっていたというのが正しいのだろう。

 「治療女王魔法(ちりょうじょおうまほう)……ねぇ……。それが、噂に名高い【青龍(せいりゅう)】の固有魔法か。死ななくなるだけの魔法……普通に聞いたら凄いよね。でも、残念。私様相手には、死んだ方がましって思える地獄を味合わせてやるよ……」

 そう言って傲慢は、泉が凍りつくほどの球体を出現させた。

 辺りにいた、黒い液体たちも凍るほどの球体。

 「これは、太陽の逆……光と熱を与えるのが太陽だとするならば、これは闇と氷を与えるもの……【太陰(たいいん)】。水の大魔導士よ……凍りつけ‼」

 そう言って傲慢は球体をあたしの方へと放った。

 太陰は、まるでまとわりつくかのように、足元に近づいてきた。

 その瞬間、あたしの足は凍りついた。

 氷つけられてしまえば、復活できなくなる。

 いくら、再生が強まっても、それが正常に動かなければ意味がないのだ。

 あたしは即座に自分の凍りついた足を切り落とした。

 そして、切り落とした直後に急いで太陰から離れた。

 直ぐ様足は治ったが、太陰の追撃は終わらなかった。

 次は腕に近づく。

 即座に凍るが、即座にあたしは腕を切り落とした。

 あたしの回復が終わる前に、太陰は別の腕に絡み付いた。

 じわじわと凍らされていき、胸より上以外は完全に凍結させられてしまった。

 「くっ……‼」

 「あはははは……水の大魔導士。私様よりも胸がデカイから気に入らないんたよね。んじゃ、太陰……その胸も凍らせて砕いちゃって……」

 まずい、胸が凍ると心臓が……。

 「くっ‼やめろ‼」

 「やめないよ……だから、地獄を味合わせてやるって言ったじゃん……」

 「いやぁぁぁぁ‼」

 「大丈夫、殺しはしないよ水の大魔導士。お前の力が無くなったときに、黒い液体に飲み込ませて、お前を成り代わらせてやるよ……うふふ」

 寒い‼寒い‼寒い‼寒い‼寒い‼

 冷たい‼冷たい‼冷たい‼冷たい‼冷たい‼

 嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ‼

 こんなところで、終わりたくない‼

 そう思っていたあたしだが、なんだか次第に意識が薄れて視界が暗くなっていく。

 やがて感覚が消え始めかけたころに、なぜかしら暖かいと思った。

 泉の上空から照らす日の光があたしを照らしていたのだろうか。

 いや、まて……この光は……。

 そう思ってあたしが目を開けると、そこにいた人物に涙が止まらなかった。

 もう二度と会えないと思っていた。

 記憶の世界で、偽りの世界で……あたしは彼に酷いことをした。

 大魔導士たちは、全員その事を悔いていた。

 もう少し干渉が早ければ、幸せな終わり方ができたかもしれない。

 でも、結果的に彼が選んでしまったのは最悪の結果……もう、その時はあたしたちにはなにもできなかった。

 でも、いざ偽りの世界での記憶が本体(オリジナル)であるあたしたちき還元されたとき、今のように泣いていた。

 でも、あのときの涙とは違う。

 これは、嬉しい涙なのだ。

 「お待たせ、リュウ。久しぶりだね?なのかな?」

 そう言って照れ臭そうに笑う彼……天野翔琉にあたしはこういった。

 「いいえ、久しぶりだね翔琉ちゃん……」

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