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EX STAGE7:無情な光

不定期な更新ですが、御愛読願います

 嫉妬は、逃げることをやめた。

 担いでいた暴食を空間の端へと投げ、戦闘体勢に変わる。

 「ヨルヤ殿、そして天野翔琉殿。余興はこれまで……魔法拒否者の真の実力を見せて差し上げましょう」

 そう言って嫉妬は、手に光を集約させて身に纏う。

 あの状態……まるで。

 「気付いたか?天野翔琉。私の本当に得意な魔法は記憶魔法(きおくまほう)。他者の思い出を覗き見て、そこから魔法を体現させる魔法……今のは、貴様の息子であった【ジンライ】の記憶から再現した天野翔琉の【光天神】だ‼」

 「ジンライの……‼」

 「貴様が一番よく知ってるいますよね?天野翔琉殿。この魔法は光を隷属させる魔法……つまり、光属性の魔法をなんでも放ち放題ってことなんですよ」

 「……」

 「どうしました?驚いてなにも言えないのですか?」

 「古い……」

 「はぁ?」

 「その魔法はもう古い……」

 「は!世迷い言を……」

 「試してみるかい?」

 「やれるものなら、やって……‼」

 嫉妬は獣のような超越した直感を持ち合わせていた。

 第六感とでも言うべきなのだろうか。

 だからこそ、死角から放たれた光の光線をかわす事が出来たのだ。

 「おぉ、これをかわすとは……」

 「な、なんて卑怯な……話に聞いていた男と全然違うではないか貴様」

 「え?なにが?」

 「なにがって……話に聞くところ、天野翔琉は誠実で、真っ直ぐで、正々堂々と……」

 「実験動物に正々堂々もくそもないよ。ほら、後ろ後ろ」

 と、俺が指差す方向に目を向ける嫉妬だったが、その言葉さえも虚構であることに気づいたのは、再び背後から放たれた光線をかわし終わった時だった。

 「貴様‼」

 「ふむ、反射能力は高いと……なるほど。それと、学習能力も高い……さて、次に試すのは……」

 「舐めるな‼光の魔法【神之憤怒】‼」

 神魔法光天神状態からの、光属性最強系魔法【神之憤怒】。

 圧倒的光の波動が空間を埋め尽くすほどの輝きを放って波状で放たれる。

 だが、残念ながら俺にはその魔法攻撃は効かないのだ。

 「絶対滅亡操作……」

 拒否により、消滅する光はまるで花火のようだった。

 夜の暗闇に生える、一輪の光の花。

 「さてと……じゃあ、次の検証の時間だな」

 「こ、今度は何を……」

 パチン、と俺が指を弾くと光の光線が槍の形状に変化して、無数に嫉妬へと襲いかかるのだ。

 嫉妬は、果敢にも光属性でガードする。

 光属性攻撃には光属性で対抗する。

 これは、属性の相性的なものからも、普通の策だろうなーと俺は思う。

 だから、また絶対滅亡操作で消しといてあげた。

 「き、貴様ぁぁぁ‼」

 嫉妬は叫ぶが、すぐにそれは苦痛の声へと変わる。

 グサリ、グサリ……どんどん、光の槍は刺さる。

 だけど、安心してほしい。

 死にはしない。

 この光の槍からは、殺傷能力は引いてある。

 まあ、引かなかったら普通に死ぬレベルの斬撃の攻撃なのだけど……。

 今は優しい程度に、刺さると傷は残らないけど、苦痛の記憶を呼び起こすようにしてあるよ。

 だから、身体は痛くないけど、精神には痛い。

 そんな仕様を目指してみました。

 「ぐ……ぐぁ……ぁ……」

 嫉妬は、よもや叫ぶほどの気力さえも失われ始める。

 声が次第に衰弱していく。

 これは少しまずいかな。

 「解除‼」と俺が言うと、光の槍は、文字通り光となって消えた。

 その場に倒れ、息を荒くし悶え苦しむ嫉妬は酷く魘されたような後みたいに、汗と涙がこぼれ落ちていた。

 「ふむ……精神的には脆い……っと。さてさて、次の検証は……」

 「鬼か‼貴様ぁぁぁ‼」

 瀕死になりながら、そう嫉妬は怒鳴った。

