EX STAGE49:天野翔琉&天野狼牙vs暴食
【異空間:暴食の世界】
ここは暴食が奥で待ち構えてる世界。
なんというか、名前の通りの場所だなと思った。
というのも、辺り一面が食べ物だらけだからだ。
肉の草原、刺身の川に、サラダの山、デザートの湖……。
食べ物、食べ物、食べ物だらけの世界だ。
「うう……さすがにこれだけ食べ物があると、お腹すくな……」
「大丈夫かい?狼牙。 間違っても拾い食いはしちゃだめだからね」
「うう、分かってるよ……」
翔琉はおいらをたしなめるかのように言う。
でも、腹減るな~これは。
美味しそうな匂いもするし……後で翔琉の目を盗んで食べようかな。
「狼牙。 目を盗もうとしてもダメだからね」
「か、翔琉お兄ちゃん!! おいらの心を読んだのか?」
「やっぱり……いや、お前はそういうところやんちゃだからなーって記憶があったんだよ。 異世界ではとはいえ、お前とは数ヶ月一緒に暮らしてたんだからな」
「うう……そうでした……」
昔、とはいってもあの偽りの世界が終わる前まで、おいらは翔琉たちと一緒に暮らしていた時期がある。
学校に行ったり、買い物に行ったり、きれいな場所に行ったり……と、まあ悠々自適に生活をしていた。
翔琉お兄ちゃんはビックリするくらい家事が上手で、炊事掃除洗濯もろもろ完璧にこなしていた。
あと、おいらたちはよく学校をサボっていたから、怒られたっけ。
いやいや、今思えば翔琉お兄ちゃんだって学校の授業サボってた癖に何をいっちゃっちゃってんだか。
さて、そんな昔のことをフラッシュバックしてたが、おいらたちの前にはチョコレートの城が建っていた。
そしてその城より、チョコレートの騎士と、暴食が現れたのだ。
「やあやあ、皆さん……とはいっても、天野翔琉殿と天野狼牙殿だけですか。改めまして、ようこそ……我が異世界へ……」
暴食は徐に出したティーカップにミルクティーを注ぎ、それを飲んでいる。
勿体無いのは、ミルクティーを入れ終えたポットは後ろに放り投げて割ってしまったことだ。
熱々のミルクティーが、チョコレートの城の壁にぶつかり、若干溶けてしまっている。
やっぱり、あのチョコレートは本物なのか?
「さてさて……それじゃあ、高みの見物でもさせていただきましょうか」
暴食は、傍観する。
その瞬間、チョコレートの騎士はおいらたちに襲いかかってきた。
暴食はチョコレートの騎士に指示を出しおいらたちに攻撃を仕掛けてくるのだった。
チョコレートの騎士は、剣士だった。
おびただしい武器を持っているわけでもなく、最新鋭の剣を持っているのではなく、ごくごく普通の剣だった。
しかしながら、ごく普通の剣を名刀に変えてしまうようなスキルをやつは持っていた。
結論から言うと、達人は場所やものに左右されない……と言うことだ。
だからこそ、驚きをおいらは隠せなかった。
いくら霊体とはいえ、翔琉をこんなにも簡単に斬りつけられるほどの俊足と技術に。
「くっ……油断した」
「そんな……翔琉が……」
チョコレートの騎士は霊体状態の翔琉に負傷させた。
普通ならば霊体に攻撃など、不可能だ。
いや、魔法攻撃ならば可能だろうが、少なくとも物理攻撃は効かない。
空気をいくら殴っても大気にダメージを与えていないように……普通ならば、幻影となっているものを斬りつける技術などあり得ないことだ。
だが、それを難なくあのチョコレートの騎士はやってのけた。
そして、その騎士を操作する暴食は満身創痍だろう。
「はっはっ……威勢だけは良かったが、その程度か。 どうした?もう終わりか?」
だが、翔琉はその程度じゃ敗れない。
「勘違いするなよ、暴食。 その程度なんて言葉で物事を固定すると、痛い目をみるぜ」
「ふん、口数の減らぬ半獣風情が……」
「なにいってるの暴食。 狼牙は、俺の可愛い可愛い弟だぞ」
翔琉はそう言っておいらの頭を撫でた。
やばい、これ気持ちいい。
蘚琉も頭を撫でるのうまいけど、翔琉の方が数倍うまい。
どうやったら、ここまでの領域に達するんだよ。
「さて、暴食……そんなに反撃してほしいならしてあげるよ。 後悔するなよ」
「ふん、減らず口が……!!」
暴食は満身創痍だった。
そうだったのだ。
すでにこの文面は過去のものだ。
では、今はどうなのか。
今、暴食は冷や汗をかいている。
それはなぜか。
天野翔琉がおいらに光属性を付加し、そしておいらは自らの光属性を顕現させた。
それはすなわち、【聖】属性の発動を意味する。
「光属性を狼牙に付加。 さあ、狼牙。 見せてやりな……もとい、魅せてやりな。 その光の力をね」
「おうよ!!」
「ば、バカな……そ、その属性は始まりの神と、天野翔琉(完全体)じゃなければ使えないはず……」
「だから言ったでしょ暴食。 その程度だなんて言葉で括ると、良くないってさ」
おいらから放たれる聖属性の光は、周りの食べ物、そしてチョコレートの騎士をみるみる溶かしていく。
悪ものが作った空間なんて、絶対なる浄化の力を与える光属性、そして聖属性の前では無意味だ。
「私の世界が……」
「さあ、次はお前だ暴食」
「お、おのれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」
怒号のような強い声を浴びせ、暴食はおいらに向かってくる。
だが、おいらから放たれ続けている聖属性はより輝きを増し、その光は暴食の身体を貫き始める。
「や、やめ……」
「真光魔法:聖なる無限の光!!」
邪悪なるものから生まれた悪の因子暴食は、聖なる光を浴びせられ彼の物語は幕を閉じたのだった。




