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EX STAGE5:成り代わり現象

『それは、唐突に始まった。

 最初の犠牲者は、始まりの塔を警備していたものたちだった。

 目撃者によれば、謎の黒い液体が彼らにかかったと思った瞬間、彼らは黒い液体に浸され行方をくらませた。だが、数時間程の後に彼らは姿を現す。

 あの黒い液体はなんだったのか……初めは誰もが気にしたが、全員が生きて帰ってきていることからスライム系統のイタズラなのでは?ということで、誰も気にしなくなっていった。

 しかしながら、着実と黒い液体は民衆を飲み込んでいき、そして彼らを解放していく。

 世界魔法連合総帥フルートは、事態が急変する前に……と、炎の大魔導士エンと地の大魔導士グラン、そして風の大魔導士トルネを事件の始まりである【始まりの塔】へと派遣させ内容を探ろうとした。だが、その判断は間違いだった。黒い液体はエンとグランそしてトルネを飲み込み、そして彼らを解放した。

 いつも通り……だと思っていた。

 だが、今回は違った。

 彼らが生還した途端、黒い液体に飲み込まれた者たちは瞳を赤め、世界魔法連合総本部【光神殿(フォトンキャッスル)】に押し掛け、本部にいた者たちを本部ごと黒い液体に浸してしまったのだ。

 それが、事件が大々的になった出来事だ。

 そして、世界魔法連合総本部にいた高名な魔導士たちは本部を占拠し、地上世界の治安は地に落ちた。

 幸いにも8人の大魔導士中、エンたちを除いた5人は無事であったが、総本部にいたフルートの行方は知れず……そして、残り2人の太古の魔導士たちもまた、行方を眩ませている。

 そして、神魔法の後継者ジンライは反乱軍(レジスタンス)を率いて、総本部奪還を目指している……と言うわけなんだ』

 「あれ?他の5人はなにやってるんだ?」

 『他の5人は、黒い液体の発生源の特定と、根源を探るために各々で各地に交代交代で飛び回ってる。基本的には反乱軍に参加しているけど、フルートたちの捜索もしながら……だから、難航しているってところだね』

 そう語り終えると、アマギはすっと姿を消した。

 恥ずかしがり屋なのは、変わらねーのな。

 「なるほどね……また、厄介なことになってるね……」

 大魔導士の中でもトップクラスの実力を誇るエンとグラン、そしてトルネが敵側であり、大戦力である3人の太古の大魔導士たちが全員行方不明。

 戦況は明らかに不利であることは言わなくても分かることである。

 「……だから、俺を呼び戻したのか?ヨルヤ」

 「前みたいにノクヤと呼んでくれ。いいや、それとこれとは同じだけど、違うんだ……」

 「どういうこと?」

 「翔琉の前世が始まりの天使ファーストってことはもう、知ってるよな?」

 「うん……まあ、そうらしいね」

 「単刀直入に言う。あの黒い液体は、始まりの天使の生まれ代わりである天野翔琉にしか倒せない……」

 「え??」

 どういうことなんだ。

 「始まりの天使……否、始まりの神ファーストの魂は邪を滅する力を宿している。それは、そこに存在するだけで邪を排除するレベルの超強力な力だった。黒い液体はその力に弱いってことがわかった。だからこそ、俺は翔琉を守るために誘拐したんだ」

 「ん??なんで、そうなる??」

 「まだ分からない??翔琉、ここ数日狙われてたんだよ??研究機関のメンバー全員、既に成り代わられてたことに気付いてなかったのかな?」

 「!!」

 「みーんな、翔琉の命を狙ってたんだぜ」

 それは衝撃的な事実だった。

 でもまあ、なんとなく……そんな気がしていた自分がいた。

 だって、最近通りで「黒」いなって思ったもん。

 しかし……。

 「でも、なんで俺の命を狙うんだ??」

 そこだけが、未だに腑に落ちない。

 なんで、俺なんかを狙うんだ??

 「うーん……詳しいことは、なんとも……。だけどまあ、要因として考えるのであればいくらでもでてくるってものさ。例えば、ファーストの生まれ変わりだったから。例えば、翔琉があの黒い液体にとって脅威となる力を持っているから……とかね」

 「でも、本当に俺にそんな力あるのか?」

 「試してみる??」

 「え??」

 ヨルヤは懐から、小さな小瓶を取り出す。

 その小瓶には、黒い蠢く液体が入れられてた。

 今にも瓶を突き破ろうと、左右上下に暴れまわっている。

 「はい、こちらが今回の目玉商品!!黒い液体でございます‼」

 「なぜ、ショッピングの人みたいな言い方を……」

 「そして、こちらの黒い液体を天野翔琉さんに近づけると……」

 と、ヨルヤが俺に小瓶を近づけた瞬間、黒い液体はまるで断末魔のような苦しい音をたてながら、みるみる浄化され、最後には小瓶の中は空っぽになってた。

 「ほらな?」

 と、ヨルヤは言う。

 俺は若干驚いていた。

 いや、だってこんなのって、吸血鬼が太陽に晒されたときみたいで……なんというか、言葉にできないくらいなんかもやもやとした気持ちになってしまったのだから。


 「……とまあ、とりあえず翔琉。地上に行ってみっか?」

 ヨルヤは唐突に満面の笑みでそう言った。

 だが、果たしてそれは……いいのか?

