追跡 part1
「実後ろの車を撒けるか?」
そう竜間が運転中の実に訊いたのは、昨日2回見た黒のBMWを確認して直ぐだった。
「あれが追手なのか?」
実の問いに竜間は肯いた。
実の車がスピードを上げる。
それを確認してか後ろの車も加速しだす。
全然離れない二つの車の距離が、離れたのは信号が変わるギリギリで通過した時だった。
時間は4時45分。
30分近く逃げていたことに気が付いた。
信号待ちで止まっても後ろの車から降りてきて、無理やり愛華を連れて行くなんてのは無さそうで安心した。
実が言うには「向こうもあまり目立ちたくないから」らしい。
「やっと撒いたか・・・・」
実はハァと深いため息をつき、近くの公園の横に車を止めた。
「これからどうする?もうあの道に戻れないぞ?」
実が二人に訊いた。
「遠回りの道は無いの?」
と、愛華は実に訊く。
そして竜間が、携帯のマップを見て「山を越えるルートがある」と答えた。
「じゃあそれで行こうか」
公園で少し休憩をしていると愛華が「見て!!」と叫んだ。
愛華が指した方を見るとまたあの黒のBMWだった。
竜間達は、心を休憩モードから逃走モードに切り替え直ぐに車を発進させた。
気が付くのが早かった為、案外直ぐに撒く事ができた。
「これはどういうことだ?」
実は親指で眉間を押しながら考えていた。
初めに追われてから、計5回撒いても追われていた。
「昨日からずっと追われなかって、4時を超えた辺りから5回だぞ?わけがわからん」
実少し苛立ちをみせた。
「でも30分は追われてない!ちゃんと撒けたんだろ」
竜間達が乗ってる車は遠回りの山道を走っていた。
「そろそろ日が落ちてきたな」
時刻は6時を少しこしていた。
「今日の夜飯と寝るところを探さないとな・・・・。でもこの状態じゃな・・・」
竜間は辺りを見回してもコンビニがどころか、民家も1つない。
見えるのは生い茂った木とガードレールだけだった。
「どうする?」
竜間は二人に訊いた。
「今日も車で寝るなんて嫌よ!布団じゃなきゃ眠れない!」
「お前昨日気持ちよさそうに寝てたじゃん」
竜間の一言で愛華は少し顔を赤くした。
「実はどう思う?」
「とりあえず1時間走ってみて、何も変化なかったら車で寝よう」
「夜の山道はペーパードライバーには厳しい」
「じゃあそうしようか!」
会話の後車を走らすこと20分、木と木の間から光が見えた。
その光は、複数あって村がある様だった。