EX STAGE11:無限の光
「無限の光だと?」
傲慢は、その言葉にたじろぎはしなかった。
むしろ、どっしりと構えていた。
そんな傲慢のもとに、小さな光の粒が現れる。
キラリキラリ、とまるで真っ白い雪のようにそれは徐々に増え始める。
「こんなものか、天野翔琉!!」
傲慢は、吼えるが……次の瞬間、態度が変わる。
雪のような光の粒が、傲慢の腕に当たると、傲慢の腕は光の蕀で封じられたからだ。
そして、足も、身体も、首も……何もかもを封じられる。
「ふ、ふん……こ、こんなものではまだまだ」
と、虚勢を貼る傲慢に対して俺はにこりと微笑んでいる。
「なにいってるの?まだ、始まってすらいないよ」
と微笑みながら俺は傲慢に言った。
そして、次の瞬間蕀から華が開いて、光の花粉を放ち、傲慢を球体状に包み込む。
そして、球体が内側の傲慢に向かって光の蕀を突き刺すのだった。
「あぁぁぁぁぁこれは、浄化の……だけど、この程度で……」
「おいおい、無限の光って名前なんだからこんなんじゃ終わらねーって……安心しなよ」
そうなのだ。
無限の光は、まだ終わらない。
というか、俺が解除しないかぎり永遠に続く。
光の蕀は、傲慢の身体を突き破り、中に光の華の種を植え付け、傲慢の魔力を急激に吸い上げ、成長し、華を咲かせる。
それが延々と繰り返されていくのだ。
「あはははは、こんな程度じゃあ、死なないねぇ~」
傲慢は、未だに余裕な表情を浮かべている。
でもやつは知らない。
無限の光の華には、まだ秘密がある。
とどめ用の秘密がね。
「んじゃ、終わらせるか。無限の光-ジ・エンド-」
パチン、と俺が指をならすと球体が縮小し始める。
そして、その球体から華が飛び出ると、華は光の花びらを舞わせて朽ちていく。
だが、朽ちた光の華々の光が地面に触れると、地面の1面に光の華々が咲き誇る。
こんな美しい華々が一瞬にして、球体めがけて光の剣、光のレーザー、光の矢を放つ。
ぐさぐさっと、球体はまるでウニのような形状になって、消滅した。
あとに残ったのは、消滅の瞬間に放たれたであろう傲慢の断末魔と、やつの1滴の血だけだった。
「これが、無限の光……だ……ぜ……」
バタッ……と、俺はその場に倒れてしまった。
神魔法を使用していないと、この魔法は精神を大分すり減るから疲れた。
というのは、建前で……病状的なのか、1度発病させたせいで、身体が硬直してしまったようだ。
だからこそ、そのまま俺の視界は暗く閉ざされたのであった。
目が覚めると、リュウが膝枕をしてくれていた。
あいかわからずの巨乳なので、俺の視界がまずとらえたのは、デカイ山だったけどな。
「あ、翔琉ちゃん起きた?」
「あぁ、起きた……ってあれ?」
お腹当たりが重くて身体を起こせない。
と思って、見てみたらヨルヤが子供姿ですやすやと俺の身体の上で眠っていた。
あ、よだれ垂らしてやがる。
「おい、ヨルヤ。起きろ」
「うーん……むにゃむにゃ……zzz」
「ヨルヤー」
「むにゃむにゃ……zzz」
「暑いから服でも脱ごうかな~」
「え!翔琉が脱ぐの?!手伝う!手伝う!手伝う!手伝わせ……って、翔琉♪」
やっぱり寝た振りをしていたな。
まったく、お前はライと同じかよ。
雷の大魔導士ライも、前に似たようなことしようとしたからな。
やれやれだぜ。
「ところで、リュウ」
「なに?翔琉ちゃん」
「ここどこだ?」
ひんやりとした薄暗い洞窟のような場所に俺はいた。
うっすらと、辺りの岩が光っていて水が輝いて見える。
なんか、鍾乳洞みたいな場所だな。
「あー、ここは起源泉。癒しの泉の源泉であり、異世界を繋ぐ扉【オールドア】を作るときの材料のひとつ……ってそうか、翔琉ちゃんはここに来たことなかったんだね。向こうの世界でも」
「……みたいだな……ってそうだ。リュウに治して欲しい病があるんだ」
「病?」
「邪悪の因子って病なんだけど……」
「あー、いやそれはヨルヤ様から聞いたわ。でもね、翔琉ちゃん。申し訳ないけど、それはあたしには治せないの」
「なんで?リュウは世界最高の治療魔導士でしょ?」
「まあ一応そう呼ばれてはいるんだけど……邪悪の因子だけは、病気と一概には呼べないのよ」
「???どういうこと?」
「じゃあ、この際はっきり言うけど、邪悪の因子は病気というより、呪いに近いの」
「呪い……」
「病気なら治せると思うけど、呪いだけはあたしの力では解除することができないの」
なるほどな。
確かに……病気ならファーストが抗えなかったわけないもんな。
呪いか……。
「じゃあ、解除するにはどうしたら……」
「呪いを解除するには二種類あるのよ。ひとつは呪いの源になっているやつを倒す、もうひとつは呪いを解呪するしかないわね……」
「解呪??そんな方法があるのか??」
「ええ。でも、翔琉ちゃんがかけられている呪いとなると……半減させれるのがやっとってところかな……完全に解呪するには、やはり呪いの源である者を倒さなければならない」
「そうか……」
「あと翔琉ちゃん。この呪いにかけられてる間は神魔法は使っちゃダメよ。この呪いは神の力に反応して進行するようだから、神魔法を使えば使うほど呪いは進行する……わかった?絶対に無茶しちゃダメだよ!!」
そういってリュウは俺をギロリと睨み付ける。
まあ、彼女はあの世界での俺を知っているからこそ、そう言うのだ。
仲間のピンチに平気で命を投げる無謀な男を見ていたのだから。
そりゃ、そういう忠告になるよな。
「うん、わかった(一応)」
「ならいいわ。さあ、行きましょうか」
そういってリュウは、膝枕をやめ、俺とヨルヤを起き上がらせた。
「事情はヨルヤ様から聞いたわ。成り代わり現象、そして悪の因子とエンド。ここ最近の現象やフルートたちの様子がおかしくなったことに説明がついて助かったわ」
「あ、じゃあリュウ……もしかして……」
「ええ。あたしもあなたたちに同行するわ。翔琉ちゃんが無茶しないように見てなきゃ行けないのと、仲間たちを取り戻しにいかなきゃいけないからね。それに、大魔導士が一人ついていけば、他のメンバーや魔導士たちにも話が通しやすいだろうからね」
「ありがとう」
こうして俺たちは水の大魔導士リュウを引き連れ、次なる目的地へと向かうのだった。