 「地上行ったら、危ないんじゃないの?」

 「まあ、危ないだろうね」

 やっぱり危ないんじゃねーかよ。

 「でも、任せろ……俺がお前を守ってやるから……」

 真っ直ぐな目でヨルヤはそう、俺に言うのだった。

 やだ、イケメン……。

 「でも、ヨルヤ……いや、ノクヤ。俺、魔法使えないよ?」

 「ん?なんで?」

 「いや、なんでって……そりゃあ、あの世界は俺の妄想だったってオチだったんだから、そりゃあ使えないでしょうに……って、ん??」

 あ、いや。

 違うのか。

 妄想ってオチだったけど、実際にこうしてヨルヤが目の前にいるのだから……。

 「使えるよ、魔法。ってか、翔琉。今の君は前世を意識した状態であるから、神魔法(かみまほう)創始天神(そうしてんしん)』が使えるはずだよ」

 「神魔法(かみまほう)神魔法(ゴッドマジック)じゃないんだな」

 「あー、そうそう。本来ならば、魔法(マジック)とは言わず魔法(まほう)と発音するのが正しいのさ」

 へぇ~。

 「んじゃまあ、ほら。試しに、魔法使ってみるか」

 そう言ってヨルヤは、徐に庭先に出る。

 え?今から?

 さすがにこの格好でやるのは、恥ずかしいんだけど……。

 「ほら、翔琉何してるの‼早く早く‼」

 と、ヨルヤは庭にでてくるように急かす。

 仕方なく俺は、このキグルミパジャマみたいな状態で庭へと出るのだった。

 「はいオッケー。んじゃあ、今から言うことを復唱してね」

 「わかった」

 「「我、始まりの者、その天使の力現出せよ……神魔法『創始天神』」」

 魔法が発動した途端、背中から白くて美しい翼が映えた。

 そして、天使の環とも言える、黄金の環も頭の上に浮かんでいた。

 何より、一番驚いているのは姿が変わっていたことだろう。

 この姿はまるで……。

 始まりの神ファーストそのもののようだった。

 「創始天神……その魔法は、自らの肉体を一時的に始まりの神ファーストへと変化させ、そしてファーストが扱える魔法全てを使えるようにする状態にする魔法だ」

 と、ヨルヤは言う。

 つまり、この魔法使用時は、俺の姿は始まりの神ファーストに変化してしまうってことなのか。

 「やべぇ、ファースト可愛い……(パシャパシャ)」

 「てめぇ、元嫁のキグルミパジャマ姿が見たくて俺を変身させたのかよ‼写真を撮るな写真を‼」

 相変わらずヨルヤはヨルヤだな……と思うのだった。

 


 「さてさて、んじゃ翔琉。そろそろ、地上世界へと行きたいところでしょ?」

 「そりゃ、心配だからね」

 行方不明になってる3人や、黒い液体に飲み込まれてしまったという3人……そして、残ってるみんなもきっと疲弊しきっていると思うんだ。

 ならば、早期解決してやる他ねーだろ。

 それに、黒い液体が俺の世界までも侵食していると考えると、今自分の世界に戻っても正直に言って安全とは言えないだろう。

 「お待ち下さい、ヨルヤ様」

 と、ヨルヤの腹心である記憶を司る悪魔マクスウェルはヨルヤのプライベートルームへと入ってきた。

 ヨルヤはギロリと睨み付けるが、マクスウェルは一歩も引かない。

 「ヨルヤ様。いけません。天野翔琉様ならまだしも、あなた様はその場にいるだけで他に影響を与えてしまう程の魔力の持ち主なのです。今、地上世界へとその状態でいかれては、地上世界の生物全てを殺してしまうことに他なりません。始まりの神ファーストの生まれ変わりである天野翔琉様だからこそ、こんなに近くにいてもなんの影響も受けていないだけであって、他の生物ではそうはいきませんよ」

 「大丈夫大丈夫。翔琉を肌身離さず装備しとけばいいだけだろ?」

 俺はアクセサリーじゃねーよ。

 「いいえ、それだけではダメです」

 だから、アクセサリーってとこ否定してくれ。

 「あなたには、力の一部を制御(セーブ)するための、道具をしていただきます」

 「ほう……そんな道具があったなんて」

 「始まりの神ファーストが作りし道具【付加王冠】より強力な【抑制腕輪(セービングブレスレット)】を……」

 といって、ヨルヤの一瞬の不意をついてマクスウェルはヨルヤに腕輪を嵌め込んだ。

 「へへん。こんな、腕輪ごときはめられたところで……あれ?」

 ガクン……と、ヨルヤは膝をつき、彼の身体から煙がもくもくと出始める。

 「その腕輪を装着した者は、魔力を制限され、更には肉体までも制限されるんですよ、ヨルヤ様」

 と、マクスウェルが言い終わる頃にはヨルヤの姿は幼い子供の姿になっていた。

 「嘘、これが俺……⁉」

 ぷにぷにっとした自分のほっぺをつねりながら、近くにあった鏡で自分の姿を見たヨルヤは軽く落ち込んでいた。

 「くそ……大人姿なら、地上で女遊びしようと思ってたのに……」

 「いや、戦争止めにいくんだよ俺ら……」

 目的が変わってるぞヨルヤ。

 こんな状態で、俺たちは地上へと向かったのだ。

 俺は着替えてからな‼

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