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実直勇者のその後の伝説  作者: 柏木サトシ
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実直勇者と少年の意地

この章を投降する前に、読者の方から評価を頂いているのに気付きました。評価をして下さった方、本当にありがとうございます。

初めて評価をしていただいたことが嬉しくて、暫くの間、呆然とPCのモニターを眺めていました(^-^)

いただいた評価を胸に、これからも作品を投稿していきたいと思いますので、今後とも、応援よろしくお願いします。

「ま、待つんだみゃ!」


 勝手に退出しようとするエーデルに、フロッシュ公爵が慌てた様子で声をかける。


「そ、そそのまま出て行くと、ボクチンの権限で国家反逆罪にしてやるでぷよ。聡明なエーデルちゃんならその意味、わかるんだみゃ?」

「……ええ、そうね」


 その言葉にエーデルは足を止め、振り向くとニッコリを微笑む。

 右手を掲げ、フロッシュ公爵へと向けると、


「ライトニングボルト!」


 詠唱を一切唱えずに、雷魔法・ライトニングボルトを発動させた。


 エーデルの手から発せられた黄色い閃光は、一瞬にしてフロッシュ公爵の体を包む。


「あびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃびゃっ!?」


 ライトニングボルトの直撃を受けたフロッシュ公爵は、壊れた人形のように全身を痙攣させる。

 杖を介さずに発した魔法なので、ライトニングボルトはあっという間に霧散してしまうが、それでもフロッシュ公爵を行動不能にするには充分だった。


「あら、ごめんあそばせ。気安く名前を呼ばれたから反射的に魔法を撃ってしまったわ。でも、レディに対する扱いもわからないクソムシには、当然の報いよね」


 エーデルは倒れて意識を失ったフロッシュ公爵に侮蔑の視線を向けると、颯爽と部屋から退出していった。


「何をしている。君たちも早く行くんだ!」


 公爵に対し、問答無用で魔法を発動させるという暴挙を目の当たりにしたナルキッソスの面々が呆けているので、ロイが急かすように声をかける。


「……ハッ!? おい、お前たち、彼女に続くんだ!」


 グラースの言葉に、我に帰った男たちがいそいそと謁見の間から姿を消していった。


 ……ただ、一人を残して。


「おい、君も早く行くんだ!」

「悪いけど、僕もここに残させてもらう」


 そう言ってクロクスは自分の武器、一度ロイに壊されて修復した跡が見える杖を構えて前へと出る。


「……どうして?」

「単純な話だ。こうした方が皆の助かる確率が上がるからだ。それに、一人でここに残って、あれだけの人数をこの部屋に釘付けに出来るのか?」

「……それは」


 全員が逃げたグラースたちを追いかけたら、いくらロイが強くても、全員をこの場に釘付けするのは不可能だろう。


「だから、僕はここに残ってお前をフォローしてやる。精々暴れてムカつく騎士どもに一泡吹かせてやれ!」


 クロクスは懐から小瓶、以前グラースが飲んでいたものと同じ、能力を底上げしてくれる魔法の薬を一気に飲む。

 続けて、クロクスは杖を掲げると、


「万物を司る精霊よ、彼の力を以って我に降りかかる災厄から身を護り給え……ハルト!」


 武器強化の魔法、ハルトをロイの木剣へとかける。

 ハルトの魔法を受けた木剣は、まるで熱でも持っているかのように淡い光を放ちはじめる。

 これで、例え鉄の剣と鍔迫り合いを演じる事になろうとも、そう簡単に木剣が砕ける心配はなくなった。


 魔法がかかり、淡い光を放つ木剣を軽く振ってその効果のほどを確かめたロイは、クロクスに向かって力強く頷く。


「ありがとう。悪いが援護は任せたぞ!」

「言われなくても……ただ、僕は生憎と攻撃魔法は得意じゃない。だから、背中を任されても余り期待はしてくれるなよ」

「大丈夫。君のこともしっかりと守ってみせるさ」


 ロイは笑顔で頷くと、木剣を構えて進み出る。


「クソッ、何をしているんだみゃ! お前等も騎士ならとっとと仕事をしろだみゃ!」


 意識が戻ったのか、髪の毛をちりちりにした怒り顔のフロッシュ公爵が、騎士たちにロイに襲い掛かるように命令を下す。


「……う、うわあああああっ!」


 その言葉に、ロイの剣気に圧倒されていた騎士たちが叫び声を上げながら襲い掛かってきた。


 だが、そんな弱腰の状態で倒せるほど、勇者という存在は甘くない。


「せいっ!」


 上段から襲い掛かってきた騎士の攻撃を、ロイは防御も回避も行わず、振り下ろされた大剣ごと騎士を思いっきり吹き飛ばす。

 飛ばされた騎士は、後ろにいた二、三人を巻き添えにしながら壁まで吹き飛ばした。

 続けて、左右から同時に襲い掛かってきた騎士の突きを飛び上がって回避すると、空中で剣を一閃させて自分の真下を通過した剣二本を同時に叩き折る。更に、着地と同時に、左側の騎士には掌底を、右側の騎士には回し蹴りを喰らわせ、壁際まで吹き飛ばしてみせた。


「つ、強い……」

「これが勇者の力、なのか?」


 圧倒的過ぎるロイの力に、騎士たちの間に動揺が広がる。

 ならば、と援護に回っているクロクスへと仕掛けようとするのだが、その剣がクロクスへ届くより早くロイの攻撃が、もしくはロイによって吹き飛ばされた騎士の体によって、騎士の攻撃がクロクスへ届くことはなかった。


 その後も、ロイの暴風のような攻撃にフィナンシェ城の騎士たちは翻弄され続けた。

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