 けど、俺はきょとんともせずに、引き続き実験のことについて考えていた。

 「あくまでも、実験なのだから……まあ、そんなに怒鳴らないでよ」

 「命をなんだと思ってるんだ!!」

 「俺の前世、始まりの神ファーストを殺したくせに……」

 「……‼……。へぇ……」

 「??」

 急にニヤリ、と彼は笑った。

 そして、俺にめがけて、なにか投げつけた。

 BB弾みたいな、その球体は俺の方へ飛んでくると煙を放ち始めた。

 なんだこれ?

 「うっ……」

 突然、吐き気がし始めた。

 そして、酷く手足の痺れも……。

 なんだこれは。

 「翔琉‼」

 そう言ってヨルヤは俺の方へと駆け寄ってきた。

 小さくなってしまったわりに、力が凄く、倒れかけた俺をきちんと支えてくれている。

 「嫉妬‼貴様、何をした!!」

 「おやおやヨルヤ様。お忘れですか?その症状……」

 嫉妬は、ニヤリと不気味に言う。

 「はぁ……はぁ……ヨルヤ……熱い……寒い……痛い……悲しい……嬉しい……寂しい……憎い……」

 なんだこれは。

 感情が不安定すぎて、言いたいことが言えない。

 「そんな……翔琉まで、ファーストと同じ病に……」

 「それは、ファーストにしか効かないウイルスでな??邪悪様が自らの血液で作った【邪悪(じゃあく)因子(いんし)】。発病すれば、数日は持つまい……」

 う、このままだと……。

 ……なんてね。

 「へぇ……そういう、病なんだ」

 スッと俺は立ち上がる。

 それも、元気よく。

 「何故立てるのだ‼その病はかけられたとたんに、身体の神経を麻痺させ自立歩行不能にするのだぞ‼」

 「うん、お陰様で。もう、すっかり良くなったよ」

 「か、翔琉。もう、大丈夫なのか??」

 ヨルヤは心配そうに俺を見ているけど、大丈夫だよっと俺はヨルヤの頭を撫でた。

 「何故、貴様……」

 「光属性の魔法の特性忘れちゃったのかな?」

 「……‼【浄化の光】か……」

 「その浄化の光に、異常状態を完全に回復させる魔法を付加(エンチャント)させた。完全異常状態回復魔法(かんぜんいじょうじょうたいかいふくまほう)。名付けて【光癒治(こうゆち)】。回復させつつ異常状態を解除させる魔法だ」

 「ま、魔法だと??その程度で治せるものを作ったもので、あのファーストを殺せたわけがないだろ。あのウイルスには、魔法耐性などが付加(エンチャント)されているのだぞ‼」

 「ふむ、確かに……まあ、ファーストの場合は、対処が少し遅れてしまったのかもしれない。その考えに辿り着く前に、思考をウイルスによって奪われて……その結果、死んでしまったのだろうと思う。だけど、俺の本分は科学者……それを考えてふと思った。このウイルス……界面活性剤のように、包み込めないか……とね」

 「界面……」

 「活性剤……?なんだ、翔琉それは」

 嫉妬とヨルヤは理解できていなかった。

 まあ、当然か。

 知識としては、魔法ではなく化学なのだから。

 「簡単に言えば、汚れをはぎおとして包み込んじゃう……と言えばいいのかな?」

 「「??」」

 「まあ、とりあえず……、その効果を応用して自分の中のあるウイルスを取り囲んでいる……って感じかな。だから、ぶっちゃけたこと言えばまだウイルスは俺の体内に残っている」

 「へぇ……じゃあ、君の魔法が途切れた瞬間に……」

 「そうだね。俺は、ウイルスによって死ぬだろうね……」

 まあ死ぬ気はない。

 この戦闘が終わった後に、抗体を開発してやる。

界面活性剤について。

分子内に水と油になじみやすい部分を持つ物質の総称が界面活性剤なんですよね。

まあ、化学的な用語を使うと両親媒性分子と呼んだりします。 石鹸をはじめとする洗剤の主成分なんですよね。(Wikipediaより参照)

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