EX STAGE2:襲撃者たち
ある日のこと。
俺が、いつものように研究室で作業をしているときの事だった。
突然、研究施設内に非常アラームが鳴り響いた。
しかもこの警報は、レベル4……つまりは、異常事態宣言である。
「な、なにごとだ??」
と、俺は研究室のデスクのパソコンで、施設内の情報を仕入れる。
そこには、赤い文字で『テロリスト侵入』と表示されていた。
「テ、テロ……‼」
俺は急いで研究室にいた職員を避難させようとした。
それと、研究室にある研究データ関係は一時的に専用のクラウドに避難させ、その他以外はシュレッダーや、薬液で処分させた。
ここの研究機関にあるものは、絶対に兵器として応用されないように、このような処置をとれと、日頃から命令されているので、迅速に行えた。
「みなさん、薬品棚の後ろの通路から、避難を……」
という前に、既に年寄りから早々と逃げ始めていた。
高校生の少年残して、大人が早々に逃げるだなんて……この一件終わったら、この研究機関辞めてやる。
「ミスターアマノ‼ドコデスカ‼」
研究室の外から、前に会議に呼びに来てくれた人が呼んでいるのが聞こえた。
「あ、はい‼俺は……」
と、出ようとした瞬間、研究室の外から銃声が鳴り響いた。
そして、ドサッと何かが倒れる音がした。
俺は思わず、研究室のテーブルの下に身を屈めた。
部屋の入り口からは、赤い液体が、こちらへ流れ込んでいる。
どうやら、先程の人は殺されたのだ。
いや、それよりテロリストの侵入が予想より早い。
もうここまで……。
「早く俺も、薬品棚の後ろから逃げなきゃ……」
と、移動しようとしたとき、部屋の扉が勢いよく開かれたため、俺は再びテーブルの下に隠れた。
幸い、ここのテーブルの下には、配電盤を見るための通路があるので、俺はひとまずそこに身を隠すことにした。
しばらく清掃していなかったようで、埃だらけでくしゃみが出そうになるが、ひたすら我慢した。
今、くしゃみが出れば、上にいるテロリストに聞かれてしまうだろう。
「……。……‼」
「……‼……。」
なにやら、テロリストたちが言い合いをしている。
「……他の研究員は?」
「あぁ。さっき連絡入ってさ、全員殺したって」
嘘だろ……。
さっき、薬品棚から逃げた連中は……。
「全員??もしや、ターゲットまで殺してねぇだろうな……」
「それは大丈夫ですよ。こちらの情報では、博士はまだこの施設内のどこかにいるはずですよ」
博士……ってことは、誰かが目的でこの研究施設に侵入したってことか?
「早く見つけろよ。あの人は、全世界で唯一無二の存在……死なれでもしたら、困るだろ」
「ええ。分かってますよ。あの人の頭脳は我々と違うが、利用価値は有りますからね……」
やはり、誰かを拉致してなにかをさせるようだ。
「あー、もうどこにいるんだよ……‼」
と、上にいたテロリストの一人が地団駄を踏んだ……その結果、埃まみれのこの通路に、埃が舞う。
ま、まずい……。
「ハックション‼」
と、くしゃみをしてしまった。
その結果、奴等は気付いてしまったのだ。
俺が隠れていることに……。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
俺は通路を急いで這い出て、下のフロアへと降りて、急いである場所へと向かっていた。
全ての薬品がしまってある『薬品保管庫』だ。
あの部屋は、専用のキーと静脈承認システムがあり、防弾ガラスや対衝撃材で埋め尽くされている部屋であるので、この施設内でテロリストに襲われた際には隠れるにうってつけの場所だろう。
だが、怖いのが、あの部屋には劇薬も保管されている。
例えば、ニトログリセリンのように衝撃で爆発してしまうものや、強力な酸性の液体であるフッ酸なども……。
だが、俺は一応、あそこにある薬品をすべて把握している。
どんな事をしてはいけないのかも、理解している。
だから、あそこに辿り着ければ、逆にテロリストを迎撃することも可能だ。
「はぁ……はぁ……くそ‼なんで、こんなことに……」
普通に学校に行ければ、普通に学校に通っていれば……。
普通さえ、普通さえ守っていれば、こんなことにはならなかったのに。
走りながら俺は必死にどう生き抜くかというより、どうして普通じゃなかったのかと言うことを呪っていた。
普通がやはり一番だろう。
「えっと、この先を……」
左に曲がる……次は右……。
そして辿り着いた薬品保管庫で、俺がロックを外している時、銃声が再び鳴り響いた。
「ぐぅぅぅ……ぁぁぁぁぁぁ‼」
っと、俺は撃たれた左足を抑えた。
激しい痛みが、襲いかかるが、気力でどうにか最後のロックコードを打ち、手をかざし、最後のロックを解除して、急いで扉をくぐる。
そして、急いで扉をしめる。
外からは銃撃する音が聞こえるが、扉は頑丈でびくともしない。
「はぁ……はぁ……」
閉ざされた保管庫の中で、俺は消毒液として利用されるオキシドールという薬品を探し、白衣を一部破いて傷口に薬品を染み込ませた布を当てた。
貫通しているのが、まだ救いだが、もしも弾丸が残っていたなら、このあとピンセットなどで抜き出す作業をしなくてはいけなくて、もっと苦痛を味わったことだろう。
だが、まだ……。
「はぁ……。さて、どうするかな……」
ぎゅっと、白衣の布で傷口を縛り、俺は立ち上がる。
直後、ピーッと機械音が鳴り響き、ガチャ……っという音と共に、薬品庫の扉は開いた。
「そ、そんな‼静脈承認しなきゃ、開けられないシステムなのに‼」
「だろうね……知ってるよ」
そうテロリストの一人が俺に向かって言う。
テロリストの片手には、今回のターゲット(?)とおぼしき男性が捕まえられていた。
「ふふ……ようやく見つけた……んじゃ、こいつは用済みだな」
と、銃口を俺に向ける。
バン!っと銃声がした。
だが、その弾丸は俺に貫通することなく、テロリストが捕まえていた男に向けて放たれていた。
「ふふ……ようやく見つけましたよ、天野翔琉博士」
と、テロリストは言う。
拳銃を即座にホルダーにしまい、テロリストは俺の手を引っ張り、薬品庫から無理矢理出された。
「君たちは、誰なの?」
そう言うと、テロリストは俺になにか薬品を嗅がせて眠らせるのだった。