EX STAGE37:逆襲の光
"異世界最強の魔導士、災厄の使徒と語られる男……天野翔琉。
彼は現在、この世界へと来ているが……彼は今、邪悪と呼ばれる者に身体を奪われかけていると言っていた。
だが、彼は現れた。
「ふぅ……保険かけといて、正解だったみたいだね」
そう言うと、翔琉は私のもとに舞い降りる。
ウラヌスは、警戒を怠らないが……なぜか、翔琉に耳元を撫でられると、聞いたことないような嬉しそうな声で鳴いた。
「はっ……我としたことが……」
と、ウラヌスは顔を真っ赤にしていた。
どうやら、相当気持ちよかったようで、尻尾をぶんぶん振り回している。
「安心して、俺はこの王女の味方だから……」
「遅いと言うか、何勝手に人の中に居たのよ、翔琉」
「いやぁ……申し訳無い。 神魔法と魔力消費零を付加させたとはいえ、どうにも悪の因子は油断できないからね。 まあ、君たちが逃げれる時間だけは稼げるだけの力は保険として君の魂に潜ませておいたのさ」
相変わらず、やっていることがチートすぎる。
他人の魂に、強敵から逃げるため自分を具現化させるための力を隠すだなんて、世界魔法連合の8人の大魔導士でさえ、そんなことは出来ないだろうに。
「さてさて、悪の因子の色欲くん……よくも、俺の友達を虐めてくれたね」
「お前こそ……なぜ、ここにいる。 お前の魂は既に邪悪様や他の悪の因子たちによって捕縛されたと聞く……」
「情報が甘いね……現に俺はここにいるよ」
「ふん……お前は、その王女に宿った残魂だろう‼」
色欲は、天野翔琉に向かって闇の波動を放つ。
だが、翔琉は手から光の波動を放ち、相殺させた。
「残魂でも、これほどの力がありますけど?」
「は!言ってくれるね……ドラグル、ウェル……王女ごと殺れ」
「「了解」」
操られた私の召喚獣たちは、翔琉に向かって攻撃を仕掛けようとする。
だが、獣たちは翔琉に襲いかかる刹那、その動きを止める。
「‼ どうした‼ 早く、殺るんだ‼」
「無駄だよ……色欲」
と、翔琉は色欲に微笑む。
色欲は理解できなかった……操っていた彼らがなぜその歩みを止めたのかを。
だが、私とウラヌスは見ていた……翔琉がドラグルとウェルに何をしたのかを。
天野翔琉は、彼らを撫でたのだ。
それも、私しか知らないはずの彼らが撫でられて嬉しく、そして無抵抗になってしまう場所を。
その結果、彼らは気持ち良すぎて動けなかったのだ。
「さあ、フィリ。 今だよ!」
「うん、強制送還‼」
すると、先程まで出来なかった強制送還ができ、ドラグルとウェルは消えた。
「ば、ばかな……俺ちんが操ってた獣を意図も簡単に戻しただと?」
「さあて、これでぼっちだね……色欲」
「あははは……いいや、まだそこにいるじゃん……ほら!!」
と、色欲から黒い霧のようなものが放たれ、ウラヌスに襲いかかろうとする。
けど、残念なことに霧は、天野翔琉によって防がれてしまう。
「ふむ……なるほどね。 この霧は、邪ナモノと同じ成分のものか……それを体内に取り込んだものは、悪の因子たちに操られるっと……いい実験材料だね」
そう言って翔琉は、地面に転がっていた小瓶を拾い上げ、その中に霧を閉じ込めた。
そして、氷魔法で瓶を凝結させ、中の霧を液体状に戻す。
翔琉は更に、その小瓶を私に向かって投げる。
私が無事キャッチしたことを確認してから「フィリ。 この瓶をリュウにあったら、渡しといてくれるかな?たぶんこれで、俺以外でも邪ナモノを簡単に浄化できる方法が分かるはず……」と言う。
「え、ああ……うん……」
私は懐にその瓶をいれる。
「さてさて……んじゃあ、フィリ……それから、ウラヌスくんかな……そろそろ、君たちは俺が指定した場所に向かってくれ」
「おや?逃げるの?逃がさないよ……」
色欲は邪悪な笑みを浮かべているが、翔琉は全くといって動じていない。
「悪いねフィリ……それから、ウラヌスくん。 俺が活動できる時間はもうそろそろ切れるんだ……」
そう言うと、翔琉の身体は消え始める。
「あはっはっ♪天野翔琉……そうか、そうだよな……お前はあくまでも邪悪様に捕らわれている身……よもや、力が入らないのだな……この勝負、俺ちんの勝ちだ……」
高笑いし、完全に勝利を確信した色欲は笑う。
だが、翔琉は最後まで諦めていなかった。
「いいかい、フィリ……今から君たちを例の場所に転移させる……本当は君の怪我や毒の治療をしてあげたいけど、もうその余力はないんだ。 だから、俺の仲間たちが来るまでどうにか耐え延びてくれ……ウラヌスくん。 頼んだよ」
「言われなくても……我が主を守るのは我が使命!」
「そしてフィリ……例の場所に着いたら、必ず俺を召喚してくれ……そこで、なぜその場に向かわせたのかを説明する……頼んだよ」
「わ、わかったわ…………」
「さて、色欲くん。 そろそろ、終幕にするとしようか……」
そう言って翔琉は自らの身体に光を集約させる。
その輝きは、太陽に匹敵するまでの光を帯始める。
「いいや、俺ちんはその攻撃を受けなくてもいい……なぜなら、その攻撃をかわせば、お前は力切れで消えてくれるのだからな……‼」
「はぁぁぁぁ‼集え、光たち‼」
翔琉の手には、先程まで集約させた光が球体となって存在していた。
そして、翔琉はその光を私たちに向けて放つ。
「転移魔法:光道宣迥‼」
光が私たちにぶつかると、私たちの身体は光に包まれ消え始める。
「な!しまった!」
色欲は慌てて、私たちの方へと向かうが時既に遅く、光の結界が張られた安全な空間内で私たちは例の場所へと転移させられていた。
怒った色欲は、消えかけた翔琉を捕まえて、その身を何度も何度もえぐる。
だが、翔琉は微笑み「ばーか」という台詞を色欲に与え、消え失せた。
そして私たちも、王国から無事に脱出でき、この地……ノース文明の遺跡のある忘れさられた森へとたどり着いた……と言うのが今回の物語だったんだ。"
そういい終えると、フィリは疲れたのか……再び眠り始めてしまうのだった。




