出会い part3
ー組!?何の組だ?
竜間は意識が薄らぎながら疑問に思った。
次に竜間が目を開けた時、教室の天井が見えていた。
「イッテ!!」
お腹に激痛が走る。
組と言う単語に疑問を抱いてからの記憶がなかった。
「大人しくしといたほうがいいわ。凄い勢いで殴られたもの・・」
竜間は視線を横にやると、用具入れに入っていた女の子がロープで縛られていた。
竜間は現状を把握する。
手足がロープで縛られていて、教室の床で倒れていた。女の子も同じような体制でいた。
「何で助けにきたの?赤の他人の私を?何なのそれがカッコイイと思ったの?漫画の主人公にでもなったつもり?それで助けるならあの大男に勝ちなさいよ!一撃でKOされて何しにきたの?」
いきなりの暴言の様なものに竜間は驚いた。
「うるせぇ!俺は一応この学校ではヤンキーとして一目置かれてるんだぞ」
「空手もやってたし、喧嘩でも負けたこと無かった。」
「それで助けられると思ったの?ダッサ!」
「お前な仮にも助けに来てもらってその態度はないだろ・・・」
竜間とその女の子は、互いに教室の天井を見ながら会話をしていた。
「助けるならちゃんと助けなさいよ・・・・」
女の子が小さな声で呟いた。その後に小さくため息をした。
ー待てあの大男はどこにいった?
竜間は女の子との会話に気を取られて男の存在を忘れていた。
首を曲げれるまで曲げ、教室を見渡すが男の姿はない
その竜間の行動を見て女の子が「あいつなら電話がかかってきて、ここから出て行ったわ。」と言った。
「逃げるなら今がチャンスだな!」
竜間は体を半回転させうつ伏せになり、芋虫の様な動きで前に進んだ。
「馬鹿なの?手足が縛られていて助かるわけないじゃん!」
女の子は諦めた様子で天井を見ている。
竜間も全く考えが無い訳ではなかった。
それは実が何時も机の中にカッターナイフを入れているのを知っているからだ。
竜間は実に、「何故そんな物を何時も机に入れているのか?」を訊いた事があった。
「いつ何があるかわからない」と実は返答をした。
その時の竜間は、実が言っている事がわからなかった。
今でもわからないままだが、竜間は実に出会って良かったと心の底から思った。
実の机の下まで、床を移動し机の脚を蹴るとカッターナイフが出てきた。
竜間もまさか一回で成功するとは思っていなかった。
そしてカッターナイフを手に取り、ケガをしない様に手そして足と順番に縄を切っていった。
「まさかこんなに上手くいくとは思ってなかった。」
竜間は立ち上りながら呟いた。
「私もまさか学校に、カッターナイフを持ってきてる奴がいるなんて思ってなかった」
女の子は少し笑いながら言った。
「俺はあの男に捕まる気はない!お前はどうする?」
竜間は女の子に近づきながら言った。
「逃げるに決まってるでしょ!さっさとロープを切りなさいよ!」
女の口調に竜間は本気でここに置いて行こうかと思った、しかし竜間は心をそこまで鬼に出来なかった。
もしかしたらこの女の子に同情しているのかもしれない。
竜間と女の子は、教室からゆっくり顔を出し男がどこにいるか確認した。
1本道の廊下には男の姿はない。
「このまま逃げるか・・・」
教室から出ようとする竜間の首元を女は強く掴んだ。
「バカじゃないの!この廊下は1本道でしょ?右に言ったら行き止まり、だから左に行くしかない」
竜間は小さく肯いた。
「もし左に行ってあの男が来たらどうするの?一貫の終わりじゃない」
ーそれもそうだ・・・この女逃走慣れしてるな。
「じゃあどうするんだよ」
竜間が女の子に訊くと、女の子は指を窓の外に指した。
ー俺の教室が1階で本当に良かった。
竜間と女の子は、教室の窓から裏庭に出て校門まで走った。
校門の前には黒いBMWが止まっていて、一瞬あの男が乗っているかと思ったが運転席にも助手席にも誰の姿もなかったので、竜間達は走って通り抜けた。
どれくらい走ったかはわからないくらい走り竜間と女の子は足を止めた。
「これからお前はどうするんだ?」
息を切らしながら女の子に問う。
返事はない・・・・
「お前行く宛てないんだろ?俺の家に来るか?」
また返事はない。
女の子は何かを考えてる様子だった。
女の子の口が開いたのは竜間が質問してから5分後のだった。
「あんた・・・・私を京都まで送ってくれない?」
「はぁ?」
竜間は驚いた。5分間喋らなかった奴が、口を開いたら訳のわからない事を言い出したのだ、それは竜間じゃなくとも驚く。
「ここは埼玉だぞ?京都ってどれだけの距離あるかわかってんのか?」
「わかってる!でも多分もうあんたも、あいつらのターゲットになってると思うし・・・。京都まで行ったら私のパパが何とかしてくれる」
「ターゲット?俺もあの男に追われるって言いたいのか?」
「そうよ!だからあんたの為にも京都に行くべきなのよ」
女の子の顔は出会ってから1番真剣な顔をしていた。
今度は竜間が口を開かなかった。
どうするかを考えていたのだ。
「わかったよ!お前に付いて行ったらいいんだろ!」
投げやりな感じで竜間は言った。
女の子は「それでいいのよ」と笑いながら言った。
竜間には今の状況が掴めていなかった。
だけどこの女の子の真剣な顔が竜間に付いて行くという結論を出させた。
「あんたさ、さっきからお前お前呼んでるけど私には橋本 愛華って名前があんのよ!」
「俺もあんたじゃなくて、波風 竜間って名前がある」
この出会いから竜間と愛華の逃走劇が始まった。