EX STAGE40:仕組まれた物語
ノース文明の奥深く……。
天野翔琉との再会を喜びたかったおいらたちだが、圧倒的に理解不能の事態に陥っていた。
ノースクリフと呼ばれる、ノース文明の石碑。
解読不能とまで言われ、一説にはこの世を滅ぼすことが書かれているのかと言われていた文章。
だが、これは滅びの運命の書かれたものではなかったのだ。
このノース文明の遺産、ノースクリフはおいらたちが邪悪と敵対することが記され、邪悪の復活、悪の因子、成り代わり現象、天野翔琉の帰還と天野翔琉が肉体を奪われること……更にはこのあと、邪悪たちをおいらたちがどうやって倒すのかまで事細かに記されていたのだ。
「な……なんだよ、これ……」
「い、意味がわかんねーぞ……」
「か、翔琉ちゃん……これ……」
一同は答えを求めた。
しかしながら、恐らく答えを知る人物……天野翔琉は語らない。
「残念だけど……俺の口からは、その文章がなぜ存在しているのかは説明できない」
「な、なんでよ……」
「今は話せないけど、歴史はいつか語ってくれる……とだけ、言っておこうかな」
そう翔琉は言う。
昔から翔琉お兄ちゃんは、肝心なことは話さない。
それは、平等にかけるから……という理由もあるが、自分がそれを話してしまうことで他人の未来が変わってしまうかもしれないという恐怖もあるらしいのだ。
実際、お兄ちゃんは昔……とある数学者が何十年もかけて挑んだ数式を、ものの数分で解いてしまい、その学者は心を病んでしまったという。
その他にも多くの人助けと言う名の、助力を続けた結果、いつの間にか翔琉お兄ちゃんは、周囲から化け物を見るような目で見られ、省かれてしまったらしい。
要するに、いじめられたのだ。
故に翔琉は、しばらくの間心を閉ざしていたという過去があるが、それはまた違う物語だ。
「リュウ……ほら、ここの文を見てごらん」
と、翔琉は一文を指差す。
リュウは慌ててその文を見ると、目を見開き食い付くように視線を動かし文章を読んでいく。
「こ、これは……悪の因子を倒すための方法と、邪悪の血の解毒方法!?」
「そう……俺以外にはファーストしか倒すことができない、悪の因子や邪悪……そして邪ナモノの攻略法と、俺が先刻やられた、邪悪の血で作って呪いを解く方法だよ……全くといっていいほどに、ご都合主義なまでに詳しく詳しく書かれてしまっているけどね」
「……悪の因子は七つの大罪に起因し、各々が固有能力を持っている……しかしながら、この固有能力には7属性の力が関係しており、各属性の弱点属性で攻めることで打ち破ることは可能である……へぇ……」
「……そして、邪悪を打ち倒すためには、光属性と光属性を融合させ、【聖属性】にする必要がある。 この聖属性というのは、ノースの民が発見し秘匿とした属性で光の恩恵を与えられる者なら誰しもがその力を顕現させることが可能である……聖属性なんて確かに聞いたことないぞ」
「邪悪の血や唾液から産み出されし、呪いの産物たちを打ち破るには、聖属性の他に、回復魔法が有効である。 邪悪の力を異常状態解除や、状態回復系魔法で応戦しても無意味。 負の存在を消し去るには、癒しを与えるべし……そうね、今まであたしたちはやつらに攻撃魔法や、異常状態を治す魔法しかかけてこなかった……」
「また、悪の因子や邪悪に肉体を奪われた者を助けるには、聖属性の魔術【天空の月光】を対象者に発動すべし。 この魔法は、邪悪なる力を打ち払うと同時に対象者を回復させる魔法である。 ただし、この魔法が使えるのは恐らく日に1度が限度……魔力消費が激しい上に、魔力消費零の付加魔法を無効化してしまう特性があるので、注意されたし……天空の月光か……」
「最後に邪悪たちの居場所だが……彼らが向かう場所は、終焉を発動させる場所にして、全てが始まった場所である始まりの塔である。 以下、各悪の因子たちと邪悪の攻略法を記す……検討を祈る……」
残りしたの文章は全て、悪の因子と邪悪の戦闘方法や、弱点と誰が戦うのかが詳しく記されていた。
おいらはそれを見て、石碑というより、攻略本に近しいまでの横暴だと思ったのだった。




